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Spring Bootベースのアプリケーションに脆弱性やリソースリークをつくり込めるか

Last updated at Posted at 2017-08-28

最新のフレームワークであるSpring Bootをベースにしたアプリケーションにも、脆弱性やリソースリークをつくり込むことはできるでしょうか?また、どのような実装をすると問題となるのでしょうか?

実際に検証してみました。

検証方法

レガシーな技術でつくった、バグだらけのWebアプリケーション「EasyBuggy」のクローンをSpring Bootベースでつくれるか、全てのバグを同様に実装できるどうかで検証しました。

結果(実装の可否)

結果から言うと、Spring Bootベースで開発しても、全てのバグをつくり込むことができました。

migration.png

※このアプリは「EasyBuggy Boot」という名前でGitHubに公開しました。詳細については、こちらのページを参照して下さい。

ほとんどのバグはつくり込むことが難しくはありませんでしたが、一般的な構成では実現できないものや実装しづらいもの、少しつくりを変えて実装しなければならないものもありました。

それぞれの結果は以下の通りです。特記事項に何も書いていないバグは、Javaのロジック上の問題のため、Spring Bootベースで開発するかどうかに関わらず、つくり込むことができます。「可否」が「△」となっているものは、非推奨の技術や古いバージョンや使用することで実現したものなので、通常のSpring Bootの構成ではつくり込む可能性が低いと考えられます。

バグ 可否 特記事項
デッドロック (Java)
デッドロック (SQL) 明示的にトランザクション管理することで実現。
完了しないプロセスの待機
無限ループ
メモリリーク (Javaヒープ領域)
メモリリーク (パーマネント領域/MetaSpace)
メモリリーク (Cヒープ領域)
ネットワークソケットリーク
データベースコネクションリーク Spring JDBCにはプールからコネクションを取得するメソッドがあるので、それを利用。
ファイルディスクリプタリーク
スレッドリーク
文字化け デフォルトで、文字コードに関する煩わしい問題が発生しないような仕組みになっている。そのため、文字化けは発生しにくいが、文字コードを変更する方法は提供されている。
整数オーバーフロー
丸め誤差
打ち切り誤差
情報落ち
XSS (クロスサイトスクリプティング) Thymeleafを使っていれば、XSSは簡単に実現可能。
SQLインジェクション Spring JDBCを使っていても、SQLの文字列にユーザーの入力値を連結すれば実現できる。
LDAPインジェクション Spring LDAPのメソッドが、LDAPインジェクションの対象となる文字をエスケープしていなかったので、それを利用。
コードインジェクション
OSコマンドインジェクション
メールヘッダーインジェクション 古いバージョンのJavaMailでSpring Mailをオーバーライドして実現。
Nullバイトインジェクション バージョン1.7.0_40より前のJavaを使用することで実現可能。
サイズ制限の無いファイルアップロード application.propertiesで明示的にサイズ制限を無効(またはそれと同等に大きな値)にできる。
拡張子制限の無いファイルアップロード
オープンリダイレクト可能なログイン画面
ブルートフォース攻撃可能なログイン画面
セッション固定攻撃可能なログイン画面 Spring Scurityのセッション固定攻撃の抑止機能を正しく実装しなければ、実現可能。
親切過ぎる認証エラーメッセージ
危険なファイルインクルード ThymeleafではなくをJSPを使用することで実現。
パストラバーサル ThymeleafではなくをJSPを使用することで実現。
意図しないファイル公開 ディレクリリスティングを有効にすれば可能。
CSRF (クロスサイトリクエストフォージェリ) Spring ScurityのCSRF攻撃の抑止機能を正しく実装しなければ、実現可能。
クリックジャッキング Spring Scurityのクリックジャッキングの抑止機能を正しく実装しなければ、実現可能。
XEE (XMLエンティティ拡張)
XXE (XML外部エンティティ)
正規表現解析による遅延
プラス演算子による文字列結合の遅延
不必要なオブジェクト生成による遅延

EasyBuggyでは、NullPointerExceptionなどの例外やOutOfMemoryErrorなどのエラーもワンクリックで発生するように実装していますが、それらについても、Javaのロジック上の問題のため、Spring Bootを使うかどうかに関わらず、つくり込むことができます。

解説

少し詳細に説明します。どのような実装になっているかは、実際にソースコードを参照いただいた方がいいかと思います。

デッドロック (SQL)

PlatformTransactionManagerかアノテーション@Transactionalで、明示的にトランザクションを管理するように実装し、複数スレッドが逆順でレコードを更新すれば、デッドロックを実現できます。

データベースコネクションリーク

Spring JDBCを使う場合、基本的に直接コネクションプールからコネクションを取得する必要は無いと思います。ただし、それができなくなったわけではく、コネクションを取得するメソッドも存在するので、そのメソッドを利用してコネクションリークをつくり込むことは可能です。

文字化け

意外と実装しづらかったのが文字化けの問題です。サーブレットフィルターで文字コードを適当なものに変更すれば、文字化けすると思っていたのですが、実際にやってみると文字化けしませんでした。OrderedCharacterEncodingFilterを継承し、super.setEncoding("[適当な文字コード]");することで文字コードをUTF-8以外に変更でき、文字化けを発生させるようにしました。

