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意思決定にはより多いデータが必要というのはほんとうか?

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ビッグデータといった言葉が流行ると、多くのデータ量によってより良い予測モデルが作れるようになる、より多くの知見が得られるようになる、より良い意思決定ができるようになる、などと思い込みがちです。

しかし、ほんとうにそうなのでしょうか?

そこで、今回は少し古い記事になるのですが、起業家のアダム・ロビンソンという人が、より多くのデータはより良い意思決定につながらないどころか、むしろそれは危険な間違いにつながってしまうこともある、という点を今から半世紀前ほどに行われた研究をもとに解説している記事を見つけたので、こちらに紹介します。

以下、要訳。


ほぼ全ての投資家が、若いときに言われたか、直接でなくとも彼らが卒業したビジネス・スクールの決まりきったカリキュラムを通して推奨されたことがあります。

それは、世界のことをより多く理解すれば、彼らの投資結果はよりよくなる、ということです。特にデータに裏付けされたプロダクトやサービスを提供する組織で働いている場合は。

これは、より多くの情報を取得し評価すれば、私達はより情報に裏打ちされていることになり、より良い意思決定ができるということを意味します。そして、より多くの情報を集め、より多くの情報を知っていれば、有利になるだろうということです。特に数字に関する世界では。

しかし、これは投資という反直感的な世界においては真実ではありません。というのもこの世界では多くの情報を集めることは、むしろ投資結果に被害を及ぼすことにさえなりかねないからです。

1974年、世界的に有名な心理学者であり、ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーニマン(訳注:ファスト&スローの著者で、不確実性下における意思決定モデルの一つであるプロスペクト理論の構築に貢献)の同僚でもある、ポール・スロビッチは意思決定に対して情報が寄与する効果を評価するための研究を始めました。この研究は全てのビジネス・スクールで教えられるべきでしょう。

スロビッチは8人のプロの競馬の予想屋を集めてきて、「あなた達がどれだけうまく競馬レースの勝者を予測するかを観察したい」と言いました。この予想屋は彼らの予測によるギャンブルによって生計を立てている優れたプロの人達でした。

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スロビッチは、このテストは4回のラウンドからなり、それぞれのラウンドで40のレースを予測するものでした。

最初のラウンドでは、それぞれのギャンブラーは、それぞれの馬に関して、彼らが望む5つの情報を得ることができました。1人の予想屋は5つのうちの1つの情報としてジョッキーが何年ほどの経験があるかを知りたいかもしれませんし、別の予想屋はそんなことは全く気にせず、それよりもそれぞれの馬が過去に達成した最高のスピードを知りたいかもしれません。

そしてここが重要なポイントですが、それぞれの予想屋に各レースでどの馬が勝者となるかを予測してもらうさいに、自分の予測にどれだけ自信があるかも答えてもらいました。

各レーズは平均して10の馬がいたので、たまたまでも、つまり適当に推測したとしても、10%の確率(10回に1回)で正しかったということになります。つまり、予測に対する自信は最低でも10%はあるはずということです。

5つの情報しかない最初のラウンドでは、予想屋達の正解率は17%でした。これはなかなかのものです。何の情報もなく適当に予想した場合の正解率である10%に比べて、70%も高いのです。さらに、彼らの自信度はだれもが19%ほどでした。つまり、17%の正解率、19%の自信度があったということです。

次の2回目のラウンドでは、10の情報が与えられました。3回目のラウンドでは20の情報が与えられ、最後の4回目のラウンドでは40の情報が与えられました。

ところが驚くことに、正解率はどのラウンドでも変わらず、いつも17%だったのです。4回目のラウンドに関しては最初のラウンドに比べて35も情報量が多くなったと言うのに、当初よりも正解率が良くなることはなかったのです。

しかしそれだけではありません。残念なことに彼らの自信度の方はと言えば、最後のラウンドでは34%まで上昇し、最初のラウンドに比べて実に2倍となりました。

より多くの情報は彼らの予測をより正確にすることはなかったのですが、その代わりにより多くの自信を持たせることとなりました。このことは、彼らがより多くのお金を自分たちの賭けに費やすことになり、その結果より多くのお金を失うこととなりました。

ある程度の最小となる量を超えると、より多くの情報は、その獲得にともなうコストと時間という不利益は置いておいたとしても、いわゆる心理学者が呼ぶ「コンファメーション・バイアス / 肯定バイアス」をより多くするだけとなってしまいます。

私達は、私達の持つ当初の評価や結論とそぐわないような情報を得たとき、それらを都合よく無視したり払いのけたりします。逆に、そうした当初の決定を肯定するような情報を得たときには、私達の結論が正しかったのだとより自信を持ってしまうことになります。

投資の話に戻りましょう。

世界を理解しようとすることに関する2番目の問題は、世界は理解するにはあまりにも複雑すぎるということです。世界を理解しようとすればするほど、起きたことやトレンドを説明しようとすればするほど、自分の持つ、いつも多かれ少なかれ間違っていることが多い意見により深くはまってしまいがちです。実際に目の前で起きている金融に関するトレンドに気づかないということになってしまうのです。

