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上流工程で活躍するには、“設計・開発の感覚”が欠かせない

Last updated at Posted at 2025-10-21

はじめに

「上流工程をやりたい」「設計や要件定義を担当したい」──
そう考えるエンジニアは多いと思います。

ただ、上流工程という言葉が “手を動かさない立場”“マネジメント寄りの仕事” と誤解されることも少なくありません。

しかし実際のところ、上流工程こそ“設計・開発の感覚”が最も求められる仕事です。
なぜなら、要件定義や設計の判断は、コーディングやシステム設計のリアルな感覚に支えられていなければ、現場を正しく導くことができないからです。


コードは「動けばなんとかなる」けれど、上流ではそうはいかない

プログラムの世界では、多少命名が甘くても、責務の分割が少し雑でも、
最終的にユーザーが期待する結果を返せれば、サービスを提供することはできます。
つまり「動くもの」を作るという意味では、多少の曖昧さも許容されます。

しかし、上流工程ではそうはいきません。
ここで定義される設計や用語、責務の分担があいまいだと、
そのズレは開発フロー全体に波及してしまいます。

  • チーム間で認識がずれる
  • 設計書や仕様の整合性が取れなくなる
  • 実装段階で手戻りが増える
  • サービスの品質やスピードに影響する

上流工程の判断は、開発全体の「設計図」を描く行為です。
その基礎となるのが、設計・開発の感覚、すなわち現場の構造を理解する力です。


上流工程こそ、設計・開発の経験が生きる場所

上流工程の仕事は、要件をまとめたり、会議で意思決定することではありません。
本質的には、「構造を定義すること」です。

たとえば、まだコードを書かない段階でも、

  • どの概念をどの粒度で扱うか
  • 責務をどこで区切るか
  • モジュール同士をどう連携させるか
    といった設計的思考が求められます。

これらの判断は、実際に開発を経験していないと、現実的な精度を持って行うのが難しいものです。
クラス設計や命名の感覚、アーキテクチャを考える力など、
日々の開発で培った実装の思考こそが、上流工程での強さになります。


設計・開発の感覚が、抽象的な議論を現実に落とす

上流工程では「何を作るか」「どう作るか」という抽象的な議論が多くなります。
しかし、これを現実的な仕組みに落とし込むには、
実装や設計のリアルな感覚が欠かせません。

  • 「この設計だと依存関係が複雑になりすぎる」
  • 「この粒度ならテストがしやすい」
  • 「この仕様だと運用フェーズで詰まる」

こうした判断は、手を動かしてきた経験があるからこそ、
実感をもって言語化できます。

つまり、上流工程で求められるのは、
抽象を扱う力ではなく、抽象を具体に変える力です。
そのための軸になるのが「設計・開発の感覚」です。


開発の現場を理解している人ほど、上流で強くなる

上流工程に関わる人は、チーム全体の方向性を決める立場にあります。
そのとき、開発現場の構造を理解しているかどうかは、結果に大きく影響します。

現場を理解している人なら、

  • 実装者の視点で設計の複雑さを見積もれる
  • 現実的なスケジュールを立てられる
  • 将来的な運用コストまで考慮に入れられる

つまり、上流工程に立つほど「現場の感覚」が必要になります。
上流と下流を分けるのではなく、現場を理解した上流がチーム全体を強くするのです。


設計・開発の感覚は、日々の実践から生まれる

上流工程に関わりたいときほど、
まずは設計・開発の基礎を丁寧に磨くことが大切です。

  • 命名を丁寧にする
  • 責務を意識して分割する
  • コードを構造的に考える
  • 設計意図をドキュメントに落とす

こうした地道な積み重ねが、
「構造を整理し、言葉で定義する力」を育てます。

そしてそれこそが、上流工程で求められるスキルの核です。

設計・開発の感覚は、上流に進むための条件ではなく、
上流で価値を発揮し続けるための基盤になる。


まとめ

上流工程で活躍するために必要なのは、
特別な管理スキルや会議の上手さではありません。

日々の開発の中で培われる、
設計や実装の現場感覚
そして「動くものを作る」ための構造的思考こそが、
要件定義や設計判断の精度を高めます。

上流工程は、現場の上に立つものではなく、
現場の理解を土台として成り立つ仕事です。


おわりに

「上流工程=考える仕事」「開発=作る仕事」と分けて考えられがちですが、
実際にはその二つは地続きです。

開発を理解しているからこそ、上流で現実的な設計ができる。
上流の視点を持っているからこそ、開発の中で全体を意識できる。

この往復の中にこそ、エンジニアとしての成長があり、
チーム全体の品質を引き上げる力があります。

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