量子コンピュータ

【トレンド】2019年2月の量子コンピュータ業界


はじめに

量子コンピュータの業界は動きがめまぐるしいです。かつ、初心者やこれから参加する方には少しまだ敷居の高い状態です。かつ色々状況も変わりつつあって何から手をつけてという感じだと思います。その辺りをまとめます。


MDR社の立ち位置

まずは自己紹介で、ブログの主はMDR社の中の人で、文京区本郷にあるベンチャー企業です。2018年のAIマップに記載の通り、本郷にあります。

全169社!東京にあるAI企業をマップにした「Tokyo AI Map」を公開 / 多くのAI企業が本郷, 渋谷, 東京に集中

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http://ainow.ai/wp-content/uploads/2018/09/Tokyo_AI_map-6.png

また、三菱UFJ銀行様と共同研究契約を結び、日本経済新聞などにでています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35518520Z10C18A9EE9000/

また、文科省の量子コンピュータ10年計画のQ-Leapに参加しており、

https://www.jst.go.jp/stpp/sympo/2018/pdf/leaflet.pdf

内閣府のImPACTでは山本先生のもとで研鑽させていただきました。


MDRの主力商品

量子コンピュータがどのように仕事になるのかということですが、現状は量子コンピュータ向けのアプリケーション開発のできるツールを提供しています。無料で誰でも使えます。

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http://blueqat.com/

また、最近本物の量子ビットを作りました。

基本的な磁束量子ビットの作製と、機械学習等の用途に向けた検討の開始

https://mdrft.com/2018/12/13/qubit/


MDR社の世界の中での立ち位置

2018年はSBIインベストメント様から2億円の資金調達をさせていただき、収益化に向けて毎日がんばっています。

https://japan.cnet.com/release/30274248/

おかげさまで世界でもようやく注目度が上がってきました。

量子コンピュータ開発では、磁束量子ビットのアニーリング型とトランズモンのゲート型の両方を開発しており、海外のレポートでも取り上げられるようになってきました。ちなみに両方開発できているのは、GoogleとMITとMDRだけです。(うちはトランズモンはまだですが。。。)

https://quantumcomputingreport.com/scorecards/qubit-technology/

https://quantumcomputingreport.com/wp-content/uploads/2019/02/Quantum-Computing-Technologies-February-1-2019.jpg

また、ソフトウェア面では、日本初の世界のトップベンチャーとしてリスト入りをすることができました。弊社はD-Wave社とIBM社と協力をしています。世界でベンチャーはたくさんありますが、現在の世界のトップベンチャー企業は20社程度ではないでしょうか。日本からリスト入りできたのは大変嬉しいです。

https://quantumcomputingreport.com/scorecards/software-partners/

昨年はD-Wave社からもリリースを出していただけました。

https://www.dwavesys.com/press-releases/mdr-corporation-and-d-wave-systems-announce-quantum-computing-agreement

なんとか結果を残して頑張りたいと思います。とうことで海外の様々な企業や研究者と仲良くなれて色々教えてもらえました&もらってます。


ということで現状

まずはbohr technologyという企業の発表している世界のカオスマップです。昨年の7月時点のものですが、

スクリーンショット 2019-05-11 9.24.16.png

https://res.cloudinary.com/hrscywv4p/image/upload/c_limit,fl_lossy,h_9000,w_1200,f_auto,q_auto/v1/1205443/quantum_landscape_copy_o7wqnm.png

業界が見て取れます。全体的に大きく分けて3つ。左上が周辺要素技術、右上がアプリケーション、下の段がプラットフォーム提供です。日本の企業が取り掛かっているアニーリングは世界的に見るとかなり亜流である上、ほとんど認識されていないのが残念です。富士通さんのデジタルアニーラは1qbitとも組み海外では認知されていますが、D-Waveを含めてアニーリング業界は日本以外ではあまり認知が進んでいません。ここは要改善だと思います。

ゲートマシンはGoogle,IBM,intel,Alibabaをはじめとして海外の主要企業がこぞって参入しているので主戦場になっています。日本の存在感をまずは出すのが先決ではないでしょうか。


有名ベンチャー

きになるのは有名ソフトウェアベンチャーでしょう。


ザパタ

ハーバードからのザパタはボストンの量子化学、機械学習などの有名ベンチャーで現在世界最強でしょう。シードで6億円近くを集めていて、現在も多くの巨大企業と仕事をしています。起業は2017年なのでごく最近です。


