皆さんは “TeXのロゴ” をご存知ですよね? そう、“E”の字がアレになっているアレです。そこで質問です。あなたは“TeXロゴ”を正しく書く(描く?)ことができますか?
確かに、LaTeX文書においては \TeX
命令で真っ当なTeXロゴを出力できます。しかし、TeXロゴの熱狂的なファンとしては当然、(La)TeX文書以外、例えば手書きやHTMLの文書においても、TeXに言及する際には真っ当なTeXロゴを使いたいですね。
※私自身は特にTeXロゴの熱狂的なファンではありませんし、TeXの愛用者のすべてがTeXロゴの熱狂的なファンであるわけでもありません。それどころか、「ロゴを普通のテキストの中で用いる」という“稀な”習慣に否定的で、TeXの文書中でもTeXロゴを決して用いない人もいます。
TeXロゴをヘタに描く6つの方法
少し以前に、ネコ型ロボットの某アニメキャラクターについて、「ヘタに描く6つの方法」というネタが大きな話題になりました。もしかしたら、TeXロゴについても、「ヘタに描く」ことに大きな関心を持っている人がいるかも知れません。ここでは、“コレジャナイ感”に満ちあふれたTeXロゴを手軽に作るためのコツを紹介したいと思います!
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“Tex”と書く1
TeXロゴをそれっぽく描く方法
ヘタなロゴもそれなりに味わいがあっていいものですが、やはりTeXロゴの熱狂的なファンとしては、まともなTeXのロゴの描き方も身につけておきたいところです。
とりあえず、実際のTeX組版の出力をみてみましょう。
\documentclass{article}
\begin{document}
\TeX
\end{document}
\TeX
\bye
やっぱりコレですね! もっと詳しく観察しましょう。
この青色のところがポイントです。Tの右上のセリフがEの横棒に、Eの右下のセリフがXのセリフに“触れて”います2。この状態を意識して、字間を詰めたりEの位置を下げたりすればよいわけです。
もちろん、サンセリフの書体の場合は、上記のセリフを利用した規準は使えません。サンセリフでのTeXロゴの手本となるものとしては、Knuth氏が実際に「The TeXbook」の見出しで用いているものがあります。
セリフの場合と違って、コレといったポイントを明確に書き下すのは難しいですが、「こんな感じ」を念頭に置いて文字を配置すればよいでしょう。
イロイロな書体で“それっぽいTeXロゴ”
ここで述べた規準に従って色々な書体でTeXロゴを組んでみたものをしめ示します。
書体の名前のすぐ下に3つの実数(①,②,③)が記されていますが、これが文字の配置のためのパラメタの値となります。(フォントの全角(em)を単位とします。)
- ①は‘T’と‘E’の間の字詰めの量
- ②は‘E’をベースラインから下げる量
- ③は‘E’と‘X’の間の字詰めの量
最適なTeXロゴを実際に使おう
さて、書体ごとに“最適化された”TeXロゴの文字の配置が判ったら、当然、それを実際に使ってみたいですね。画像として実現するのは難しくないでしょう。問題は、文章の中でロゴを使う場合で、ここでもし画像を使ってしまうと、周囲のテキストと合わせるのが大変で、これに失敗すると先に述べた“ヘタ”パターンに陥ってしまいます。ここでは、幾つかの文書作成環境(ソフト)においてTeXロゴを“書く”方法を紹介します。
LaTeXでTeXロゴしよう!
もちろん、LaTeXでは \TeX
でTeXロゴが出るのですが、残念ながら文字配置のパラメタを調節することができません。“最適な”TeXロゴを書くには自分でマクロを組む必要があります。
% ①,②,③は先に述べたパラメタの値
\newcommand*{\myTeX}{%
\mbox{T\hspace{-①em}%
\raisebox{-②em}{E}%
\hspace{-③em}X}}
例えば、Times(newtxtext パッケージ)で最適な「TeXはアレ」を出力する場合は次のようにします。
\documentclass[a4paper]{jsarticle}
\usepackage{newtxtext}
% Timesのパラメタ値を書き込む
\newcommand*{\myTeX}{\mbox{T\hspace{-0.132em}%
\raisebox{-0.171em}{E}\hspace{-0.084em}X}}
\begin{document}
{\TeX}はアレ
\end{document}
HTML+CSSでTeXロゴしよう!
実際のWebページで“それっぽい”TeXロゴを書くためによく使われているのは次のような方法です。
<!-- e(小文字)にクラスを付ける -->
T<span class="e">e</span>X
.e {
line-height: 0; text-transform: uppercase;
/** ①,②,③は先に述べたパラメタの値 **/
margin-left: -①em; margin-right: -③em;
vertical-align: -②em;
}
HTMLで“e”を小文字で書いて、それをCSSを text-transfrom で大文字に変換して表示している理由は、こうしておくとテキスト情報が“TEX”でなく適切な“TeX”となるからです。
Palatinoを使う例を示します。
Hello, T<span class="e">e</span>X world!
body {
font-family: "Palatino", "Palatino Linotype";
}
.e {
line-height: 0; text-transform: uppercase;
/** Palatinoのパラメタ値を書き込む **/
margin-left: -0.140em; margin-right: -0.102em;
vertical-align: -0.161em;
}
Microsoft WordでTeXロゴしよう!
Word 2013の場合、こんな感じです(説明サボり)3。
他のバージョンでも同じ感じでしょう(説明サボり)。
まとめ
TeXロゴの熱狂的なファンではない一般人は、無理せずに普通に「TeX」と書きましょう!
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「それはロゴを書こうとすらしていない」というツッコミは措いておきましょう。もちろん、「ロゴを書かずに“TeX”と書くのは正当な表記です。 ↩
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もっとよく見ると、右下の方のセリフはXのセリフをほんの少しだけ突き抜けています。これについてはあまり好ましくないと考える人もいるようです。ただし、「Tの右上のセリフ」と「Eの右下のセリフ」の縦幅は一般的に異なる(普通の書体のデザインだと下側の方が大きくなる)ので、両方の“触れ方”を最適にするのは難しいかも知れません。水平位置についても、横棒の左端ギリギリに触れるのがよいという意見もあります。 ↩
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Wordの場合、ある文字に対する「文字間隔」の設定は次の文字との間に適用されるようなので、“T”に①の字詰め、“E”に③の字詰めと②の字下げを設定すればよいでしょう。なお、字下げ設定は0.5pt単位でしか調整できないようです(今の場合、文字サイズが10.5ptなので最適値は 10.5pt×0.26=2.73pt)。 ↩