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【CEDEC2017】「みんなで遊べるVR!『THE PLAYROOM VR』のVRマルチプレイゲーム制作手法」講演レポート

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「みんなで遊べるVR!『THE PLAYROOM VR』のVRマルチプレイゲーム制作手法」講演レポート

概要

このセッションはCEDEC2017、8/30の16:30~17:30に行われたものです。SNS公開可能と記載されていたため、本レポートは講演での口頭説明をしていた部分を付け加えつつ、資料と合わせて見返した時、内容がすぐわかるように講演内容をまとめたものとなります。

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開発に至った経緯

VRはデバイスの性質上、孤独な体験になりやすいが、もしVRで起こっていることを周囲の人と共有できたら、VRの楽しさをより多くの人に伝えることができるのではと考えた。

ソーシャルスクリーン

THE PLAYROOM VRはこの機能を活用したパーティーゲームである。

ASOBI! Teamのゲーム制作プロセス

開発プロセスの一番最初には、必ずチームメンバー全員の「プレインストーミング」を行なっている。

例えば、「コントローラを使わずVRの中で出来ることは何か?」という新しい遊びを生み出すきっかけになるようなテーマを設定して、アイディアをどんどん出していくようなことをしている。

こういったブレストで出たアイディアを元に、何がやりたいのかをビジュアルでまとめた簡単なドキュメントを作成する。

このドキュメントを元に、プログラマが一人で2週間かけてデモを1つ作っている。これを時間が許す限り何度もこのサイクルを繰り返す。

VRで考えたアイディアは紙のようにうまくいかないことが多いので、デモを作って素早く実験することが重要。

なのでVRゲームを作成する場合には、プロト版を作成する時間はしっかり取った方が良い。

プロダクション

たくさんのプロト版を作成し、プロトタイプ同士を組み合わせて、ゲームを作っていく。

新しい技術の活用方法を探して、実験していくのであれば、かなり有効なプロセスではないかと考えている。

製作中に気がついたこと共有

非対称VRマルチプレイに最も大切な"一体感"

非対称VRマルチプレイとは、先ほどのセパレートモードを活用した、視点と役割の異なるVRマルチプレイのこと。

立体的に360度見ることができるプレイヤーとTVプレイヤーでは表現できることは異なるので、それぞれの特徴を活かして遊びやすいようにゲームを作ったらこのようになった。

VRプレイヤーは孤独感を感じやすいので、プレイヤー同士がVR空間を共有して一緒にプレイしている「一体感」を意識して制作側が作る必要がある。

この「一体感」を生むためには?

最も基本的なことはプレイヤー同士がお互いを見られるようにすることだった。

そのため、カメラアングルやテレビ画面内での、それぞれのスケール等が非常に重要な要素となる。

VRプレイヤーは大きく配置し、テレビプレイヤーは小さく配置する、というのがお互いが見えて非常にやりやすい構成だった。

スケールについて嘘をつくのは、整合性を壊すことにはなるが、一体感を産むためなら多少の嘘は許される。

VRなりきりプレイ

VRプレイヤーが何か面白いことをすると、それを見ているTVプレイヤーから笑い声が上がることがある。それによって、何かしらの動きをしてTVプレイヤーを楽しませることは、一体感を生むことに繋がることがわかった。この面白さをVRなりきりプレイと呼んでいる。

VR内で自分の姿が変わっているというのは新鮮な面白さがある。また内蔵マイクを使ったボイスチェンジャーでコミカル度をアップさせることもできる。

また、単に見た目を変えるだけではなく、動きも非常に重要になってくる。なので自然となりきりプレイの動きになるようにゲームデザインをしている。

なりきりプレイを楽しむためにはもう1つ大事な要素がある。それが「オーディエンス」。

オーディエンスはもちろんTVプレイヤーになる。VRプレイヤーは当然デバイスをつけていて周りの様子が見えないので、実際の視線を感じることはできない。そのため、VR内でそれをうまく伝えることが、なりきりプレイを盛り上げるために非常に重要になる。

