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JavaScriptでPHPの静的変数(static変数)みたいな事をやる方法

Last updated at Posted at 2014-06-06

導入

PHPには、静的変数(static変数)という、便利な構文が存在します。

PHPで静的変数(static変数)を使ったコードの例
<?php
function test(){
    // 変数"$a"を初期化
    static $a = 0;

    // 変数"$a"をカウントアップ
    $a++;

    // 変数"$a"の値を返す
    return $a;
}

// ループでtest関数を10回実行する
for($i = 0; $i < 10; $i++){
    echo 'out: ' . test();
    echo '<br>';
}
出力結果
out: 1
out: 2
out: 3
out: 4
out: 5
out: 6
out: 7
out: 8
out: 9
out: 10

このように、二回目以降の関数呼び出しで、直前に実行した変数の値を再利用することができます。この構文を応用すれば、生成に時間がかかる値をキャッシュしたりすることができます。

さて、JavaScriptには、この便利な静的変数(static変数)が存在しません。しかし、似たような事を行う方法が存在します。
関数のプロパティとして宣言する方法と、クロージャを駆使する方法の2つです1

関数のプロパティ

関数のプロパティとして静的変数(static変数)を宣言する方法は、このようなやり方になります。
後述しますが、重大なデメリットが存在するため、このやり方よりもクロージャを駆使したやり方を強くオススメします。

関数のプロパティとして静的変数(static変数)を宣言する例
function test() {
    // プロパティ"a"を初期化
    if (!('a' in test)) {
        // もし、プロパティ"a"が未定義であれば、
        // 初期値の0を代入する
        test.a = 0;
    }

    // プロパティ"a"をカウントアップ
    test.a++;

    // プロパティ"a"の値を返す
    return test.a;
}

// ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}
出力結果
out: 1
out: 2
out: 3
out: 4
out: 5
out: 6
out: 7
out: 8
out: 9
out: 10

原理

JavaScriptの関数は、オブジェクト(連想配列、辞書、ハッシュみたいなモノ)の側面も持っています。よって、関数testのプロパティaを動的に追加し、そこに値を格納することで静的変数(static変数)を再現できます。

例では、test.a(関数testのプロパティa)が、PHPにおける静的変数(static変数)$aの役割を果たしています。最初にtest.aが定義されているか確認し、未定義の場合に初期値の0を代入して初期化しています。

プロパティ"a"が定義済みかを確認し、未定義であれば0を代入して初期化する部分
// プロパティ"a"が定義済みか確認
if (!('a' in test)) {
    // 定義されていなければ、初期値の0を代入して初期化
    test.a = 0;
}

以降、このtest.aを静的変数(static変数)$aと同じように扱い、同じ処理を実現させています。

メリット

デメリット

特に、最後の2つはけっこう重大な問題になります。

横着して変数に代入すると上手く動かない

test.aを短くしたくなっても、横着して以下のように変数aに代入してはいけません。上手く動作しなくなります。

変数aに格納したい時の間違ったやり方
function test() {
    // プロパティ"a"を初期化
    if (!('a' in test)) {
        // もし、プロパティ"a"が未定義であれば、
        // 初期値の0を代入する
        test.a = 0;
    }

    // プロパティ"a"を変数"a"に代入
    var a = test.a;

    // 変数"a"をカウントアップ
    a++;

    // 変数"a"の値を返す
    return a;
}

// ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}
出力結果
out: 1
out: 1
out: 1
out: 1
out: 1
out: 1
out: 1
out: 1
out: 1
out: 1

test.aを変数aに代入した時点で、この2つは別の変数として扱われてしまいます。変数aに1を加算しても、それがtest.aに反映されず、結果、test.aの値は初期値の0のまま変わらず、いつまでも1が出力されてしまうのです2

もし、test.aを変数aに代入して利用したい場合、変更を加えた変数aを最後にtest.aに代入すれば解決します。

変数aに格納したい時の正しいやり方
function test() {
    // プロパティ"a"を初期化
    if (!('a' in test)) {
        // もし、プロパティ"a"が未定義であれば、
        // 初期値の0を代入する
        test.a = 0;
    }

    // プロパティ"a"を変数"a"に代入
    var a = test.a;

    // 変数"a"をカウントアップ
    a++;

    // returnの直前で変数"a"をプロパティ"a"に代入
    test.a = a;

    // 変数"a"の値を返す
    return a;
}

// ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}
出力結果
out: 1
out: 2
out: 3
out: 4
out: 5
out: 6
out: 7
out: 8
out: 9
out: 10

外部から書き換えられる危険がある

プロパティという特性上、その値は、関数の外からでも容易に読み書きできてしまいます。

外側からプロパティを書き換えられ、影響が出てしまう例
function test() {
    // プロパティ"a"を初期化
    if (!('a' in test)) {
        // もし、プロパティ"a"が未定義であれば、
        // 初期値の0を代入する
        test.a = 0;
    }

    // プロパティ"a"をカウントアップ
    test.a++;

