はじめに
最近教育データサイエンス関連の研究を始めたのですが、まわりに同じ分野の研究者がおらず、最新の動向をどのようにキャッチすれば良いのか、どのようなカンファレンス/ジャーナルに投稿するべきなのかがわからなかったので WIREs Data Mining Knowl Discov 2013, 3: 12–27 doi: 10.1002/widm.1075 を参考に自分なりにまとめてみました。似たような記事に、人工知能学会のブックマークもありますが、2004年の記事なので情報が若干古い気がします。あと、教育工学の中でもデータ分析系は割と少数派でメインはITの活用なのでそこら辺を上手く区別する必要があると思います。
カンファレンス
全体的に6月、7月開催のものが多めです。つまりこの記事を6月末に書いている時点でお察しください。
学会名 | 開催月 | 内容 |
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International Conference on Educational Data Mining | 7月 | ざっと見たところ教育データサイエンスの見本市という印象。対象は生徒の学習ログ、教室の画像、生徒の発言など多岐にわたり、方法もディープラーニング、自然言語処理、ベイジアンモデリングなど様々 |
International Conference on Learning Analytics and Knowledge | 3月 | こちらはEducational DataminingではなくLearning Analyticsを掲げた学会。ガチガチの統計というよりはダッシュボードの見せ方とかやや実践よりである印象。会場では実際のデータを使ったハッカソンも開催されていた。 |
International Conference on Artificial Intelligence in Education | 6月(隔年) | AIという言葉からも分かる通り、手法としてディープラーニング多めかつ何かを自動化するという観点からの論文が多い印象です。 |
International Conference on Intelligent Tutoring Systems | 6月(隔年) | TutoringというだけあってRecommendationとかReal-timeなどがキーワードの論文が多い印象。パフォーマンスを高めるだけでなく、学習動機への関心も高い |
International Conference on User Modeling, Adaptation, and Personalization | 7月 | この会議は教育に特化したものではないので、医療・音楽・心理など多種多様な分野の研究を含みます。手法としてはディープラーニング、協調フィルタリングなどが多めか。 |
Knowledge Discovery and Data Mining | 8月 | GoogleやAmazonなど名だたる大企業がスポンサーに連ねるデータサイエンスの一大カンファレンス。もちろん教育に限らずデータサイエンス一般に関して一流の論文が採択される |
International Conference on Computers in Education | 11月 | アジア太平洋地域主催の国際カンファレンス。論文のレベルとしては少し他よりも見劣りする部分があるかもしれないが、日本人の参加者も多く、最近ではAI in Educationに力を入れているということで、データ分析系の論文も多い。 |
Applied Natural Language Processing | 3月 | 自然言語処理の応用という比較的計算機科学よりの学会だが、トピックの一部としてEducational Data Miningも含まれている |
ジャーナル
Impact Factorの計算方法についてはあんまり理解していないですが、公式サイトからなんとなくとってきました。参考程度に見てください。
ジャーナル名 | 略称 | 発刊頻度 | IF | 内容 |
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Journal of Learning Analytics | JLA | 年2回 | --- | データ分析の主に実践例にフォーカスした論文を多く掲載している。 |
Journal of Educational Data Mining | JEDM | 年2回 | 3.68 | 毎号3〜4本程度しか論文が掲載されていないのでかなり厳選されている印象。対象はMOOCなどオンライン学習環境が多く目的は成績の予測やチュータリングシステムなど。手法はモデルベースのものが多い。 |
Journal of Artificial Intelligence in Education | JAIED | 年2回 | 1.953 | AIという言葉を冠しているがディープラーニング系の論文は少なくて、どちらかというとAIを「自動化」と同じ意味で使っている印象。例えば2017年には自動採点システムに関する特集号が2回組み込まれたりしていた。 |
Journal of the Learning Sciences | JLS | 年1回 | 2.0 | イデオロギーについての論文や都市における読み書き能力を調べた研究などテクノロジー(コンピュータ)に限定されない研究も多い |
Computer and Education | CAE | 月1回 | 4.53 | 毎月刊行で1巻ごとの収録論文数も多い。が、データ分析というよりはICT機器をどのように教育で使うかという論文が多い印象 |
IEEE Transactions on Learning Technologies | TLT | 年4回 | 2.26 | 教室におけるVRの活用などテクノロジーの応用メイン。データ分析系の記事は1巻に1本あるかな程度。とはいえ、項目反応理論など心理統計の論文も載っているので最終的にはなんでもありなジャーナル |
IEEE Transactions on Knowledge and Data Engineering | KDE | 月1回 | 3.43 | 先ほどのTLTとは異なり、こちらはデータ分析系の記事100%。ただしその分教育とのつながりは薄くなっていて、純粋に手法の新しさが問われる。 |
ACM Special Interest Group on Knowledge Discovery and Data Mining, Explorations | SIGKDD Explorations | 年2回 | 6.48 | KDDのジャーナル版。カンファレンスがメインっぽいので、論文は毎号サーベイ論文数本を掲載するのみといった形。 |
User Modeling and User-Adapted Interaction | UMUAI | 年5回 | 2.80 | ユーザーモデリングを冠しているので推薦システム系の論文が多め。教育関係ではMOOCの成績予測など。 |
Internet and Higher Education | INTHIG | 年5回 | 5.84 | オンライン学習システムの研究が多い。データ分析系はMOOC上でのユーザーデータの分析などがたまに論文になる程度 |
Decision Support Systems | DCS | 月1回 | 3.56 | データによる意思決定がテーマになっており、統計を活用した様々な事例が、もちろん教育に限らず個別に紹介されている。その分統計的なバックグラウンドが怪しいものも多少ありますが、幅広い分野の事例がみれるので面白いと思いました。 |
Expert Systems with Applications | ESWA | 月2回 | 3.76 | こちらは完全に手法に関する研究。発刊頻度も高く掲載論文も多いので応用のアイデアを得るには良いと思います。 |
Knowledge-Based Systems | KBS | 月2回 | 4.39 | こちらもESWAと似たような系統の雑誌。手法メインで多くの論文を月2回の頻度で発刊している。 |