官能検査とは
人の感覚器官を利用して物の品質や特性を評価する方法を官能評価、その検査を官能検査と言います。官能評価において検査によって得られたデータは統計的に解析する必要があります。そこでよく使われる統計学的に有効な手法としては主に次のようなものがあります。
- 二項検定
- カイ二乗検定
- t検定
- 分散分析
- 回帰分析
- 主成分分析
- ノンパラメトリック検定
などなど……。今までの統計学の話でも登場した手法がちらほらとうかがえることがわかります。
特に最初の二項検定は官能検査では基本的な検定であり、その種類として 2 点識別法、 2 点嗜好法といったものが挙げられます。
2 点識別法と 2 点嗜好法のちがい
A と B の試料を比較、感覚によって両者の間に順位を付けるのが 2 点識別法です。ただし A と B には客観的な基準による順位が存在している必要があります。したがって人の感覚によって判断した順位が正しいか誤答であるか、明確に判定できることになります。
このことから 2 点識別法で利用されるのは片側検定です。
これに対し 2 点嗜好法では A と B に客観的順位が存在しない状況を想定します。したがって両側検定をすることになり、これが 2 点識別法と嗜好法の大きな違いです。
ちなみに、片側検定と両側検定の違いについてはこのあたりが参考になります。
2 点識別法は、ユーザーが A と B を識別する能力を持つか、また A と B の間に有意な差があるかをテストする場合など、幅広く適用されます。
その他の官能評価手法
フェリスの 2 点嗜好法
2 点嗜好法では試料 A B のうちどちらが好みであるか明示します。これに対し A B のいずれも等しく好む人の割合を推定したい場合があります。これを考慮したのがフェリスの 2 点嗜好法です。
1 点識別法
ランダムに存在する A 及び B の試料から 1 個ずつサンプルを抽出、これがいずれであるか判定するのが 1 点識別法です。このとき、試料がすべて A であるかもしれないし、あるいは A が 1 つも含まれていない可能性もあります。また総数がいくつであるかも通常は開示されません。
1 点嗜好法
ある品物に対する消費者の嗜好を調べるためにそれを 1 つだけ提示して「美味しい」「まずい」のように 2 項で判定させるのが 1 点嗜好法です。
3 点識別法
試料 A と B が識別可能かを調べるために AAB のように 3 個の試料を用意、このうちどれとどれが同じで異なっているものはどれかというふうにテストするのが 3 点識別法です。
2 点識別法では A と B の差が明らかである必要があったのに対し、こちらはどういう性質の差があるのか不明であっても適用できるという利点があります。
3 点嗜好法
AAB のように試料を用意、ひとつだけ異なる試料を選出したのちに、残りと比較してどちらが良いかをテストする方法が 3 点嗜好法です。
他にもたくさんの手法があるのですが掲載しきれないほどなのでこのあたりにしておきましょう。
まとめ
官能検査における統計的な評価方法についてまずは手法を列挙しました。次回はその代表である二項検定について統計計算の過程を説明していきます。