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AIX LVM(Logical Volume Manager) 入門 - 基本概念・Factor値・クォーラムを図解で理解する

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Last updated at Posted at 2026-03-01

はじめに

AIX (Advanced Interactive eXecutive) は誕生から40周年を迎えた IBM 開発の商用 Unix Operating System です。

本記事では、AIXシステムを管理する上で初心者がまず押さえておくべきストレージ管理の中核「AIX LVM(Logical Volume Manager)」の基本概念と、実運用で重要になる設定項目について図解や動画と共に記載します。

参考:


AIX_LVM概念.jpg

参考動画: AIX LVM の概念とアーキテクチャ


AIX LVMの基本概念とアーキテクチャ

LVMは、物理的なハードウェア層(ディスク)と上位のアプリケーション層の間に入り、柔軟で可用性の高いストレージ環境を提供するソフトウェア層です。
最大の特徴はディスクからの独立性です。LVMが物理デバイスの種類(FC(Fibre Channel)、SAS、SCSIなど)を隠蔽するため、管理者は物理構成を意識することなく統一された手法でストレージを管理できます。



システム全体のアーキテクチャは、大きく以下の論理層と物理層に分かれています。

論理ストレージ層(ユーザーが意識する階層)

  • VG (Volume Group: ボリューム・グループ)
    複数の物理ディスクを束ねた、システム内の大きなストレージプールです。
  • LV (Logical Volume: 論理ボリューム)
    VGから切り出された区画です。ファイルシステム(現在のAIX標準であるJFS2など)やデータベースからは、連続した1つのディスク領域として認識されます。
  • LP (Logical Partition: 論理パーティション)
    LVを構成する論理的な最小単位です。

物理ストレージ層(ハードウェアに近い階層)

  • PV (Physical Volume: 物理ボリューム)
    OSが認識する個々の物理ディスク(/dev/hdisk0 など)です。各PVには固有のシリアル番号(PVID)が割り当てられます。
  • PP (Physical Partition: 物理パーティション)
    PVの内部を分割する固定サイズの物理ブロックです。物理ディスクプラッタ上は、アクセス速度などの特性に応じて5つのリージョン(領域)に分割管理されます。

(補足) 物理ディスクプラッタ上のリージョン分割は、回転型HDDに固有の概念です。現在のAIX環境ではSANストレージやSSDが主流であり、この概念が直接当てはまらないケースが多いです。

パーティション・マッピングと高度な機能

LVMが提供する柔軟性の鍵は、LP(論理)からPP(物理)へのマッピング機能にあります。

  • ミラーリング(可用性向上)
    1つのLPのデータを、異なるPV上にある複数のPPに同時に書き込む機能です。AIXのLVMは最大3重ミラー(1つのLPに対して3つのPPを割り当て)まで標準でサポートしています。万が一ディスクが故障してもシステムを停止させずに運用を継続できます。
  • ストライピング(パフォーマンス向上)
    連続したデータを細かい単位で複数のPVに分散配置する機能です。複数ディスクへの同時並行アクセスが可能になり、I/Oパフォーマンスが向上します。

AIX LVMにおけるFactor (-t) 値の仕組みとトレードオフ

AIXLVM-infographic.jpg



  • Factor (-t) 値の基本概念

AIX の Normal VGでは、1つのPVが保持できるPP(Physical Partition)数の上限がデフォルトで「1016個」に制限されています。大容量のディスクを追加する際、このPP数の上限を超える場合は、Factor値(倍数)を指定して上限を拡張する必要があります。

Factor値は1〜64の範囲で指定でき、1PVあたりの最大PP数を1016の倍数で拡張します。

  • VGの新規作成時: mkvg -t [factor]
  • 既存VGの変更時: chvg -t [factor]

PV数とPP数のトレードオフ関係

Factor値を変更する際、1PVあたりの最大PP数(容量)と、VGに登録できる最大PV数(ディスク本数)の間にはトレードオフが存在します。

Normal VGやBig VGでは、VG全体で管理できる総PP数に上限が設けられています。そのため、Factor値を上げて1PVあたりのPP数を増やすと、そのVGに接続できるディスク数が減少する仕様となっています。

Factor値の推移と最大PV数の変化

Factor値 1PVあたりの最大PP数 Max PVs (Normal VG) Max PVs (Big VG)
Factor 1 (デフォルト) 1,016 32 128
Factor 4 4,064 8 32
Factor 16 16,256 2 8
Factor 64 65,024 (非対応) 2

