この記事は何か?
本記事は経験ベースのテスト技法の基本概念と、一般的な3つのテスト技法(エラー推測、探索的テスト、チェックリストベースドテスト)について解説します。
目次
経験ベースのテスト技法とは?
経験ベースのテスト技法とは、テスト担当者の経験・知識・直感をベースに行うテスト技法です。
ISTQB(International Software Testing Qualifications Board)では以下のように定義されています。
経験ベースのテスト技法(experience-based test technique)
テスト技法のひとつ。テスト担当者の経験、知識、および直感に基づく。
(出典:ISTQB Glossary)
他のテスト技法との位置づけ
ISTQBでは、テスト技法を以下の3つのカテゴリに分類しています。
| カテゴリ | 着目点 | 代表的なテスト技法 |
|---|---|---|
| ブラックボックステスト技法 | 入出力 | 同値分割法、境界値分析、デシジョンテーブルテスト、状態遷移テスト |
| ホワイトボックステスト技法 | 内部構造 | ステートメントテスト、デシジョンテスト |
| 経験ベースのテスト技法 | テスト担当者の経験・知識 | エラー推測、探索的テスト、チェックリストベースドテスト |
ブラックボックステストやホワイトボックステストでは仕様書やコードをもとに体系的にテストケースを設計するのに対し、経験ベースのテスト技法ではテスト担当者が持つ暗黙知や過去の経験を活用してテストを行います。
一般的な経験ベースのテスト技法
ISTQBのFoundation Levelシラバスでは、エラー推測、探索的テスト、チェックリストベースドテストの3つが一般的なテスト技法として取り上げられています。
1. エラー推測
1.1. 特徴
エラー推測は、テスト担当者の経験を活用して、システムで発生しやすいバグを推測する技法です。
1.2. 推測に使用する知識
エラー推測では、以下のような知識を活用します。
- アプリケーションの過去の動作状況
- 類似アプリケーションで発生したエラーの傾向
- 一般的に発生しやすいエラーパターン(境界値、null値、空文字列など)
2. 探索的テスト
2.1. 特徴
探索的テストは、テスト担当者がテスト対象について学習しながら、テストの設計、実行、評価を動的に行うテストです。
事前に詳細なテストケースを用意するのではなく、テスト実行中に得た知見をもとに次のテストを決定していきます。
2.2. テストチャーター
探索的テストを効果的に行うためには、テストチャーターを準備することが推奨されています。
テストチャーターとは、テストの目的や観点などを定義した簡潔なドキュメントです。
テストチャーターの例を以下に示します。
【テストチャーターの例】
対象:ユーザー登録画面
目的:入力バリデーションを確認する
観点:各入力項目の文字数、不正な文字列、想定外の入力形式
2.3. セッションベースドテストマネジメント(SBTM)
探索的テストをチームで組織的に実施・管理するための手法として、セッションベースドテストマネジメント(SBTM: Session-Based Test Management)があります。
SBTMでは、探索的テストを「セッション」という時間枠で区切って管理します。一般的なセッションの長さは60〜120分程度です。
各セッションでは以下の情報を記録します。
- テストチャーター
- 実施したテストの内容
- 発見したバグや気づき
- テストに費やした時間
SBTMを導入することで、探索的テストの進捗や成果を可視化でき、チーム内での情報共有が容易になります。
3. チェックリストベースドテスト
3.1. 特徴
チェックリストベースドテストは、経験を積んだテスト担当者が作成したチェックリストに基づいてテストを実施する技法です。
チェックリストには、過去の経験から得られた重要な確認項目や、見落としやすいポイントがまとめられています。
3.2. チェックリストの例
チェックリストに含まれる項目は、テスト対象や目的によって異なります。以下に一例を示します。
- 入力バリデーションの確認項目
- 必須項目が未入力の場合、適切なエラーメッセージが表示されるか
- 最大文字数を超える入力に対して制限が機能するか
- 数値項目に文字列を入力した場合の挙動は適切か
チェックリストは固定的なものではなく、新たなバグの発見やシステムの変更に応じて継続的に更新していくことが重要です。
経験ベースのテスト技法の長所と短所
経験ベースのテスト技法の長所と短所を以下にまとめます。
長所
- 仕様書やドキュメントが不十分な状況でもテストを実施できる
- 形式的なテスト技法では検出しにくいバグを発見できる可能性がある
- テスト設計の工数を削減できる場合がある
短所
- テスト担当者のスキルや経験に結果が依存する
- テストの再現性が低くなる場合がある
- 経験が浅いテスト担当者では効果が限定的である
効果的な活用場面
経験ベースのテスト技法は、以下のような場面で特に効果的です。
- 仕様書が不十分または存在しない場合
- 短時間でテストを実施する必要がある場合
- 過去の経験からリスクの高い箇所を重点的にテストしたい場合
参考資料
- ISTQB Glossary (日本語版) https://glossary.istqb.org/ja_JP/home
- ISTQB Foundation Level シラバス Version 4.0(2023年版) https://jstqb.jp/syllabus.html#syllabus_foundation