さらに問題なのは、実際は多かれ少なかれ間違っていることが多いにもかかわらず、自分は世界を理解していると思いこんでしまい、投資家達は間違った自信を持ってしまうことになるのです。

経験の長い投資家や金融の専門家たちがよく「こんなトレンドはおかしい」というのを耳にします。「ドルがこんなに落ちるのはおかしい」、「株価がこんなに上がるのはおかしい」といった具合にです。

しかし、投資家達が何かが「おかしい」と言ったとき、ほんとうに起きていることは、彼らがそのトレンドが逆の方向に行くはずだと信じるいくつもの理由を持っているということなのです。そこで、彼らは今起きているトレンドが「おかしい」ということを信じてしまうのです。しかし、全くもって「おかしい」のは、世界を理解するために彼らが使っているモデルの方なのです。それこそがおかしいのです。世界はいつも正しいのです。

実際、金融に関するトレンドは世界規模での様々な人間の行動と人間が信じていることを含むためとても複雑で、最も力のあるトレンドとはいつも「おかしく」見えるもので、そうしたトレンドから利益を得るにはすでに遅すぎるときになってはじめておかしくなくなるものなのです。

そこで私は、洗練された投資家達やメディアに出てくるコメンテーターたちが、例えばエネルギー関連の株がここまで下がり続けるのはおかしい、と言うのを聞くとエネルギー関連株はさらに下がるのだろうと知ることになります。こうした投資家達は取引の間違ったほうに起ち、起きていることを受け入れるのを拒否するので、当初の決定をさらに信じ込みより多くのエネルギー関連株を買ってしまったりすることになります。最後には、タオルを投げ入れそれらのエネルギー関連の株を売らなくてはいけないハメになり、そのことがさらに株を押し下げることとなるのです。


訳、終わり。

あとがき

今回のコロナパンデミックでは専門家の言うことがとにかく現実に起きていることと比べて間違っていることが多かったですね。色々合った間違いの中の1つが以下のものです。(参考

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マスクをすれば感染を防げると言っていたが、現実にはそんなものは関係なかった。多くの専門家はワクチンを接種すれば感染を防げると言っていたが、現実にはそうならなかった。人口あたりで今ではアメリカを超え世界で最も多い「陽性者数」を出している日本。

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接種すれば重症化を防げると言っていたが、病院に入院するほどの患者の数を減らすことはなかった。

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70%の人達が接種すれば集団免疫が獲得できると言っていたが、現実にはそんなことにならなかった。日本は世界でも最も多い接種率。

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アメリカでは共和党の州を中心に、こうしたいわゆる専門家達による「モデル」または「理論」が現実に起きていることとは合っていない、ということが早い段階でわかり始め、さっさと軌道修正が行われました。フロリダにおいては、2020年の9月の時点でコロナに関する全ての規制が撤廃されました。知事による、理論ではなくデータを元に現実でおきていることをもとにした判断でしたが、当時よりリベラルメディアや「専門家」により批判され続けました。しかし、2年経った今、結局フロリダの施策が正しかったのは、もはやアメリカのリベラルメディアでさえ認めざるを得ない状況になりました。

「理論」的に正しいから、ここは我慢してもっと徹底的にやってみようと、民主党系の州はいつまでも同じ様な施策を行っていましたが、今となっていはそうした州でさえも一切の規制が無くなってしばらくたちます。

ロシアに対する金融、経済制裁についてもそうです。ロシアが悪いとかそういう問題ではなく、当初想定していたような効果が見られないどころか、自国が苦しむことになっているような制裁をいつまで続けるつもりなのでしょうか。(参考スレッド

ユーロも円も大きく下落し、ルーブルは大きく上昇しました。

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さらにヨーロッパはロシアからのエネルギーを禁輸にしたせいで、エネルギー価格が大暴騰し市民やビジネスはまるで制裁を受けた国に住んでいるかのように苦しんでいる状態です。(参考

私達人間は完全ではないので、専門家と言える人でも、過去に関することに対する解釈は得意ですが、現在進行系で起きていることに対する理解は間違っていることがよくあります。そのことを謙虚に認めることができれば、理論の正しさを主張し続ける「演繹的」な考え方から抜け出し、現実で起きていることを観察し、理解に努める「帰納的」な考え方ができるようになり、そうして「科学的思考」ができるようになります。

(科学的思考に関しては過去に行ったセミナーの録画、またはツイートのスレッドをご参照ください。)

データを使ったからと言って、それがより良い意思決定につながることは保証されていません。さらに本文にもあったように、より多くのデータがあるからと言って、それがより良い意思決定につながるという保証もないのです。

データを使うことで、自分の持つ仮説や理論を現実世界で起きていることに照らし合わせ検証していくことができるようになります。こうして、「昨日よりも今日がより良い」という意味での「より良い」意思決定ができるようになり、私達は停滞するのではなく、前に向かって進んでいくことを選択することができるようになるのではないかと思います。


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