    // プロパティ"a"の値を返す
    return test.a;
}

// ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}

// プロパティ"a"の値を読み出す
console.log('aの値は、');
console.log(test.a);

// プロパティ"a"の値を書き換えてみる
console.log('aを-10に上書き');
test.a = -10;

// 再び、ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}
出力結果
out: 1
out: 2
out: 3
out: 4
out: 5
out: 6
out: 7
out: 8
out: 9
out: 10
aの値は、
10
aを-10に上書き
out: -9
out: -8
out: -7
out: -6
out: -5
out: -4
out: -3
out: -2
out: -1
out: 0

この例では、単に迷惑なだけですが、使い方によってはエラーを吐いて動きが止められてしまう危険性もあります。

組み込みのプロパティやメソッドと被るとヤバイ

JavaScriptの関数はオブジェクトです。そして、JavaScript関数には、最初から存在するプロパティメソッドが存在しています。
この「最初から存在するプロパティやメソッド」は、JavaScriptを使いこなす上で有用な機能を提供してくれます。特にapplyメソッドやbindメソッドは、けっこう高頻度で使用します。

しかし、このプロパティやメソッドと被る名前のプロパティを静的変数(static変数)として使うコードを書いてしまうと、いろいろ問題が起きてしまいます。
例えば、test.applyを使った関数を書いてしまうと…

静的変数(static変数)の名前をapplyにしてしまった例
function test() {
    // プロパティ"apply"を初期化
    if (!('apply' in test)) {
        // もし、プロパティ"apply"が未定義であれば、
        // 初期値の0を代入する
        test.apply = 0;
    }

    // プロパティ"apply"をカウントアップ
    test.apply++;

    // プロパティ"apply"の値を返す
    return test.apply;
}

// ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}
出力結果
out: NaN
out: NaN
out: NaN
out: NaN
out: NaN
out: NaN
out: NaN
out: NaN
out: NaN
out: NaN

このように、おかしな事が起きてしまいます。
またそれだけでなく、この例の関数testapplyメソッドは、もはや使い物にならなくなってしまうのです。

クロージャ

クロージャを駆使する方法は、このようなやり方になります。

// 処理内容の関数を生成
var test = function() {
    // 変数"a"を初期化
    var a = 0;

    // 処理内容の(外側でtest関数になる)無名関数を返す
    return function() {
        // 変数"a"をカウントアップ
        a++;

        // 変数"a"の値を返す
        return a;
    };
}();

// ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}
出力結果
out: 1
out: 2
out: 3
out: 4
out: 5
out: 6
out: 7
out: 8
out: 9
out: 10

原理

なぜクロージャ(Closure)と言うのか? - Qiita

クロージャについては、この記事が分かりやすいので、コッチを読んでください。この記事を読んだという前提で解説します。

このコードのtest関数を定義する箇所では、無名関数と即時関数を駆使しています。なのでまず、関数に名前をつけて分解してみます。

test関数の定義部分を分かりやすく分解
// クロージャを定義するための関数"f_def_static"(仮の名前)を定義
var f_def_static = function() {
    // 静的変数(static変数)"a"を初期化
    var a = 0;

    // 処理内容の関数"f_main_process"(仮の名前)を定義
    var f_main_process = function() {
        // 変数"a"をカウントアップ
        a++;

        // 変数"a"の値を返す
        return a;
    };

    // 処理内容の関数"f_main_process"そのものを返す
    return f_main_process;
};

// 関数"f_def_static"を実行し、関数"f_main_process"に"test"という名前をつけてtest関数にする
var test = f_def_static();

まず、f_main_process関数が、本来のtest関数に相当する処理を実行する関数です。
変数aの宣言を含んでいない点以外は、PHPのtest関数と変わりません。

次に、f_def_static関数は、以下の処理を行います。

  • 静的変数(static変数)aの初期化
  • f_main_process関数の定義
  • f_main_process関数を返り値として返す

初期化された変数aは、f_main_process関数の内部から再利用できます。
そして、f_main_process関数を返り値としてf_def_static関数の外に出し、test変数に格納して、test関数として実行した時ですら、変数aは再使用できてしまいます。
この仕組みを応用し、静的変数(static変数)を再現します。

関数名の省略

ただし、いちいち関数に名前をつけても面倒です。なので、f_def_static関数の名前を取り、即時関数にしてしまいます。

  1. f_def_static関数を括弧で囲む

    // クロージャを定義するための関数"f_def_static"(仮の名前)を定義
    // 値なので、丸括弧で囲っても問題なし
    var f_def_static = (function() {
        // 変数"a"を初期化
        var a = 0;
    
        // 処理内容の関数"f_main_process"(仮の名前)を定義
        var f_main_process = function() {
            // 変数"a"をカウントアップ
            a++;
    
            // 変数"a"の値を返す
            return a;
        };
    
        // 処理内容の関数"f_main_process"そのものを返す
        return f_main_process;
    });
    
    // 関数"f_def_static"を実行し、関数"f_main_process"に"test"という名前をつけてtest関数にする
    var test = f_def_static();
    