大容量ディスクをAIX環境に追加する際は、将来的なディスク増設の可能性と必要な容量のバランスを考慮し、適切なFactor値を設計することが重要です。

Scalable VGでは、PP数がVG全体での制限として管理されるため、上記のような「1PVあたりの制約」を受けません。そのため最初から Scalable VG を選択することも良いかと思います。


AIX LVMにおけるクォーラム(Quorum)の仕組み

AIX-quorum.jpg

クォーラム(Quorum)の仕組みとデータ保全性

LVM環境を安全に運用するために欠かせないのが「クォーラム」の概念です。クォーラムは、VGが最新かつ整合性の取れた状態であることを保証するためのメカニズムです。


参考:


クォーラムを構成するメタデータ

クォーラムの判定には、ディスク上に記録された以下のメタデータが使用されます。

  • VGDA (ボリューム・グループ・ディスクリプター領域): VG全体の構成や、そこに含まれるLV、PVの情報を管理する領域です。
  • VGSA (ボリューム・グループ・ステータス領域): 各物理区画(PP)が最新の状態であるか、同期遅れ(Stale)の状態であるかを記録する領域です。

これらのメタデータ(VGDA)は、システムを構成するディスクの台数に応じて以下のルールで配置されます。

  • 1台構成: 1つのディスクに2つのVGDAが配置されます。
  • 2台構成: 2台のディスクに合計3つのVGDAが配置されます。(2つ+1つ)
    ※システム内でどちらのデータが正しいか意見が割れる現象(スプリットブレイン)を防ぐため、全体で必ず奇数個の投票権が配置される仕様になっています。
  • 3台以上構成: 各ディスクに1つずつVGDAが配置されます。

クォーラムの判定(過半数ルール)とシステムへの影響

LVMは、VG内のVGDA/VGSAの総数のうち、過半数がアクティブであることを条件として運用を継続させます。

  • 稼働状態の維持: アクティブなVGDAが過半数であれば、クォーラム有効(Active)としてLVMの運用が継続されます。
  • クォーラム喪失とVGの自動オフライン: アクティブなVGDAが半数を下回ると、クォーラムは失われます。クォーラム喪失が発生すると、LVMはデータの不整合を防ぐ(データを保護する)ために、対象のVGを自動的にオフライン(Vary-off)にして無効化(閉塞)させます。

例外:非クォーラムVGの設定

強固な可用性が求められるミラーリング環境などにおいては、VGの設定を変更(mkvg -Q n または chvg -Q n コマンド)することで「非クォーラムVG」として運用することも可能です。この設定を行えば、ディスクが1台のみ稼働している状態になってもLVMの運用を継続させることができます。

なぜミラーリング環境で必要なのか
例えば、2台のディスクでミラーリングを構成している場合、VGDAは合計3つ(2つ+1つ)配置されます。もし2つのVGDAを保持しているディスクが故障すると、残りのVGDAは1つとなり、通常のクォーラムルール(過半数)を満たせずVGがオフラインになります。これではミラーリングによる冗長化の効果が十分に発揮されません。非クォーラムVGに設定することで、残った1台のディスクで運用を継続できるようになります。

PowerHA(HAクラスタ)環境での扱い
PowerHAの非コンカレント構成(通常のフェイルオーバー構成)では、フェイルオーバー時にクォーラム喪失でVGが起動できない事態を防ぐため、共有VGを非クォーラムに設定するのが一般的です。
コンカレントアクセス構成(複数ノードが同時にVGへアクセスする構成)では、クォーラムの有効化が必要です。無効にするとデータ破損の原因になり得るため注意が必要です。

注意点
非クォーラムVGはクォーラムという安全装置を無効化するため、ミラーリングと組み合わせて使うことが前提です。ミラーリングなしの単一コピー構成で非クォーラムに設定することは、データ不整合リスクが高まるため推奨されません。


まとめ

LVMは物理的な制約からシステムを解放してくれますが、その特性を正しく理解することが、AIXシステムの安定運用に不可欠です。

AIX LVM の基礎とまずは知っておいたほうが良いと思うことについて簡単に記載させていただきました。


関連記事 (AIX LVM セクション)もご参考ください:

以上です。

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