はじめに
本記事はUzabase Advent Calendar 2025の1日目の記事です
こんにちは、Watanabe Jin(@Sicut_study)です。
私が働いているUzabaseではふりかえり(retrospective)の文化が根付いており、チームは週に1回かならずふりかえりを実施しています。
そんなふりかえりですが、以下の流れで行われています。
1 チームでふりかえりを行う日時を決める
2 ふりかえりのファシリテーターを別チームの人に頼む
3 当日ふりかえりを行う
4 最後にファシリテーターにふりかえり進行についてフィードバックを送る
私たちのふりかえりにはファシリテーターという役割が不可欠です。
ファシリテーターはチーム外のメンバーが担当して、その日のふりかえりでどんなフレームワークをするのか、どんな進行を行うのかを考える必要があります。
今回はファシリテーターをやるときに難しいと感じる問題の深堀について自分なりにうまく行っている方法を解説したいと思います。
私はこれをMMGフレームワークと呼んで利用しています。
フレームワークを利用することで素早くチームの課題に対してアプローチするだけではなく、「発散と収束」をうまく使いこなしてファシリテーターとして活躍できるようになるはずです。
MMGフレームワークについて
MMGフレームワーク(未来/問題/現実)は深堀に特化させた手法です。
Uzabaseでは以下の流れで振り返りが行われます。途中の深堀のタイミングでMMGを利用してます。
1. 情報収集
ファシリテーターが情報収集をするためのフレームワークを用意して行っていきます。
タイムラインやKPTなど色々ある中からチームの状況に合わせて行います。
このときは人数が少なく多く広い範囲から情報が集められるように「ヘルスチェック」を行いました。
そのあと出した付箋を同じようなまとまりにグルーピングしていきます。
グルーピングすることで情報が整理されるので全体がみえやすくなり、ファシリテーターも進行がしやすくなります。
2. ふりかえりのテーマを決める
次に今回のふりかえりでチームで話しあうテーマを決めます。
ここで「投票」「話し合い」などで決めていることも多いですが、私はリーンコーヒーをします。
いきなり投票をすると早くテーマが決まる分、顕在的な問題しか選ばれないというデメリットがあります。そこでクイックにみんなの関心があることを話して、全体を理解した上で全員で決めるという方法に「リーンコーヒー」が向いています。
- 1人目の人を選ぶ
- 選ばれた人はトピック(付箋やグループ)から気になるものを1つ選ぶ
- 選ばれた人が話し出しで2分間全体議論をする
- これを人数分繰り返す
UzabaseのSaaSではチームが4-5人なので10分程度で行います。
このときに選ぶトピックは投票ではないので、気になるものや深堀したいもの、単純に聞きたいものを選んでもよいです。
このタイミングで全員が話す機会を作るのもふりかえりにおいて議論を盛り上げるためには重要です。リーンコーヒーをすると意見がまとまるので、全員が同じトピックについて目線が揃っている状態になります。
3. トピックの深堀をする (本題)
決まったトピックについてさらに深堀を行い、来週のチームのアクションへとつなげます。
このフレームワークは「問題」を解決したいという深堀にとても適しています。
ふりかえりの多くはチームののびしろをカイゼンしていくことが多いです。
MMGとは「未来」「問題」「現実」の頭文字をとってつけました。
このフレームワークは営業の人が行うセールストークの考え方を応用しています。
ここで少し話が変わりますが、なぜ人はものを購入するのでしょうか?
人がものを購入するときにはメカニズムが存在します。
人には手に入れたい理想の未来があります。
しかし、現実は、その理想とは離れた状態にあることがほとんどです。
この理想と現実の間に存在するギャップこそが問題として認識されます。
そして人は、この理想の未来と現実のギャップ(問題)を埋めるために商品(解決策)を購入するのです。
このギャップが大きければ大きいほど、人はどんなに高額なものでも購入します。
例えば100万円の商品だとしても、それを買えば確実に女性からモテるようになるのであれば、悩める男性は迷わず購入するでしょう。
セールスではこの「未来」と「現実」をはっきりさせることで、顧客に問題であることを認識させます。問題が大きければ大きいほど、どんな価格でも購入しようと思えるのです。
実はこの考え方は、チームのふりかえりにも全く同じように当てはまります。
テーマぎめでチームは「問題」を見つけました。
この問題はチームとしての理想の未来と現実がかけ離れているから感じるのです。
なのでまずは「未来」「現実」をテーマ(問題)を踏まえて再認識することから始めます。
1.選んだトピックの問題をまとめる
選んだトピックに対してリーンコーヒーで話をしました。
その内容を踏まえてあらためてチームとして何が問題なのかを箇条書きでまとめていきます。
このときまったく性質の違う問題が複数出てくることもあるので、別付箋していきます。
性質の違う問題をすべて扱うと議論がうまく進みづらくなるので、その中でも特に解決したい問題を1つ選びます。
2. 究極的な未来(理想)を出す
問題に対して究極的な未来(理想)を付箋に出していきます。
この未来が実現していたらこの問題はチームとして議題に上がることはなかったと思えるものです。
ここで未来が出たタイミングで
この未来がすべて叶ったら本当にこの問題は議論にあがらないですか?
