この記事は、Metal Advent Calendar2016の10日目です。
これまで、MetalのGPUコンピューティングについて解説記事を書いてきました。
[iOS] MetalでGPUコンピューティング (1) 最小限のコードの記述と特性の把握
[iOS] MetalでGPUコンピューティング (2) 群知能
[iOS] MetalでGPUコンピューティング (3) MTLDevice
[iOS] MetalでGPUコンピューティング (4) MTKView
[iOS] MetalでGPUコンピューティング (5) MTLLibrary
[iOS] MetalでGPUコンピューティング (6) MTLCommandQueue
本記事では、前回に引き続きAppleが提供するサンプルコードの解説を行います。
扱うサンプルコードは、前回と同じライフゲームのアプリ、MetalGameOfLifeです。
MetalGameOfLife
今回は、サンプルコード内のMTLCommandBufferについて解説を行います。
MTLCommandBufferのオブジェクトはGPUに引き渡されるエンコードされた命令を格納しています。
MTLCommandBufferはクラスではなくプロトコルです。
MTLCommandBufferのオブジェクトは、MTLCommandQueueにより生成され、生成元のキューの内部でのみ実行することができます。全てのコマンドバッファは、生成元のコマンドキューに追加された順番に実行されることが保証されています。
コマンドキューの生成は一度だけですが、コマンドバッファは毎フレームごとに生成、実行されます。
繰り返しになるのですが、このサンプルコードは、主に以下のファイルで構成されています。
AAPLRender.h
AAPLRender.m
AAPLViewController.h
AAPLViewController.m
Sharder.metal
このうち、AAPLRender.mには並列コンピューティング及び描画のCPU側のロジックが、Shader.metalには頂点シェーダー、フラグメントシェーダー、GPUコンピューティング用のシェーダーが書かれています。
ここからは、サンプルコード内におけるMTLCommandBufferの使用箇所を解説していきます。
AAPLRender.mに以下の記述があります。MTLCommandQueueのcommandBufferメソッドによりコマンドバッファが生成されています。この記述は毎フレームごとに呼ばれる箇所にあります。
id<MTLCommandBuffer> commandBuffer = [self.commandQueue commandBuffer];
また、以下のコードでは、コマンドバッファからMTLComputeCommandEncoderのオブジェクトの生成を行なっています。
id<MTLComputeCommandEncoder> commandEncoder = [commandBuffer computeCommandEncoder];
このコマンドエンコーダーオブジェクトは、コマンドバッファにコンピューティングのコマンドを格納します。
以下のコードでは、コマンドバッファからMTLRenderCommandEncoderのオブジェクトの生成を行なっています。
id<MTLRenderCommandEncoder> renderEncoder = [commandBuffer renderCommandEncoderWithDescriptor:renderPassDescriptor];
このコマンドエンコーダーオブジェクトは、コマンドバッファにレンダリング用のコマンドを格納します。
MTLCommandBufferから生成できるコマンドエンコーダーオブジェクトには、以下の4つがあります。
- MTLRenderCommandEncoder
- MTLComputeCommandEncoder
- MTLBlitCommandEncoder
- MTLParallelRenderCommandEncoder.
このうち、MTLBlitCommandEncoderは画像データのコピーに用いるエンコーダー、MTLParallelRenderCommandEncoderはマルチスレッドでレンダリングする際のエンコーダーです。
コマンドバッファに対してGPUコンピューティングの設定、及びレンダリングの設定が為された後、コマンドバッファがコミットされます。
[commandBuffer presentDrawable:self.view.currentDrawable];
...
[commandBuffer commit];
このように、MTLCommandBufferはGPUへのエンコードされたコマンドを格納する役割を担っています。
今回はライフゲームのサンプルコード内におけるMTLCommandQueueの解説を行いました。
次回以降、さらに他の箇所についての解説を行なっていきます。