PLAYROOM VRでは基本的に全てのTVプレイヤーの操作キャラクターやNPCキャラクターがVRプレイヤーに視線を向けるようにしている。そうすることで、ゲームの世界がインタラクティブで、活き活きとするし、VRプレイヤーからすると自分が注目されているように感じる。

更にもう1つの要素として、VRプレイヤーはVRの中で自分の姿を確認するために、TV画面に表示されている映像の一部をVR内に配置するようになっている。この時に、映像を左右反転させることでVRプレイヤーから見ると鏡のような状態で自分の姿を確認することができる。自分がどのような姿かわかると、モチベーションも上がるし、自分の役割を理解するのにも有効である。

VR空間内でのコントローラーの活用方法

リアルで持っているワイヤレスコントローラーをVR内に持ち込んで同じ位置に表示することができる。これによってVR空間の実在感が増す効果がある。

また、コントローラーを表示する場合、手は表示しない方が実在感が強かった。なぜなら、トラッキングできるのはあくまでもコントローラーだけで、もし手を表示するとしたらあくまでも予測での形となる。その場合、一度でも「これは自分の手ではない」と感じてしまったら途端にせっかくの触感を伴ったコントローラーの実在感は壊れてしまう。

VR内の各コンテンツによって、コントローラの見た目も変化させている。ただし、元々の形状から大きく異なると実在感が異なるので、そこは気をつけている。ここで、使わないボタンをモデルから消している。VRプレイヤーは実際に手元のコントローラーを確認することができないため、「○ボタンを押せ!」という命令は、ボタンの配置を覚えてない人にとって難しい。なのでVR内でこのようにモデルを変更した上で操作説明をするのは非常に有効である。

コントローラーを使用する場合は、カメラからのトラッキング範囲内の動きで収まるようなゲームデザインをする必要がある。また、仮にトラッキングが外れてしまった時でも、ゲームの進行を止めないような使い方が望ましい。例えば、ライトを向けたり銃のようなコントローラーの角度がメインの操作となる使い方であれば、ジャイロセンサーだけでもゲームプレイを続行することができた。

会話を楽しむ非対称VRマルチプレイ

PLAYROOM VRのゲームのほとんどはコントローラーが1つだけでも二人以上のマルチプレイができる。これはPS4を手に入れてすぐでもマルチプレイで遊べるようにするため。ここでVRプレイヤーにはTV画面が見えないことを逆に利用し、逆に言葉を使って直接コミュニケーションするゲームを作成した。

VR空間でのUI配置方法

VRではUIも三次元に配置する立体的なオブジェクトとなる。平面的なUIだとしてもVRプレイヤーからの距離を決めなくてはならない。カメラに貼り付けるようなUIは焦点が合わなくなり、見辛い。そのため、ユーザーのその時々の注目している距離に合わせてUIを表示する必要がある。

PLAYROOM VRでは、遠い場所にあるUIの場合は大きなスペルのUIに、近い場所にある場合は小さなスペルのUIを表示している。一見平面なUIも全てアセットにして、奥行きを感じる配置にしている。

TV側のUIに関しても、一体感を損なわないために、できるだけVRプレイヤーとTVプレイヤーが見ているUIを同じにし、どちらからでも操作できることを目指した。ただし、VRプレイヤーの画面そのままだと、パースがかかってしまい見辛くなる。そこで、TV画面側でUIを表示する時はオルソカメラに切り替えて、3Dオブジェクトを2Dのように描画している。

PLAYROOM VRではVRプレイヤーとTVプレイヤーの操作は常に全く異なっている。そのため、各々に必要な操作説明はそれぞれの画面で行なっている。

また、あるゲームではインタラクションの対象物と操作説明を同時に見せている。VRプレイヤーに操作の混乱を招かないようにしつつ、インタラクションにすることで視線の誘導を行なっている。