XSS (クロスサイトスクリプティング)

Thymeleaf のth:utextを使用すれば、サニタイズ処理は行われないので、XSSは簡単に実装できます。

SQLインジェクション

SQLの文字列は連結してつくれるので、Spring JDBCを使っても、SQLインジェクションの回避は不可能です。

LDAPインジェクション

Spring LDAPを使いましたが、LDAPフィルターの文字列をエスケープしていないメソッドがありました。エスケープ処理の実装漏れのバグかと思ったのですが、LdapQuery.filter(String)のJavadocを読むと、エスケープしない旨が記載されていました。

/**
 * Specify a hardcoded filter. Please note that using this method, the filter string will not be
 * validated or escaped in any way. <b>Never</b> use direct user input and use it concatenating strings
 * to use as LDAP filters. Doing so opens up for &quot;LDAP injection&quot;, where malicious user
 * may inject specifically constructed data to form filters at their convenience. When user input is used
 * consider using {@link #where(String)} or {@link #filter(String, Object...)} instead.
 *
 * @param hardcodedFilter The hardcoded filter string to use in the search.
 * @return this instance.
 * @throws IllegalStateException if a filter has already been specified.
 */
public LdapQuery filter(String hardcodedFilter) {
    initRootContainer();
    rootContainer.append(new HardcodedFilter(hardcodedFilter));
    return this;
}

メールヘッダーインジェクション

pom.xmldependency<artifactId>javax.mail</artifactId>version>1.5.1</version>で下位のバージョンに上書きしなければ実現できなかったので、最新のSpring Bootを利用している場合は、この脆弱性を気にしなくてもいいかと思います。

Nullバイトインジェクション

バージョン1.7.0_40より前のJavaの脆弱性なので、Spring Bootの推奨する前提バージョン1.8では再現できません。ただし、Spring Bootはバージョン1.7のJavaでも動かすことができるので、その場合は再現が可能です。

サイズ制限の無いファイルアップロード

application.propertiesに明示的にspring.http.multipart.max-file-size=-1を定義することで再現できます。

セッション固定攻撃

このアプリではSpring Scurityは実装しておらず、対策もしていません。以下のようにSpring Scurityのセッション管理機能を使用すると、セッション固定攻撃対策が有効になります。

@Configuration
@EnableWebSecurity
public class WebSecurityConfig
    extends WebSecurityConfigurerAdapter {

    @Override
    protected void configure(HttpSecurity http) throws Exception {

        http.sessionManagement().sessionFixation().migrateSession();
    }
}

なお、この例では、.sessionFixation().migrateSession()を呼び出しているので、ログイン前に使用していたセッションを破棄し、新たにセッションを生成します。

危険なファイルインクルード

Spring Bootでは非推奨となっているJSP/JSTLを使うことで実現しました。ThymeleafにはJSTLのc:importの代替が無いので、リモートファイルインクルードが実現できませんが、th:includeをすることでローカルファイルインクルードは実現できます。

パストラバーサル

Spring Bootでは非推奨となっているJSP/JSTLを使うことで実現しました。Thymeleafを使用する場合は、「../」でディレクトリをさかのぼれないため、パストラバーサルが実現できませんでした。

意図しないファイル公開

次のような実装で実現しましたが、これを行うと、ThymeleafやJSPを使用した動的なページ生成ができなくなります。同じバージョンの非Spring Boot組み込みのTomcatのディレクリリスティングとは動作が異なっているので、Spring Bootのバグかもしれません(この実装が正しければ)。

@Bean
public ServletRegistrationBean servletRegistrationBean() {
    /* Enable directory listing under /uid/ */
    final DefaultServlet servlet = new DefaultServlet();
    final ServletRegistrationBean bean = new ServletRegistrationBean(servlet, "/uid/*");
    bean.setEnabled(true);
    bean.addInitParameter("listings", "true");
    bean.setLoadOnStartup(1);
    return bean;
}

CSRF (クロスサイトリクエストフォージェリ)

CSRF攻撃の抑止機能はSpring Security 4.0からデフォルトで有効となっています。Spring Security を導入していたとしても、以下のように明示的に無効にしていれば、問題になります。

@Configuration
@EnableWebSecurity
public class WebSecurityConfig
    extends WebSecurityConfigurerAdapter {

    @Override
    protected void configure(HttpSecurity http) throws Exception {

        http.csrf().disable();
    }
}

クリックジャッキング

Spring Scurityにクリックジャッキングの抑止機能がありますが、正しく実装しなければ脆弱性をつくり込むことになります。正しい実装例は以下のようになります。

@EnableWebSecurity
public class WebSecurityConfig extends
    WebSecurityConfigurerAdapter {

    @Override
    protected void configure(HttpSecurity http) throws Exception {
        http.headers().frameOptions().sameOrigin();
    }
}

まとめ

以上の通り、最新のJavaやフレームワークを使うことで、つくり込みを防止できる問題はあります。しかし、それはごく一部であり、プログラマーはこれらの問題について理解し、正しい実装をする必要があるといえます。

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