と聞くようにしています。
未来がすべて叶っていたとしたら絶対に問題は解決できていないといけません。
3. 現実を出す
未来を出したら、次に現実で何が起きているのか「事実」を洗い出します。
未来が現時点で手に入っていたらこの問題は議題に上がっていないはずだからです。
4. 究極的な未来と現実のギャップを整理する
参加者が付箋を触るのは一旦終了です。
でてきた未来と現実の付箋を見比べて何がギャップを生んでいるのか議論してもらいます。
ファシリテーターはその議論をなるべくホワイトボードなどにまとめていきます。
すると「このギャップがあるからいけないんだ」というような本当の問題が現れてきます。
4.5 新たな問題の登場
このフレームワークをしているとしばしギャップがどれも「時間が足りない」など共通的な問題がでてくることがあります。
このときに「時間が足りない」と感じることが問題なのでは?というのをファシリテーターから言ってあげることが大事になってきます。
- 時間内でうまく仕事ができていない
- 時間を増やせていない
- 時間内で最高の仕事ができていない
これらが新しい問題となるので、次はこれらを問題としてMMGを始めていきます。
議論には幅と深さがあり、これは広くしていくことにつながります。
5. 問題を解決するアクションを考える
ここまでくるとそれぞれのギャップが言語化できてくるので、それぞれのギャップに対してどんなアクションができるのかを各々付箋に書いていきます。アクションのアイデアを出します。
このときアクションは「振り切ったもの」「現実的でないようなもの」でも積極的に出していくといいアクションにつながると思います。
4. アクションを決定する
ギャップに対してアクションのアイデアがでたので、その中から来週取り組むものを1つチームで決めていきます。
これは「緊急度」「はじめやすさ」「インパクト」を意識して決めるとよいでしょう。
最後に「SMART」な目標に書き直して振り返りは終了です。
S: Specific(具体的)::誰が、何を、どこで、いつ、なぜ、どのように行うのかを明確にします。
M: Measurable(測定可能)::目標の進捗や達成度を数値で把握できるようにします。
A: Achievable(達成可能)::努力すれば達成できる、現実的な目標を設定します。
R: Relevant(関連性)::上位目標や組織全体の目標と関連していることを確認します。
T: Time-bound(期限付き)::いつまでに達成するか、明確な期限を設けます。
ここで私が意識しているのは、アクションを決めたときに話していた問題についてもちゃんと書いておくということです。アクションを見返すときにそもそもなんの問題を解決するためにアクションをやると決めたのかを忘れてしまうのが理由です。
☓「来週私たちは他のチームメンバーに朝あいさつをしにいく。」
◎「他のチームの情報をちゃんと把握するために、来週私たちは他のチームメンバーに朝あいさつをして、機会を積極的に作る」
5. ふりかえりのふりかえり
ふりかえりに対するふりかえりをします。(通称ふりふり)
ファシリテーターに対して「よかったこと」「伸びしろ」をメンバーから伝えてあげます。
ふりかえりも何度もやることで成長させていくものでいきなりうまくファシリテートすることはできません。ここで適切なフィードバックを送ることもふりかえりに求められているスキルです。
深堀で意識していること
MMGを利用することで深堀をしながら話題を広げていくというのを形式的にできるようになりますが、よりうまくやっていくならファシリテーターからの問いかけも重要です。
おそらくどこかで沈黙のタイミングが訪れます。これを怖いと思うかもしれません。
しかし、この沈黙のときにこそファシリテーターから違った視点を与えることが重要になってきます。
このときに重要なのがコーチングの考え方です。
コーチングではクライアントが考えてもいなかったことを考えさせるのが大事です。そこでよく利用されるのが軸をずらした質問を投げかける方法です。
軸は大きく2つあります。
- 時間軸
- 視点軸
人というものは話している瞬間、今の自分の視点でしか話ができなくなってしまい多くのことを見失います。だからこそ客観的な視点を本人に与えてあげます。
時間であれば、「過去」「未来」です。
その問題は未来の自分からみると解決してそうですか?
過去の自分がその問題を知っていたとしたらどう動いていましたか?
視点であれば「他チーム」「一緒に働く仲間」などです。
他のメンバーからみたとしてどう見えていそうですか?
もし自分でなく別のメンバーから相談されたら何からしますか?
これをふりかえりのファシリのなかでやってあげると深堀はうまく行くことが多いです。
おそらくこのような軸をずらした質問をすると即答できないはずです。
ふりかえりやコーチングにおいて即答できない質問を投げることは良いことです。
即答できないということは、これまで考えてこなかったということなので、新たなことを考えさせる機会になっているということになります。
こういった新しい視点こそが議論が止まったときに必要になってきます。
おわりに
今回は私がふりかえりのなかで意識していることとMMGフレームワークについて紹介しました。
私はふりかえりがとても好きです。
システム開発の領域以外の手法を応用して行うことができるのが面白いなと思います。今回は「セールス手法」と「コーチング」を混ぜて解説していますが、もっと多くの考え方を取り入れることができそうです。
この自分なりに最高なふりかえりを作れる自由度こそが魅力です。
ちなみに過去には自作の情報収集フレームワークを作っていてこちらもおすすめです。




