この記事は「RICOH THETA Advent Calendar 2015」に12月8日に掲載されるはずだったのに12月24日に掲載された記事です。超ごめんなさい
皆さんThetaで空間を切り取りまくってますか?切り取りまくってますよね!Thetaで全天周の写真を撮るのはとても簡単で、電源を入れて前面のシャッターボタンを押すだけで「ピヨ」っと撮れます。あとで画像を見てあの日何をしていたのか思い出すときに使う「記憶の補助」目的でピヨる場合これで良いのですが、記念写真で「ピヨ」っとする前に、ちょっと気を使うだけで格段にキレイな全天周写真を撮ることが出来ます。今回はキレイな記念写真をピヨる場合のTipsをお送りします。
#太陽(スポットライト)の向きに注意#
次のサンプルを御覧ください。抜けような青空とだいたい黒っぽい服の人々のコントラストが際立つ、冬の有明イベントの待機行列のTheta写真です(プライバシーのため回転できない二次元画像にしておきます)。
ハチワレ写真のサンプル
一見きちんと撮れているようですが、空を見ると気になる点がありませんか?そう、青空が真っ二つに割れています。これは台風の進路すら曲げる参加者の高まったリビドーや四〇過ぎても中二病であるのが原因ではなく、太陽がある側のレンズの画像が白っぽく、太陽がない方のレンズの画像が黒っぽくなっているためです。
御存知の通り、Thetaは裏表に2つのレンズがついていて、それぞれ1つのレンズは真正面から左右90度強の半球形の範囲を担当します。このように1つのレンズで半球形の範囲を撮影できるレンズを「全周魚眼レンズ」といいます。Thetaは全周魚眼レンズが裏表で貼り合わされている構造で、レンズを中心にした球形の空間の範囲すべてがワンショットで「ピヨ」っと撮影できる構造になっています。
Thetaの中の小さい人は、撮影後に2つのカメラの半球画像をつなぎあわせて1つの全天周画像を作り出します。その際2つの画像の明るさや色合いなどを調整してつなぎ目が違和感なく綺麗に繋がるようにかなり上手に調整します。ところが一方のレンズの撮影範囲に太陽やスポットライトなど明るい光源があり、一方のレンズに明るい光源が無かったり影になる場合、中の小さい人が調整しきれなくなる場合があり、出来上がりの画像を見ると、空や天井など同じ色であるはずの部分がねこのハチワレ柄のように2色に割れてしまいます。
Thetaは2つのレンズの間で輝度が大きく異る状況にあまり強くない
#Theta Sでは太陽の向きは銀色の枠側にしよう#
Thetaでハチワレ写真を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。最新機種のTheta Sでは中の小さい人の処理が上手くなったのとセンサーの進化で、そもそもこの現象は起こりにくいのですが、起きた場合の対策も簡単です。太陽をレンズに向けずボディーの銀色の枠の方に向けるようにします。
Theta Sでは銀色部分で太陽を狙おう!
次のサンプルを御覧ください。晴天の入間基地航空祭の行列の写真です。
こうすると、裏表の2つのカメラにとって明るい光源と暗い部分両方が含まれた画像が生成されるため、Theta Sの中の小さい人が2つの画像を調整してつなぎ合わせるときに調整が破綻しにくくなります。屋内では多くの場合で1つのライトだけではないはずですので、見た目で明るさの分布が同じバランスになるようにTheta Sを旋回させつつ何枚か撮影してみてください。
#初代Theta・m15では太陽の向きは枠側にしてから少しずらそう#
では、ハチワレ写真対策でわざわざ初代Thetaやm15を分けた理由はなんでしょう。じつはTheta Sと同じ対策をするとサウロン様((c)ロード・オブ・ザ・リング)が召喚されてしまうからです。次のサンプルを御覧ください。晴天の横田基地祭の待機行列の写真です。行列写真好きですね、俺。
サウロン様が召喚された横田基地
光源と対称軸にサウロン様の眼がくっきり開いていることがわかります。画像を回転させてサウロン様を画像の中心に持ってくるとマジサウロン様なのですが、眼鏡のお兄さんがばっちりThetaを見ているため、プライバシーに配慮して画像を少し回してあります。
そこで苦肉の策なのですが、初代Theta・m15では一旦太陽を枠側に合わせたら、気持ちレンズ側に旋回させます。何度くらい旋回と言われても光源の強さで変わるので難しいところですので、該当するシチュエーションではThetaを回転させながら何枚か抑えでシャッターを切っておく、というのが対策になります。
ちょっと旋回させるのがポイント(ダメかもしれないけど)
Theta Sでサウロン様が現れない理由は「レンズの設計とレンズのコーティングが改良されて、逆光耐性が強いから」だと思います。もちろん、どのThetaでもレンズを綺麗にしておかないとより容易にサウロン様が召喚されますので、Thetaのレンズを定期的に柔らかいレンズクリーニング用の布で拭くことを忘れてはなりません。
#ムービーではハチワレ対策はお手上げ#
