この記事は Vim 8.0 Advent Calendar の 22 日目の記事です。
Vim 8.0 では、Vim 本体のテストのスタイルが新しくなりました。
新しいテストのサンプル
新しいスタイルのテストは Vim 本体のテストのために追加されたものですが、基本的に Vim script の機能であるため、プラグインのテストにも利用できます。
以下に、新しいスタイルで書かれた簡単なテストコードを示します。
" テスト対象の関数
function! Add(a, b) abort
return a:a + a:b
endfunction
" --------------------------
function! Test_Add() abort
call assert_equal(5, Add(2, 3))
endfunction
function! s:run_test() abort
let v:errors = []
call Test_Add()
if empty(v:errors)
echo 'Test Passed!'
else
echo 'Test Failed!'
for error in v:errors
echo error
endfor
endif
endfunction
call s:run_test()
実行すると、以下のようにテストをパスします。
Test Passed!
テストに失敗する例も示します。Test_Add()
関数を以下のように書き換えます。
function! Test_Add() abort
call assert_equal(10, Add(2, 3))
endfunction
実行すると、以下のようにテストに失敗します。
Test Failed!
function <SNR>1_run_test[3]..Test_Add line 1: Expected 10 but got 5
テストの仕組み
以上の例から見て取れるのは 2 点です。
- 値のチェックに使っている
assert_equal()
関数 - テストの結果のチェックに使っている
v:errors
組み込み変数
新しいテストでは、これらを使ってテストを書きます。
仕組みは単純です。v:errors
組み込み変数は配列です。assert_
で始まるアサート系の関数を呼び出し、アサートに失敗すると、この v:errors
に失敗のメッセージが追加されます。
例で行っているように、テスト開始前に v:errors
を空にし、いくつかのアサート系の呼び出したあと、最後に v:errors
の中身を確認することでテストを行います。
アサート系関数
追加されたアサート系の関数を紹介します。
ほとんどの関数は {msg}
引数を持っており、これを渡すことで v:errors
に入るメッセージを指定できます。省略した場合は関数毎に用意されたメッセージが使用されます。
assert_equal({expected}, {actual} [, {msg}])
{actual}
が {expected}
と等しい事をテストします。型の自動変換は行われません。
assert_notequal({expected}, {actual} [, {msg}])
{actual}
が {expected}
と等しくない事をテストします。
assert_inrange({lower}, {upper}, {actual} [, {msg}])
{actual}
が {lower}
以上 {upper}
以下の数値である事をテストします。
assert_match({pattern}, {actual} [, {msg}])
{actual}
が正規表現 {pattern}
にマッチする事をテストします。
assert_notmatch({pattern}, {actual} [, {msg}])
{actual}
が正規表現 {pattern}
にマッチしない事をテストします。
assert_true({actual} [, {msg}])
{actual}
が TRUE である事をテストします。ここでの TRUE は、非ゼロの数値か、v:true
です。それ以外の型や値の場合は失敗します。
assert_false({actual} [, {msg}])
{actual}
が FALSE である事をテストします。ここでの FALSE は、ゼロの数値か、v:false
です。それ以外の型や値の場合は失敗します。
assert_exception({error} [, {msg}])
v:exception
に文字列 {error}
が含まれている事をテストします。
assert_fails({cmd} [, {error}])
{cmd}
を実行した結果、エラーが発生する事をテストします。{error}
が渡された場合、v:errmsg
に格納されている発生したエラーメッセージに文字列 {error}
が含まれている事をテストします。
その他のテスト用関数
assert 系以外で追加されたテストを補助する関数です。ただし、ほとんどの関数は Vim 本体のテストのためのものです。簡単に紹介します。
テスト用関数 | 説明 |
---|---|
test_alloc_fail({id}, {countdown}, {repeat}) |
メモリの確保を強制的に失敗させます。 |
test_autochdir({expr}) |
起動中に 'autochdir' を有効にします。 |
test_disable_char_avail() |
typeahead なしの状態でテストします。 |
test_garbagecollect_now() |
直ちにメモリを解放します。 |
test_null_channel() |
null のチャンネルを返します。 |
test_null_dict() |
null の辞書を返します。 |
test_null_job() |
null の Job を返します。 |
test_null_list() |
null のリストを返します。 |
test_null_partial() |
null の部分適用関数を返します。 |
test_null_string() |
null の文字列を返します。 |
test_settime({expr}) |
Vim が使う内部時間を変更します。 |