VRで3人称視点アクションゲームを作る方法

VRは基本一人称視点だが、三人称視点でキャラクターを操作して見てもVRらしい実在感は感じることができて、新鮮な面白さがある。

今回この要素を取り入れてPLAYROOM VRでもゲームを作っている。このゲームでは、VRプレイヤーが今見ている方向が画面の奥になるようにしている。カメラ制御はプレイヤーの頭向きに全て委ねることで自然に操作することができる。

この場合、VRプレイヤーの移動方法があると、ゲームデザインの幅も大きく広がり、VRの体験としてもダイナミックなものとなる。VR酔いのリスクを検討しつつ模索した結果、回転と左右の動きを排除した3つの移動方法を採用している。

  • そもそも移動しない。VR酔いのリスクなし。
  • 前方にのみ一定速度で移動し続ける。比較的VR酔いのリスクなし。
  • 前方にのみキャラクターと一緒に移動する。

前方にのみキャラクターと一緒に移動する方式では、キャラクターが一定距離離れるとキャラクターに引っ張られるような感覚でVRプレイヤーも前方に移動するといった状態にしている。

この状態を前提とした場合、操作キャラクターがどの程度の距離まで離れたら自分が前方に動くのかという予測がしにくい。

PLAYROOM VRで実際の一定距離の直線を引いて研究をして見たが中々思ったようにいかなかった。議論の結果、VRの中で自分に対して平行だと感じているラインというのは実は実際よりも若干曲がっているのではという結論になった。

そこで、開発では一定距離のラインをぐにゃっと曲げた状態にして見たところ、VRの中で見てみると一定距離として違和感なく感じることができるようになった。

また、先ほどの前方にのみキャラクターと一緒に移動する方式を元にレベルを作っていくと面白い効果があることがわかった。1つのレベルの中で、3Dアクションのゲームプレイと、2Dアクションのゲームプレイを共存させることができたということ。自分の正面にキャラクターがいるときは3Dアクションのようになるが、キャラクターが横移動をメインとするレベルでは2Dアクションのようなデザインができた。

このような移動方式のゲームでは、操作キャラクターと自分自身とでコンビを作って"一体感"を出すことが重要となる。VRプレイヤーは意思を持って周りを見回すことができるVR内のキャラクターとなる。なのでVRプレイヤーをただの追従カメラとして扱ってしまうと、孤独な印象を受けてしまう。ここで、VRプレイヤーにゲーム内で役割を与え、操作キャラクターを助けたりというアクションをすることで一緒に冒険させるのが重要。

質疑応答

Q:VRでのハンドルを使うゲームの場合、手は表示したほうがいいかどうか。

A:そのようなプロトタイプは作ったことがないが、ハンドルからユーザーの手を離すシチュエーションをさせたいのであれば、手は表示しないほうがいいと思われる。少しでも自分の手と違う操作をした時にVRの中で自分の手じゃないと思ってしまうと、触感があっても壊れてしまう。

Q:ネットのコミュニケーションではなくリアルのコミュニケーションという面でマルチプレイゲームにしたのは何故?

A:家族などのような、普段はゲーマーではないような人も新しい技術に触れて、すごいと思って欲しいというのがあった。

Q:ゲームをしっかりプレイするために後ろに戻ったりもしたいけれど、今の段階でVR酔いせずに後ろに戻れる手法はあるか?

A:まさに問題視していた部分で、バックはあまり良くなかった。後ろに戻る必要がある場合は、一回暗転してから画面切り替えをするとVR酔いがしにくいかもしれない。今後作るとしたらそういう形になるかもしれない。

Q:首を振る動きの時に、周囲の人に影響はないか心配になっていたが、どういう解決をしているのか。

A:基本的にVRプレイヤーは真ん中に座ってもらうことを心がけてもらって、十分なスペースを取ってもらっている。

感想

家族みんなで遊べるVRマルチプレイゲームというもの自体が新鮮みがあり、そこで発表されたノウハウ自体も、どれも勉強になるものでした。特に、三人称視点VRマルチプレイというのが、実現可能だということに驚きました。その移動方法になったとしてもユーザーを楽しませるための工夫を凝らしていて、僕自身もプレイして体験したいとすごく思いました。

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