さぁ始まりましたKiCadアドベントカレンダー.現時点で日数が3日しか埋まっておらず,もう不安しかない!まぁ始めての試みなので,生暖かく見守っていただければ幸いです.あと,何か書ける人は手伝って!
#KiCadとは
KiCadは,Windows,Mac OSX,Linux上で動作する,回路設計からプリント基板のアートワーク,作成したガーバーデータ(業界標準のプリント基板の記述形式)のチェックを行うことができる, オープンソースのEDAソフト です.一昔前まで電子工作と言えば,秋葉原で電子部品を買って来てー,ブレッドボードやユニバーサル基板で回路を作ってーという方法が一般的だったのですが,近年の電子部品の小型化と格安プリント基板製造メーカーの台頭により,アマチュアの電子工作でもプリント基板製作が一般化してきています.
これまでアマチュア向けプリント基板CADとして日本で一般的なのは,Eagleでした.ただ最近は,Eagleの非商用で作成できる基板サイズや層数,回路図の枚数に不満を持ち,もっと制限の少ないDesignSpark PCBといった無償のプリント基板CADを検討するユーザーが出て来ています.特にMakerにとっては,Eagle無償版は「お金をもらったらダメ」なので,展示会での有償頒布ができないといった弱点があります(*注1).そこで,そういった基板設計の制限や利用用途の制限がなく,オープンソースで機能の多いKiCadが注目されています.
KiCadは無償のプリント基板CADの中では珍しいリアルタイムDRC(Designe Rule Check)という機能を持ち,配線間の距離など製造基準に満たない設計を自動的に排除する機能があるため,その他のCADの,設計→DRC→引き直し→DRC→引き直し・・・というサイクルをなくし,工数を削減できるという長所があります.また,最新のKiCad 4.0.0からは,これまで商用CADにしか搭載されてこなかった,押しのけ配線という,既存の配線を押しのけて新しい配線を通す機能も実装され,さらに使い勝手が良くなったことが期待されます.
*注1:Eagle無償版(フリーウェア版)の制限は非常にシンプルで厳密なため,コンテストで賞金を獲得したり,アルバイトで利用したり,記事を書いて原稿料をもらったりといったことも,厳密にはNGだと思われます.Maker向けには,Eagle Makeというエディションが用意されているので,こちらを利用すべきです.
#ダウンロード
KiCadのダウンロードは,kicad.jpページの右メニューから,Windows版のダウンロードを行うことができます.
ただ,KiCadは現在数年に一度の安定板アップデートの時期を迎えており,実は昨日(2015年11月30日)に最新の安定板のソースコードがリリースされたばかりです.そのため,ここ数日中に安定板のバイナリが下記リンク先にアップロードされるはずですが,出版されている書籍やWeb上の情報は,全て旧安定板に準拠しているため,KiCadに慣れるまでは旧安定板を利用したほうが良いでしょう.ただ,Mac OSX版については,これまで安定版が存在しなかったため,以下のリンクのものを最初から使用してください.
#KiCadを学ぶには
KiCadを学び始める方法は簡単です. 付属の日本語チュートリアルを実際に操作しながら読んでください!! これは,アプリケーションを起動して,メニューの「ヘルプ」の項目から読むことができます.KiCadに付属している日本語マニュアル類は,KiCadの日本ユーザコミュニティ内の有志が翻訳したもので,どこよりも正しい内容が書いてあります.チュートリアルを一通りこなしたら,KiCadのたいていの操作はできるようになります.EeSchemaやPcbNewなど各アプリケーションのマニュアルは,チュートリアルよりもさらに細かく機能の説明が載っているので,時間があるときに目を通してみてください.
紙で読みたいという場合には,CQ出版から発行されている拙著『一人で始めるプリント基板作り 完全フリーKiCad付き(SP No.127)(トランジスタ技術SPECIAL)』をお読みください.
ざっくり操作感を見てみたい場合は,soburiさんの『KiCadで雑に基板を作るチュートリアル』がお薦めです.
その他にも,最近はWeb上の情報も充実し始めており,主なものはkicad.jpのWikiからたどることができます.
#困ったときは
始めてのことにチャレンジしようとすると,たいてい何かに詰まるものです.こうしたときはマニュアルを読み返すのが一番ですが,kicad.jpのWikiにも,よくある質問がまとめられています.こちらも参照してください.それでも解決しない場合は,日本ユーザコミュニティのメーリングリストがあるので,こちらで質問すると,誰かが答えてくれるかもしれません.質問する際は,
・使っているOS
・使っているKiCadのバージョン
・期待した動作
・実際の動作
・スクリーンショット(あれば)
といった情報があると,対応が早いです.
また,Twitterでも情報が盛んにやりとりされています.KiCadに関する情報は,たいてい@kicad_jpのアカウントがリツイートしているので,購読していると役に立つこともあります.ただ,@kicad_jpは質問受付けアカウントではないので,質問の返答率はそんなによくありません.
以上,KiCadって何?これから始めるにはどうすればいいの??という人向けの情報でした.KiCadは企業が販売しているCADではなくオープンソースで有志が作成しているCADなので,使う側も与えられたCADを不満たらたらで使うのではなく,自分の使い方をブログ等で発信したり,あるいは開発に参加したりと,受け身ではなく攻めの姿勢で関わるのが良いと思います.みんなも楽しく,Let's KiCad!
明日はところさんですー.