はじめに
「キャリアをどうしたい?」と聞かれても、即答できる人は少ない。
何がしたいのか分からない、今の仕事が正しいのかも分からない──。
でも、エンジニア的に考えると、キャリア設計はそんなに特別なことではありません。
むしろ、普段の開発プロセスとまったく同じです。
キャリアとは、自分専用のDockerコンテナをKubernetes上にデプロイすること。
現実(Kubernetes)という社会的基盤の上に、自分らしい世界(Docker)を構築していく作業です。
準備段階(妄想の世界)= Vision を描く
まずは、自分がどんな世界にいたら幸せを感じるかを妄想してみましょう。
この段階では、現実的な制約は一切無視してOK。
自分が理想と感じる環境変数を、思いつくまま書き出していきます。
これはいわば「自分キャリアのVision定義」です。
例
- チームの中で率直に意見を言える関係性がある
- 自分の技術記事が誰かの助けになる
- 朝、仕事を始めるのが少し楽しみと思える
これらは、あなたの理想世界のspec.yamlの断片です。
自分がどういう環境でパフォーマンスを出せるかを、まず妄想の中で定義します。
現実で動かすのはそのあと。
まずは“理想のコンテナイメージ”を作るフェーズです。
Visionを現実に落とし込む(要件定義)
Visionを描いたら、次はその世界を実現するための要件を洗い出す段階です。
ここからは、開発で言えば要件定義と設計フェーズ。
「この理想を動かすには、どんなスキル・環境・行動が必要か?」を分解していきます。
例
| Vision | 必要な要素(要件) |
|---|---|
| 技術で人を助けたい | 発信スキル、文章力、実務で得た知見 |
| チームで議論できる職場 | コミュニケーションスキル、心理的安全性のある文化 |
| 技術でプロダクトを牽引したい | アーキテクチャ設計、マネジメント経験 |
こうして、Vision → 要件 → スキル という構造を可視化します。
まさにアプリケーションの設計書を作るように、自分のキャリアの仕様を整理していくのです。
実装フェーズ:マイルストンとタスクに落とす
要件を整理したら、次はマイルストン(期限付きの目標) を設定します。
プロジェクトと同じように、キャリアにもリリースサイクルを定義しましょう。
- 半年後にQiita記事を5本書く
- 1年以内に小規模プロジェクトをリードする
- 3年後にはアーキテクトとして設計に関わる
マイルストンを決めたら、あとはタスク化です。
- 書籍『〇〇』を読む
- 勉強会で発表してみる
- 社内で1on1を提案する
キャリア構築とは、結局のところ具体的なタスクの積み上げ。
Visionを明確にし、要件を定義し、タスクを実装する。
この流れは完全に開発プロセスと同じです。
再デプロイのすすめ:失敗したらやり直せばいい
開発でも、最初から完璧なシステムは動きません。
要件を間違えたら修正し、バグが出たら再デプロイする。
キャリアもまったく同じです。
「やってみたけど違ったな」と感じたら、それは失敗ではなく仕様変更です。
Kubernetes上のDockerコンテナのように、
自分のキャリアも簡単に置き換えられます。
- 転職して合わなかった → rollbackではなく再デプロイ
- 目標が変わった → イメージを更新して再ビルド
- スキルが足りなかった → 新しいライブラリを追加して再起動
大事なのは、キャリアは継続的デプロイ(CD)であるという発想。
止まらず、更新し続けることでしか見えてこない世界があります。
エンジニアの仕事は課題解決。キャリアも同じ。
エンジニアの本質的な仕事は、課題解決です。
要件を整理し、仮説を立て、試し、改善する。
このサイクルを通してプロダクトを育てていく。
そしてそれは、キャリア設計にもまったく同じことが言えます。
自分のキャリアを考えることは、
自分という人間の「課題」を解決すること。
「何がやりたいか分からない」「今の自分に何が足りないか分からない」というのは、
ただ課題定義ができていない状態なだけです。
自分のキャリアを考えること自体が、
エンジニアとしての思考力・抽象化力・構造化力を鍛えるトレーニングになります。
おわりに:今日が最初のデプロイ日
最後に、一番大事なことを。
どんなに考えても、どれだけ情報を集めても、やらなければ何も始まりません。
大事なのは、「やるか、やらないか」。
頭で理解しているだけでは、キャリアは動きません。
でも、行動するのに“遅い”ということは一度もありません。
Kubernetesのコンテナがいつでも再デプロイできるように、
あなたのキャリアも、今日この瞬間から始められる。
今日が、自分キャリアの中で一番最初の日です。
最初の kubectl apply を打つその手が、
未来のあなたを確実に動かし始めます。