ではTheta Sでムービー撮影時のハチワレも同じ対策で防ぐことができるのでしょうか。残念ながら最新のTheta Sをもってしても、ムービー時は完全にはハチワレを防ぐことが出来ません。これは想像ですが、ムービー撮影時の全コマで色や明るさの調整を写真と同じ程度に正確に調整しながら、さらにリアルタイムでステッチする処理能力は最新のTheta Sの中の小さい人といえども備わっていないため、ムービー撮影時はおおまかな画質調整処理が行われているためでしょう。
これをなんとかしたい場合は、Theta SのHDMI出力からリアルタイムに全周魚眼画像を2つ取り出すストリーミングモードに設定し、出力信号をハードディスクレコーダーで撮影し、ポストプロセスで2つの画像の画質のマッチングとステッチするようなセミプロ以上の機材とテクニックが必要となります。追加ソフトとハードでご予算30万位から(高性能PCが別途必要)ですね。
#レンズの向きと画質の劣化#
Thetaにとって、太陽やスポットライト等の強い光源を意識してレンズ向けることはとても大事なのですが、それ以上に大事なのが「最も撮したい被写体はレンズの真正面に捉える」のが重要です。次のサンプルを御覧ください。1枚のTheta Sの全天周写真から切り抜いた2枚の入間基地航空祭の写真です。
Theta Sのレンズ正面にいたUH-1と滑走路
Theta Sのレンズ正面で捉えたUH-1はくっきりはっきり写っています、しかし枠側で捉えたP-3Cや観客はぼんやりしてる上、輪郭に青や赤や紫色の色がついています。これはレンズの周辺画質が落ちる設計上の限界によるものです。
ココに現れている劣化の内、レンズの外側に向かって画像が流れるボケが「コマ収差」、青や赤の縁取りが付つ劣化が「色収差」、明るく光っている金属の光沢などの周り出る紫色が「パープルフリンジ」です。実際はこれら3つ以外の複数の劣化パラメーターと2つの画像をつなぎ合わせるステッチ処理による劣化も合わさった画質になるため、つなぎ目に近い画像はよりボンヤリ汚く写ります。よってThetaにとっての画質のベストスポットはレンズの真ん前、ワーストスポットはレンズの側面の銀色の枠の部分です。
(ガジェオタにとっては)安価で、1ボタンで全天周写真やムービーが気軽に撮れるThetaで、外周部の画質劣化がこの程度で済んでいるのは奇跡的だとは思いますが、レンズの正面と枠側では無視できないほどの描画力の差があります。よって皆さんがThetaで撮影する際には、前述の光源の条件を軽視したとしても「絶対撮りたいメインの被写体はレンズの真正面に捉える」べきですし、女子会やコスプレイヤーの皆さんがThetaを囲んで写真を取る場合は、シャッターを切ってあげるふりをして「自分をレンズのど真ん中で撮影すべき」ですし、「いけ好かないあの子は枠側で撮影すべき」ですし、いけ好かないあの子がThetaのレンズをどっちに向けているかで、あなたがどう思われているのかも判ってしまう訳です。
というわけで様々な無用なトラブルを避けるためにも、ここでもThetaを旋回させつつ何枚か抑えで写真をとっておくのがベストプラクティスですね。
#このTipsの決定打はどうなよの…#
複数条件が含まれるため、このTipsに銀の弾丸がないのが歯がゆいのですが、まとめるとこんな感じです。
優先度1:注目したい被写体はレンズ真正面
・周囲の観客などぼかしたいものは枠側に追いやる
優先度2:太陽や強い光源の位置に注意
・Theta Sなら強い光源は銀色の枠側
・初代やm15は銀色の枠から少し旋回させてずらす
上記の2つの条件を勘案しつつ、「様々な問題」を回避するためThetaを左右に旋回させて何枚か撮影しておきましょう。枚数を抑えればベターショットが撮れる可能性が増えますし、人間関係もThetaの画像のように円満になること間違いなしです。
そしてちょっと余裕が出てきたら、Theta / Theta S の公式スマホアプリを使っていきましょう。アプリを活用した撮影パラメーター設定は怖くないですよ。たかがデジカメとアプリ、失敗したら画像をゴミ箱に捨て設定をリセットするだけです。
優先度3:オート撮影を卒業してスマホアプリのリモコン機能を活用しよう
- 撮影現場では階調感を残そう。
・白飛び・黒潰れはあとから編集ソフトで調整できる。入ってない階調は調整出来ない。
・眩しい場所ではマイナス方向の露出補正を1,2目盛り入れる。
・暗い場所ではプラス方向の露出補正を1,2目盛り入れる。 - 暗い場所では三脚+自撮り棒を活用・モードはISO優先。
・ISO 100~400あたりで長秒シャッターを切ってノイズを抑えよう。 - ISO優先やシャッター速度優先モードで長秒シャッターを切って時間の流れを操ろう。
・夜の歩道橋の上から流れるテールライトの写真。
・渓谷で白く流れる滝の写真。
・街頭で歩いている人々を流す・消す。 - 色温度オートでは光源色に合わせて白いものが白く写るだけ。設定を変えて画像を演出してみよう。
・夜のビル街を電球モードや日光モードで青っぽくクールに。
・曇りモードで電球の明かりをより暖かく。
この季節は様々なライトアップ・除夜の鐘・初日の出などイベントが盛んな時期ですから、小型三脚と三脚穴付きの自撮り棒、スマホにThetaを持っていろいろな場所でTheta撮影をチャレンジしてみましょう。
それでは良いクリスマスとコミケとお正月を!