BaslerのGigE Visionカメラを接続してみよう (pylon ViewerでのIP設定とライブビューの基本)
はじめに
これまでの記事はBasler社のacA2500-14gmを用いてモノクロ8bit画像のみ扱っており、カラーカメラでの動作確認をしていませんでした。
そこで、配布しているサンプルコード集をカラーカメラにも対応させたいと考え、Basler社のGigE Visionカラーカメラ(acA1300-30gc) を用意しました。
久しぶりに新しい Basler の GigE カメラ(acA1300-30gc)を触ったところ、接続まわりで少し手間取りました。忘れがちなポイントを自分用メモも兼ねて簡単にまとめます。
ゴール
- pylon Viewer で カメラを認識 → IP設定 → ライブビュー まで到達
- Static IP / DHCP / Auto IP の使い分け
- FPSが0で映らないときは トリガーモード確認
対象・前提
- カメラ:Basler acA1300-30gc(GigE・カラー)
- ソフト:Basler pylon Viewer
- 接続:PC の有線LANに直、またはスイッチ経由(PoE 使用なら対応スイッチ/インジェクタ)
ちなみに筆者はPoEスイッチングハブとしてNETGEAR社のGS108PEを使用しています。
手順①:pylon Viewer でカメラを見つける
- pylon Viewer を起動
- 左ペインの Device にカメラが一覧表示 → 見つからない場合は「Scan」
- それでも出ない:LANケーブル・ハブ・PoE 給電・同一セグメントかを確認
手順②:pylon IP Configurator でIPを整える
- デバイス一覧でカメラを右クリック → pylon IP Configurator(直接アプリを起動でもOK)
- IP 設定モードを選択し、必要なら値を入力・適用
3種類のモードと使い分け
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Static IP(固定)
- 組み込み機器・検査装置など、配線が決まっていて再現性が重要な現場でおすすめ
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DHCP(動的)
- 社内ネットワークにつなぐ・IPを管理者側で配布する場合に利用
- アドレスは DHCP サーバ依存。PC と同一セグメントに入るか要確認
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Auto IP(リンクローカル)
- Link-Local Addressingという方法で、DHCPサーバが見つからないとき、端末自身が自動で IPv4 を名乗る仕組み
- DHCP が無いローカル直結・一時接続で便利
-
169.254.x.x帯で自動割り当て。PC 側も同帯に落ちるので、Viewer からは見えるが他PCからは基本見えません
どれを選ぶべきか
結論:まずは DHCP、ダメなら Auto IP。運用は Static か DHCP(固定割当)
どれを選ぶかという話ですが、とにかく動作確認をしたいということであれば、まずDHCPを試し、それでつながらなければAuto IPにします。また、Auto IPは確定まで数秒〜十数秒かかることがあります。NICの無効化→有効化やケーブル再接続で再交渉を促せます。
実際の開発では、目的に応じて固定IP(Static IP)かDHCPにします。スタンドアローンの組み込み機器では固定IPにして再現性を確保します。
手順③:ライブビュー(Continuous Shot)で動作確認
- pylon Viewer でカメラを選択 → Open
- 右上の Continuous Shot(▶)でプレビュー開始
- 0.0fpsで画が出ない/止まる ときは Trigger SelectorとTrigger Modeを確認
“映らない”ときの最初のチェック:Trigger SelectorとTrigger Mode
-
Trigger Selector = Acquisition Startにする -
Trigger Mode = Off(連続取り込み)にする- もし On の場合:
-
Trigger Source = Softwareにして Viewer 上の Software Trigger を押す - または Hardware(Line) の場合は外部信号が必要(つながっていないと映りません)
-
- もし On の場合:
- フレームを受信しているのに"映らない"ときは、露光・ゲインが極端(真っ黒/真っ白)な可能性あり → まずは
Auto Exposure/Auto Gainで仮設定
私の失敗事例
フレームを受信していないことに気づき、Trigger Mode = Offにするも受信できず困りました。カメラが壊れたのではといろいろ調べましたが、結局Trigger Selector = Frame Startとなっていたことが原因でAcquisition Startに変更するだけで解決しました。初歩的ですが、ハマると時間を溶かします。
他によくあるハマりポイントのメモ
-
IP は合っているのに Viewer に出ない
- PC の NIC が別セグメント/複数 NIC でルーティングされない
- まずは 直結 + Auto IP で疎通確認 → その後 Static に切替
-
Continuous Shot がカクつく / 途切れる
- 露光が長すぎる・PC が省電力・ハブが 100Mbps など
- まずは 解像度/フレームレートを控えめにしてテスト
-
カラーが変
- PixelFormat とデモザイク(Bayer変換)の設定順を確認(Viewer の Color Transformation を既定に)
まとめ
- 右クリック → pylon IP Configurator で IP を素早く整える
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Static / DHCP / Auto IP は用途で使い分け
- 装置化/実運用:装置ならStatic IP、DHCPの場合もあり
- 動作検証・一時接続・セグメント未確定:DHCP か Auto IP
- ライブビューが出ないときは Trigger Mode をまず確認(Off / Software / Hardware)
- カラーカメラ対応のサンプルコード集は、順次拡張予定です
👨💻 筆者について
@MilleVision
産業用カメラ・画像処理システムの開発に関する情報を発信中。
pylon SDK × C# の活用シリーズを連載しています。
🛠 サンプルコード完全版のご案内
Qiita記事のサンプルをまとめた C#プロジェクト(単体テスト付き) を BOOTH で配布しています。
カラーカメラへの対応も順次行っていきます。
- 撮影・露光・ゲイン・フレームレート・ROI・イベント駆動撮影など主要機能を網羅
- WPFへの実装もフォロー
- 単体テスト同梱で動作確認や学習がスムーズ
- 記事更新に合わせてアップデート予定(カラーカメラにも対応したらお知らせ)



