量子コンピュータ

【過去記事】2019年に向けての抱負


はじめに

あけましておめでとうございます。2019年も皆様に夢のある活動と成果をもたらせられるように頑張っていきたいと思います。昨年成し遂げた活動の一部は、

・D-Wave Systems Inc.との契約

・AQC量子コンピュータの国際会議に参加

・Google&NASAのQuailの運用するNASA AmesのD-Wave向けの論文が採択

・MUFGデジタルアクセラレータ準グランプリ

・株式会社三菱UFJ銀行との量子コンピュータ共同研究開始

・内閣府ImPACTプロジェクトクラウドシステムを無事1年無事故運用

・Q-Leapの日本のフラッグシップ量子コンピュータプロジェクトへの参加

・特許庁IPASにおける知財戦略のアクセラレータプログラムへの参加

・NVIDIA/Microsoft/IBM/AWSなどの米国IT大手からの支援プログラム

・Microsoft Innovation Award2018の特別賞受賞

・独自設計の超電導量子ビットの開発に成功し国際会議で発表

・SBI様から約2億円の資金調達を完了

・世界における海外IT大手にスタートアップとして日本ベンチャーで初契約

となっています。結果として国内のあらゆる量子マシンの開発に関わることができました上に、MDR社独自設計の量子コンピュータを開発することに成功しました。今年はすでにこれ以上の活動の成果が発表できるように昨年から準備していることがありますので、発表できることを楽しみにしています。


今年の予想と抱負

最初に書いてしまいます。今年流行るのは、

1、量子機械学習

2、耐量子コンピュータ暗号

となると思います。

量子化学計算はひと段落つきそう

2018年は量子化学計算が流行りました。2012年にトロントのAlan先生でVQEが発明されてから、量子コンピュータにおける量子化学は多くの発展を行いました。MicrosoftやIBM,Googleなども量子化学計算を大きく取り上げてきました。Alan先生はZapata Computingの立ち上げに関わり、量子コンピュータ関連のアルゴリズムの開発を進めています。

https://zapatacomputing.com/about/

昨年の末にAlan先生が来日されました。この来日は神戸大学の田中先生のおかげで実現し、GREE VenturesとMDRのスポンサードと調整の元、Alan先生がハーバード大学に在籍されていた時からこつこつ進められて、11月の後半から1週間滞在されました。そして、年末には「これまでの」と「これからの」量子化学と量子コンピュータに関するまとめ論文を発表されて一息ついた気がします。

Quantum Chemistry in the Age of Quantum Computing

https://arxiv.org/abs/1812.09976

アラン先生と個人的なやり取りの中で量子化学計算に対する取り組み方を見いだすことができました。2019年は現在のNISQと呼ばれる量子古典ハイブリッドマシンでできる量子化学の取りまとめの時期になると思います。

MDR社も2018年に量子化学計算関連の活動は行いましたので、2019年は誰でも使えるツールと成果という形で大きく共有したいと思います。個人的にAlan先生と交流を持つことで、大きく見えてきたこともありました。


量子機械学習

今年大きく発展しそうなのが量子機械学習です。トロントのXANADUが機械学習向けのツールを発表したり、年末には様々な研究機関が量子ゲートモデルにおける深層学習や機械学習の成果を発表しています。

弊社も米国のみならず、カナダや欧州などの企業と連携をして機械学習分野を進めています。世界中のソフトウェア企業が量子機械学習の準備をしています。

機械学習といっても多くの分野がありますが、量子古典ハイブリッド計算から、最適化問題まであらゆる分野で開発が進むと思います。個人的には機械学習アプリケーションの開発はそこまで難しくなさそうなので、既存機械学習を量子コンピュータに導入するような活動が増えると思います。大変楽しみです。

最近では量子コンピュータソフトウェアで有名なバンクーバーの1Qbitが強化学習のyoutubeを公開しています。機械学習の用途も深層学習の強化学習などもターゲットに入ると思います。


耐量子コンピュータ

量子コンピュータでも破られにくい新しいタイプの暗号の実装や発表が進むと思います。格子暗号などの実用的な新暗号はすでに実地では実証実験や搭載が進んでおり、成果発表が進むと思います。

格子暗号などは考え方もわかりやすいのでようやく日の目をみることになったなという感じがします。

セキュリティ関連、数学者関連、あとは仮想通貨の方々などは楽しめる1年ではないでしょうか。


超電導量子ビット

MDR社では、2018年に超電導量子ビットの開発に成功しました。超電導量子ビットはジョセフソン接合と呼ばれる非線形素子を導入した回路を持ち、量子コンピュータの心臓部です。超電導量子ビットは現在冷却を通じて測定と改善を進めています。2019年、2020年もすでにMDR社の開発計画が進んでおり、オリンピックイヤーまでに日本独自の量子コンピュータの開発ができたことはとても嬉しく思います。