  2. f_def_static関数の定義内容を、実行している場所に持ってくる

    // クロージャを定義するための関数を定義&実行
    // 関数"f_main_process"に"test"という名前をつけてtest関数にする
    var test = (function() {
        // 変数"a"を初期化
        var a = 0;
    
        // 処理内容の関数"f_main_process"(仮の名前)を定義
        var f_main_process = function() {
            // 変数"a"をカウントアップ
            a++;
    
            // 変数"a"の値を返す
            return a;
        };
    
        // 処理内容の関数"f_main_process"そのものを返す
        return f_main_process;
    })();
    
  3. f_def_static関数を囲っていた括弧は要らなくなったので、取る

    // クロージャを定義するための関数を定義&実行
    // 関数"f_main_process"に"test"という名前をつけてtest関数にする
    var test = function() {
        // 変数"a"を初期化
        var a = 0;
    
        // 処理内容の関数"f_main_process"(仮の名前)を定義
        var f_main_process = function() {
            // 変数"a"をカウントアップ
            a++;
    
            // 変数"a"の値を返す
            return a;
        };
    
        // 処理内容の関数"f_main_process"そのものを返す
        return f_main_process;
    }();
    

また、f_main_process関数も、定義内容をreturn文の前に持ってくることができます。

  1. f_main_process関数の定義内容を、return文で返している場所に持っていく。

    // クロージャを定義するための関数を定義&実行
    var test = function() {
        // 変数"a"を初期化
        var a = 0;
    
        // 処理内容の関数を定義&返す
        return function() {
            // 変数"a"をカウントアップ
            a++;
    
            // 変数"a"の値を返す
            return a;
        };
    }();
    

このように、関数名を省略し、コンパクトにすることで、こんな感じになるわけです。

コンパクトになったtest関数の宣言
// 処理内容の関数を生成
var test = function() {
    /*
     * 静的変数(static変数)の定義
     */

    // 変数"a"を初期化
    var a = 0;

    // 処理内容の(外側でtest関数になる)無名関数を返す
    return function() {
        /*
         * 静的変数(static変数)を使用した処理内容
         */

        // 変数"a"をカウントアップ
        a++;

        // 変数"a"の値を返す
        return a;
    };
}();

メリット

  • PHPの静的変数(static変数)と同じように、単なる変数として利用できる
  • 外部から書き換えられない
  • 単なる変数なので、プロパティやメソッドと被る心配はしなくても良い

デメリット

全体的に構文がややこしい

クロージャを駆使しているため、はじめて読むと「???」となってしまう可能性があります。
即時関数や無名関数を駆使してコンパクトにしてしまうと、さらによく分からない構文になってしまいます。

また、関数の処理内容を内側に書かなくてはならないため、書き換えも若干面倒くさくなります。

静的変数(static変数)のためだけに、余計な関数が要る

静的変数(static変数)を使うという、ただそれだけのために、余計な関数(名前をつけて分解したコードf_def_static関数に相当する関数)を1つ定義しなくてはなりません。
加えて、その余計な関数は、一回実行してしまえば二度と使いません。
このため、関数を生成する負荷により、パフォーマンスが劣化する恐れがあります

もっとも、昨今の端末やブラウザは高性能になっているため、普通のWebページやWebアプリでそれほど気にする必要はありません。
ただし、例えばゲーム(特に、高負荷な処理を短い間にこなさなくてはならないVRゲームなど)を作ろうとした時などは、この僅かな劣化がFPSに影響してしまうかもしれません。

うっかりvar宣言を忘れてしまうと、ヤバイ

静的変数(static変数)の定義部分で使用しているvar宣言をうっかり忘れてしまうと、グローバル変数になってしまいます。
グローバル変数はどこからでも書き換えられるため、外部から書き換えられる危険が生じてしまいます。

うっかりvar宣言を忘れたために、グローバル変数aの書き換えで影響が出てしまう例
// 処理内容の関数を生成
var test = function() {
    // 変数"a"を初期化
    // …あ、var宣言忘れてる
    a = 0;

    // 処理内容の(外側でtest関数になる)無名関数を返す
    return function() {
        // 変数"a"をカウントアップ
        a++;

        // 変数"a"の値を返す
        return a;
    };
}();

// ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}

// グローバル変数"a"の値を読み出す
console.log('aの値は、');
console.log(a);

// グローバル変数"a"の値を書き換えてみる
console.log('aを-10に上書き');
a = -10;

// もう一度、ループでtest関数を10回実行する
for (var i = 0; i < 10; i++) {
    console.log(
        'out: ' + test()
    );
}
出力結果
out: 1
out: 2
out: 3
out: 4
out: 5
out: 6
out: 7
out: 8
out: 9
out: 10
aの値は、
10
aを-10に上書き
out: -9
out: -8
out: -7
out: -6
out: -5
out: -4
out: -3
out: -2
out: -1
out: 0

  1. これ以外の方法もあるかもしれませんが、著者は、この2つの方法しか知りません。 

  2. 初期値は0ですが、出力前に必ずカウントアップされるため、返り値は1になります。 

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