#はじめに
前回,フェルマーの最終定理が成り立たないときの自然数 $a,b$ が互いに素であることを示し,フライ曲線が楕円曲線になることを示した。。。と思っていた。実は,動画を投稿した後「楕円曲線の定義とマッチしていない」というコメントをいただいた(動画はこちら)。そこで,今回はフライ曲線が楕円曲線になることを,定義にマッチする形で説明する。
(9月8日)注意: 楕円曲線の定義を変更したので,以下の議論の必要は無くなった。しかし,戻す場合もあるので残しておく。
#定義やら定理やら
##フェルマーの最終定理
自然数 $n≥3$ に対して
a^n+b^n=c^n
を満たす自然数 $a,b,c$ は存在しない
##フライ曲線
>フェルマーの最終定理が成り立たないと仮定すると,(1)を満たす $a,b,c$ が存在する。このとき曲線
>```math
y^2=x(x-a^n)(x+b^n)
をフライ曲線と呼ぶ。
##楕円曲線
曲線が楕円曲線であるとは,$y^2=x^3+Ax+B$ と表され,(右辺)=0が重根を持たない。
#前回の記事での不十分な点
[1]フライ曲線は $x^2$ の項がある
[2] $x^2$ の項をなくした場合に重根をもたないことを示していない
#フライ曲線が楕円曲線である説明
##[1] x^2 の項を消す。
フライ曲線の右辺を展開し,3乗でまとめると
y^2=x^3+(b^n-a^n)x^2-a^n b^nx\quad\quad\quad\quad\quad\quad\quad\quad\ \\
\quad\quad\quad\quad\quad=\left(x+\frac{b^n-a^n}{3}\right)^3-3\left(\frac{b^n-a^n}{3}\right)^2x-\left(\frac{b^n-a^n}{3}\right)^3-a^nb^nx
となる。ここで $X=x+\frac{b^n-a^n}{3}$ と置くと, ($x=X-\frac{b^n-a^n}{3}$より)$y^2=X^3+AX+B$ の形に表せる。
##[2]重根をもたない
$x(x-a^n)(x+b^n)=0$ の解 $$0,a^n,-b^n$$ は$a,b$ が自然数であることから重根とならない。このとき,$X=x+\frac{b^n-a^n}{3}$ より$$\frac{b^n-a^n}{3},a^n+\frac{b^n-a^n}{3},-b^n+\frac{b^n-a^n}{3}$$ は $X^3+AX+B=0$ の解であり重根とならない。
[1],[2] よりフライ曲線は楕円曲線となる。
#関連記事
前回の記事:フェルマーの最終定理と互いに素