超電導量子ビットでこれから大事になるのは大規模化で、2019年以降はトランズモンの9量子ビットを目指して開発を進めていきます。国の方針でイジングマシンや量子アニーリングマシンは多くのプロジェクトが進んでいますので、競合せずに進められるよう汎用型に力を入れていきたいと思います。

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世界中で量子アニーリングと量子ゲートの開発を同時に行なっている企業は、MDRとGoogleしかありません。量子アニーリングの開発は成功しましたので、こちらは引き続き大規模化を進めるとして、汎用型量子ゲートマシンの素子の大規模開発を進めたいと思います。もちろん技術は国の事業へと還元されています。


光量子コンピュータ

光マシンはトロントのXANADUが抜きに出てます。特にソフトウェアの発展めざましく、とてもすごいと思います。本来はMDR社も光量子を独自にやりたいところですが、日本にはNTT社や東大の古澤先生がおり、トップランナーがとても活躍しらっしゃいますので、光マシンに関しては現在は独自開発はせずにひきつづき後方支援を考えています。現在、個人的に内閣府ImPACTプロジェクトのマネージャー補佐を行わせていただいておりますが、日本の光の研究者・技術者のレベルはとても高く、それを率いる山本先生にもMDR社を発掘していただき、無事無事故でQNNを運用できたことはとても感謝しておりますし、弊社の発展の原動力となったと思います。基礎研究の進め方に関しても大変勉強になりました。


WildqatSDK

昨年は少し名称もかわりWildqatSDKと呼ばれるSDKを公開して進めました。Wildqatは世界中で広く利用されており、海外からの問い合わせも多いです。量子アニーリングやイジング方式との相性がよいのでソフトウェア開発には使いやすいと思います。今年はテラスカイさんというコントリビュータも増え、国内外の利用者も大変増えています。簡単に利用できるのでエントリーにとても良いのではと思います。

最近ではD-Wave社のOceanツールも大変充実していて、様々な機能が付いています。弊社も5月からD-Wave社と契約を行い2019年はこれまでにないくらいに良い連携ができると思います。是非とも今後ともWildqatをよろしくお願いします。

https://github.com/Wildqat/Wildqat


BlueqatSDK

今年の大きな転機に汎用型量子コンピュータのSDKを公開したことがあります。

https://github.com/Blueqat/Blueqat

本質的には汎用型量子コンピュータの数理は限定されており、SDKも世界的にはどの企業も提供しているものにあまり違いはありません。それでも国内での開発にこだわり、国内企業様と一緒にサポートを充実させて日本語で提供できたことは大きな発展につながりました。実際に国内の大手企業の方々に採用をいただいております。

2019年はいよいよ汎用型量子コンピュータの開発が大きく進みます。将来的にはBlueqatと超電導量子ビットが連携して計算が進むことを大きく期待して計画を立てています。


最後に

量子コンピュータは使えるのか?という疑問があります。それに対して大事な考察は、本当の量子コンピュータの実力はどうなっているのかということを知ることが大事です。みんな機能制限しているのでクラウド経由でのマシンは本当の実力はわかりません。実機がそばに必要で、さらにはチップの内部でどのような処理が行われているのかを理解することが量子コンピュータ開発で一番大事です。2017年の出来事がきっかけでソフトウェアの会社であったMDRがハードウェアを作り始め、実際に超電導量子ビットを開発したことで一部のアプリケーションの限界を知ることができました。なぜ世界のIT大手がフルスタックで開発を進めているかというのは、その点につきます。

2019年はトランズモンを開発し、フルスタックで揃えるところから始まると思います。大規模化は大変そうなので大変楽しみです。アプリケーションもハードウェアもやる気と技術力はふんだんにあるので自ら進んでもっと難しい問題に取り組んでいきたいと思います。

事業化も引き続き進め、多くの企業の方々に事業がうまくいくような手伝いや技術提供を進めていまいります。現在の量子古典ハイブリッド計算は使いどころが難しいですが、速度面での優位性はまだ出ませんがトータルでの総合評価では実際に現場である程度の計算ができていることもあり、事業化に向けては社内説明がつくレベルではないかと思います。一部の企業様には利益創出までお手伝いできていますので経済的に少し回るレベルになってきたのかなという実感があります。

どちらにしろ2019年も楽しんでいきましょう!