1qbit

D-Waveの近く、バンクーバーに本拠地のある有名ベンチャーで、元々はアニーリングで有名でしたがゲートにいち早く転身しました。


CQC

量子コンピュータ空白地帯のヨーロッパにおいてケンブリッジ中心で60億円近くを調達している企業です。OSなどをつくっています。


QCWare

NASAの仕事をメインにして、ソフトとコンサルで、毎年Q2Bというカンファレンスを企画しているので有名な企業です。


Rigetti

ベンチャーながらゲートマシンを作っていて自社内に半導体工場を持っているというメガベンチャーです。調達も数百億単位です。

全体的にソフトウェアが強いのはカナダです。米国よりも揃っています。ハードは米国が強いです。資本の差でしょうか。


量子コンピュータ始めるには

量子コンピュータのアプリケーションを始めるのに量子物理学は不要です。最近ではツールが揃っているので普通のプログラミングのように始められます。最近相談が多いので見ていきましょう。確かにアプリケーションで量子系のアプリは多いですが、必ずしも量子系の勉強はマストではありません。


IBMQ

IBM社が提供する量子コンピュータの実行環境やツール類です。汎用型マシンの全てが揃っていて、マウスでクリックしてドラッグして回路を作れるなど揃っています。ドキュメントもかなり充実していておすすめです。IBMQにログインしてマウスで回路を作ってみるのをお勧めします。

参考書や例題などで基本の量子回路を覚えるところから始めると良いでしょう。MDRでも日本語のドキュメントやサポートを増やしていきたいと思います。

https://www.research.ibm.com/ibm-q/

https://qiskit.org/


Microsoft Q

こちらはWindows開発者にお勧めです。やはりドキュメントも充実しています。開発環境によってWindowsをメインに開発している方は迷わずこちらです。ただ、実機は提供していません。

その他GoogleやRigettiなども提供はしていますが、オススメはできません。Googleはツールが難しいですし、Rigettiはいい企業なのですがなにせ、国内の知名度がないためサポート資料が全くありません。初心者にはあまりオススメはできません。


D-Wave

D-waveは量子アニーリングでツールなどを開放しているので、国内でも利用者は多いです。githubでD-Wave Oceanを導入するとシミュレータがついてるため、実機がなくても活用できます。

https://github.com/dwavesystems


Blueqat

あんまり自社のものを進めすぎてもあれですが、日本語が充実してて、D-WaveとIBMQの両方のマシンにBlueqatから直接問題を投げられます。

https://github.com/Blueqat/Blueqat


何から学べばいいか

毎日この相談を受けます。そろそろうちの出番かなと思います。がんばって初心者向けの資料を充実させます。

https://qiita.com/organizations/mdrft

それまでは正直IBMかMicrosoftのドキュメントを読むのが一番いいと思います。それを最初から順番に読んでいけば、下手な参考書を読むよりも実務と実機のバランスがとてもよく理解できます。

https://quantumexperience.ng.bluemix.net/proxy/tutorial/full-user-guide/introduction.html

https://docs.microsoft.com/en-us/quantum/?view=qsharp-preview


なんのアルゴリズムをやればよくて、ゲートとアニーリングの違いは?

よくニュースで出てくるのは2種類あります。

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量子ゲートは米国と中国の大手ITが取り掛かっている汎用マシンで、今のコンピュータの上位互換のようなマシンです。一方アニーリングは組合せ最適化問題に特化した、アクセラレータのようなマシンです。

よく量子アニーリングが日本由来と言われますが、量子ゲートも世界で初めて超電導量子ビットを作ったのは日本なので両方とも日本由来のマシンと言えるでしょう。

使用用途と好みで選べばいいと思います。

それぞれの得意分野は、

量子ゲート:量子計算、量子化学計算、暗号、検索、機械学習

量子アニーリング:社会問題、機械学習、大規模最適化問題

量子アニーリングは今のコンピュータと原理が似ているため、量子計算というよりも量子効果をうまく活用して量子速度向上を組合せ最適化問題に活用しています。実用的な社会問題をときたい場合にはこちらでしょう。ただ、まだ本当に今のコンピュータよりも早くなるかどうかはわかっていませんので、今後の性能向上を期待しましょう。

