はじめに
FLUXiM AGの有機EL・太陽電池の光学・電気シミュレータSetfosは各層の屈折率nと消衰係数kを示すnk値を入力します。
PEDOT:PSSやP3HTなどの有機半導体、FTO、ITOなどの透明導電膜、Ag、Alなどの金属電極といった代表的な材料のnk値はサンプルファイルがありますが、新規材料の場合、新たにnk値を取得する必要があります。
本記事では積分球が搭載された紫外可視近赤外分光光度計(UV-Vis-NIR)で測定された透過率Tと反射率Rからnk値を求める方法について説明します。計算は透過率因子τを用いた方法を使用します( https://doi.org/10.1364/OPTCON.495634 )。また、透過率Tと反射率Rは文献( https://doi.org/10.1016/j.matpr.2020.04.906 )よりFig. 1の青線からフリーソフトGraphcel( https://www.vector.co.jp/soft/win95/business/se247204.html )を用いて、波長330 - 800 nmの範囲にて5 nm間隔で抽出した値となります(以下の図。文献は膜厚60 - 100 nmの材料となりますが、光学干渉は起こらないと仮定します)。
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| 透過率T(左)と反射率R(右) |
注意事項
本手法で対象となる材料は干渉が起こらない程度に厚い膜をもつ材料であり、金属や光学干渉が発生する薄膜の場合はエリプソメトリーなどの他の手法を推奨します。
また、お手持ちの分光光度計にて材料単体の反射率を直接取得できない場合には、下図、下式より、材料のみの反射率を抽出することを推奨します。
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| 積分球による反射率測定 |
$$
R_\mathrm{measured} = R_\mathrm{material} + \frac{R_\mathrm{BaSO_4
}\ T^2_\mathrm{material}}{1 - R_\mathrm{BaSO_4}\ R_\mathrm{material}}
$$
ここで、
- $R_\mathrm{measured}$:分光光度計で測定された反射率
- $R_\mathrm{material}$:材料単体の反射率
- $R_\mathrm{BaSO_4}$:基板(BaSO4)の反射率
- $T_\mathrm{material}$:材料単体の透過率
透過率因子τの計算
透過率因子𝜏は、光が薄膜の一方の表面から他方の表面へ伝搬する際のパワー損失因子を表し、次式で定義されます。ここで、dは薄膜の膜厚、λは波長となります。
$$
\tau = \exp\biggl(-\frac{4 \pi k}{\lambda} d \biggr)
$$透過率因子𝜏と反射率R、透過率Tの関係は下式で表すことができます。
$$
T \tau^2 + [(R - 1)^2 - T^2] \tau - T = 0
$$この式に解の公式を用いることで透過率因子τを計算することができます(τが正の値になるよう、正符号の解を使用します)。
$$
\tau = \frac{-[(R - 1)^2 - T^2] \pm \sqrt \Delta}{2 T}
$$$$
\Delta = [(R - 1)^2 - T^2]^2 + 4 T^2
$$
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| 透過率因子𝜏 |
消衰係数kの計算
透過率因子τの定義式より消衰係数kを計算することができます。(今回は膜厚をd = 100 nmと仮定しました)。
$$
k = -\frac{\lambda \log (\tau)}{4 \pi d}
$$
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| 消衰係数k |
屈折率nの計算
屈折率nを求めるため、反射係数rを使用します(r < Rを満たす必要があるので、正符号の解を使用します)。
$$
r = \frac{2 R}{1 + \tau^2 \pm \sqrt{(1 + \tau^2)^2 - 4 \tau^2 R (2-R)}}
$$
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| 反射係数r |
その結果、屈折率nは次式により解析的に求められます(屈折率が1より大きくなるよう、正符号の解を使用します)。
$$
n = \frac{1 + r}{1 - r} \pm \sqrt{\frac{4 r}{(1 - r)^2} - k^2}
$$
![]() |
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| 屈折率n |
Setfosへの入力
反射率Rおよび透過率Tから計算した屈折率n、消衰係数kの特性をSetfosに入力します。
下図を参考に、拡張子「.nk」のファイルを作成します。
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| nkファイル |
SetfosのLayer structure→Refractive indexを開き、File(tabulated nk values)[.nk]を選択した後、Importをクリックします・
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| Refractive index |
作成した拡張子「.nk」のファイルを指定すると、Previewにnk値が表示され、正しく読み込まれていることを確認できます。
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| nk値のプレビュー |
確認
Setfos上での透過率Tと反射率Rが文献と合致するか確認します。Layer structureを下図のように設定します(各層はincoherentに設定します。また、Refractive indexの設定はMaterialはnk値、AirおよびAir2はn = 1、k = 0固定とします)。
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| Layer structure |
この条件においてAbsorptionモジュールを有効にし(Passive Opticsのみでも解析できます)、シミュレーションを実行します。実行した結果からTransmittanceとReflectanceが文献と合致することが確認できます。
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| Setfos上でのTransmittance(左)とReflectance(右) |
※本記事は筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を示すものではありません。
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