「開発者3倍段」と肝に刻め
剣道3倍段、という言葉がある。
異種格闘技で戦う際、剣道は「剣という武器のリーチ・威力がある分、有利だ」というものだ。
あなたがそのゲームの開発者自身なら…
- あなたはすべてのアルゴリズムを把握している
- あなたは各ステージで起こる事件も展開も、発生する時間単位で知っている
- あなたは各ステージの厳密な勝利条件も、その判定方法も知っている
- あなたは敵の数、配置、AIの特性、死角を熟知している
- あなたはゲーム中の何がランダムで、何がランダムではなく決まるか知っている
- あなたはランダム要素の全要素数も、その要素に何が入っているかも、選択確率も知っている
プレイヤーは、これらの要素を具体的なデータで知ることは決してない。繰り返しプレイして、体感的な話をするのがせいぜい限界である。
だが、あなたは創造主だ。
創造主であるから、プレイヤーが知り得ないことをすべて知っている。だから、本来のプレイヤーより3倍は強い。
自分が「スリルある生きるか死ぬかのプレイで楽しい」ミッションは、おおむねクソになっている可能性がある。
最初に、だれか遊んでくれるテスターを見つけよう。ゲームの上手な人だけでなく、下手な人にもお願いできるとよい。
そして、テスターの意見には真摯に耳を傾けること。
テスターの感じた違和感、不満、感想は、あなた自身では決して気が付くことができない、とても重要な情報だ。どうしたら違和感や不満を解消できるかよく考えることで、さらにゲームの完成度が高まるだろう。
フライトシューティングゲームにおける難易度の本質
フライトシューティングゲームは、敵の攻撃を回避して敵に弾を当てるゲームだ。
シューティングゲームとしてやや異色なところは、
- 敵の多くが誘導弾(ミサイル)を撃ってくる
- 強制スクロールするゲームではないので、敵が視界外(背後や上下)からも撃ってくる
ところである。
ちょっとこのジャンルを遊んでみるとわかるが、後ろから撃たれる誘導弾を避けるのは一苦労だ。別の角度から同時に何発も撃たれたりすると、回避しきるのはかなり難しい。
難易度の一番のキーポイントは、
- プレイヤーを同時に狙って攻撃することのできる敵の数
ここにかかっている。同時攻撃数が多ければ多いほど、回避が大変になるからだ。(これはOR・オペレーションリサーチによっても裏付けられる。興味がある方は調べてみるとよい)
- 出現する敵の数、密度
- 敵の速度、機動性、射程、死角
- 敵の増援出現数、頻度、上限数
- 敵の耐久性(減らしやすさ)
- 友軍機の数(狙いの分散)、耐久性(分散の持続時間)
このあたりが調整可能項目だろう。
敵のせん滅をミッションオブジェクティブとして設定しておきながら、「物語の都合で絶対に墜落しないが、延々とプレイヤーを攻撃してくる敵」などがいると、ゲーム性は悪いほうにしかいかない。
なぜなら、プレイヤーは被弾リスクを下げるため、自分を攻撃する脅威をひとつでも多く排除したいのに、製作側の都合で撃墜できない敵が存在し続けることになるからだ。
解法の想定と「初見殺し」
ステージごとに、どこを難しくするか・どこを易しくするか設計をするわけだが、「1通りのみの解法を見つけてもらおう(他の方法では全部失敗)」とすると、プレイヤーにはかなりのストレスがかかる。最悪、それを見つけられずお手上げになってしまう。
プレイヤーは、開発者が思っているほどには情報を集めることはできない。ヒントを集めきれず、開発者の想定に思い至らないことのほうが多いものだ。
このあたりはテスターのフィードバックを受けながら探り探り進める部分ではあるが、
- 前提情報やヒントは、過剰と思うぐらい多く出す
- クリア方法は1通りだけに絞らない
といった配慮をしたほうがよい。
「敵に弱点を設定し、その弱点だけしか攻撃を受け付けない」ような設計をする場合があることと思うが、精密射撃が全く苦手でどうにもならないプレイヤーが挑んだときどうするのか…手間はかかるが精密射撃せずに勝てる方法を用意するか、など検討するとよいだろう。
一方で、「初見殺し」…初プレイ時には見破れない、プレイヤーを驚かせるギミックを仕込みたい場合もあるだろう。こうしたギミックは、同じ体験をしたプレイヤー間での共通の体験として、コミュニティを盛り上げるきっかけにもなったりする。
「初見殺し」を用意するときは、くれぐれも「卑怯な設計にはしない」ことがポイントだ。
何が公正かは、ゲーム設計、物語、想定するプレイヤー層によっても違うが、テスターのフィードバックをよく聞き、丁寧に情報を提示したい。
そもそも、どんな難易度にするか
ゲームのコンセプト自体に関わる問題だ。
ステージを攻略するのにどのくらいの時間を想定するか?
さくっと10分もあれば解ける内容にするのか、1時間は悩むようにするのか、1日かけて攻略に知恵を絞ってもらうのか。
ゲームだけではなく、様々な娯楽が可処分時間を奪い合う時代だ。
よく考えてコンセプトを決め、デザインしたいところである。
終わりに
こうして、つらつらとゲーム開発関連の記事を書き貯めてきているのだけれども。
え、肝心のゲームプログラミングについての投稿がないって?
…半年くらい先かなー?