一方量子ゲートは今のコンピュータとは原理が異なります。ただ、量子計算できるサイズが小さいのと速度があまり出ません。また、社会問題を解こうとすると今のコンピュータよりも格段にまだ速度が出ません。速度を出そうとするとかなりのエンジニアリングスキルが必要となり、現状は超プロ向けマシンです。性質もスパコンに近いものがあります。

正直まずはアニーリングからとりかかり、プロで頑張りたい方はゲートで頑張りましょう。


アプリケーション

量子アニーリングは、機械学習や最適化問題などがあります。最近では多くの参考資料があるのでどれくらいの問題が解けるのかを見てみる必要があります。ただ、量子アニーリングにはいくつか弱点があり、ソフト制約・ハード制約と呼ぶように、制約条件という今のコンピュータにはあまり必要のない問題を解かなくてはいけないというハンデがあります。解ける問題の種類も多くないので、更なる研究と探索が必要です。また、どの程度頑張れば今のコンピュータよりも早くなるのがわかっていないので根気よく取り組む必要があります。

一方ゲート方式は速度を出すのが大変で技術力も必要、スパコンやHPCを組み合わせて最適化問題を解きながら性能を出さないといけないです。解ける問題は今のコンピュータよりも範囲は広いですが、現状では実機のエラーも多く実用的には使えないためシミュレータと呼ばれる今のコンピュータでの模擬計算がほとんです。こちらも根気が必要です。ただ、量子計算と呼ばれる今の計算機のできない計算はできるので、その部分だけを根気よく計算して速度向上を目指そうとしています。昨年までは量子化学計算が流行りましたがひと段落して今年は量子機械学習や組合せ最適化が流行っています。


シミュレータとは?

量子アニーリングはまだ今のコンピュータよりも早いかどうかがわかっていません。シミュレータと呼ばれる今のコンピュータでの模擬計算でも十分早いので富士通のデジタルアニーラや日立のCMOSアニーラは量子計算機でなくても十分速度がでてしまいます。GPUやCPUなどの既存計算でもシミュレータは結構実用的にイジングモデルと呼ばれるアニーリングの計算に使用される原理を使いこなせるでしょう。現在のGPUでも2000-10000量子ビットも計算ができますし、速度面でもあまり遜色がないため今後のアニーリングマシンの発展に注目したいです。

量子ゲートの問題はエラーが多く、本来デジタル化されないといけないデジタル回路が乗っていないことです。ほとんどの場合にシミュレータと呼ばれる私たちの計算機で模擬できる計算よりも速度面、精度面で劣ります。また、シミュレータでは状態ベクトルと呼ばれる確率計算の検算が簡単な仕組みが使えますが、実機では使えません。状態ベクトルが取れた方が楽な場面となくても大丈夫な場合がありますが、あったに越したことはなく、今の段階ではなるべく便利な方が良いため実機はあまり使われません。20量子ビット程度なら私たちのPCでも計算ができて、48量子ビットまではスパコンが早く、49量子ビット以上は量子コンピュータが勝つと言われています。

2015年には9量子ビットでしたが、2018年には20-72量子ビットが開発されていて、2019年にはRigettiが128量子ビットを製造するといっているので、まだ進歩は続きそうです。ただ、こちらはエラーが訂正されていないアナログマシンなので、本来のデジタル化された49量子ビットにはまだ及ばなさそうです。


ハードの見どころ

実際ハードはたくさんの種類が開発されていますが、動いて計算ができるのは実質的にほぼ超電導量子ビットだけです。内閣府ImPACTでの光マシンやD-Waveの磁束量子ビットはイジング計算できますが、ほとんどが超電導と光の一部となっています。最近では、IonQがイオントラップ方式を発表していますが、外部の人が評価をできる段階ではないので続報に期待です。

その他のマシンは原理検証をでないので、しばらく超電導だけを見ておけば大丈夫でしょう。日本としては光を頑張ってもらいたいですが。。。


ということでまとめ

現状実機はゲートはIBM、アニーリングはD-Waveを使うしかなさそうです。ツールは全て無料で手に入るのでそれを使いましょう。量子物理学の知識は不要なのでまずは量子回路のプログラミングから入りましょう。

事業化はアニーリングが先に来ますのでそれで組み立てるか、腕っ節に自信のある方はゲートにチャレンジしましょう。以上です。