これは Mathematics Advent Calendar 2013 18日目の記事です.
定理の証明とかやりません. 可換環論やってて個人的に良いと思った例と反例を紹介します.
思ったより集められなかったので反省. 出展は復刊 可換環論とかMathematics Stack ExchangeとかMathOverflowとかです.
(愚痴: こういう反例とかをただ集めただけのサイトなり本なりが欲しい)
環・ネーター環・アルティン環
- Fact: アルティン環 $\iff$ ネーター環かつ次元0
- $\mathbb{Z}$はネーター環だがアルティン環でない($\because (2) \supset (2^2) \supset \cdots$)
- $\mathbb{Z}(p)$はネーター環でもアルティン環でもない($\because (1/p) \subset (1/p^2) \subset \cdots$)
- $\mathbb{Z}[X_1, X_2, \cdots]$はネーター環でもアルティン環でもない
素元・既約元
- Fact: 整域上素元ならば既約元である. (UFD上なら逆も成り立つ.)
- $2 \in \mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ は既約元だが素元でない($\because 2 \cdot 3=(1-\sqrt{-5})(1+\sqrt{-5})$)
- $2 \in \mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ は素元だが既約元でない($\because 2 = 2 \cdot 4$, $2$は単元でない)
イデアル
- Fact: 2つの極大イデアルの共通部分は素イデアルでない($\because p \in P \backslash Q, q \in Q\backslash P$に対して$pq \in P \cap Q$だが$p,q \not\in P \cap Q$)
- $(X) = \cap_n (X, Y+n) \subset k[X,Y]$ ($n \in k$) はj-素イデアル
- $p\mathbb{Z}[X] + f(X)\mathbb{Z}[X] \subset \mathbb{Z}[X]$ (ただし$p$は素数, $f(X)$は既約) は極大イデアル
- $(2, 1-\sqrt{-5}) \subset \mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ は極大イデアル
局所化
- $R=\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$は整域でないが素イデアルによる局所化で整域になる. ($\because$ 素イデアル $p=2\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$による局所化を行なうと$R_p$は(極大イデアルが0になって)体になる. $R$が整域でないことは明らか.)
自由加群・射影加群・平坦加群
- Fact: 自由加群 $\Rightarrow$ 射影加群 $\Rightarrow$ 平坦加群
(cf. free⇒projective⇒flat⇒torsion-free ) - Fact: 自由加群 $\Rightarrow$ 忠実平坦加群 $\Rightarrow$ 平坦加群
- $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$は$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$加群として自由でない射影的な平坦加群 ($\because \mathbb{Z}/6\mathbb{Z} \simeq \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$)
- $(5, 2+\sqrt{-21}) \subset \mathbb{Z}[\sqrt{-21}]$は自由でない射影加群
- $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$は$\mathbb{Z}$加群として 平坦でない 加群 ($\because$ $0 \rightarrow m \mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z}/m\mathbb{Z} \rightarrow 0$に対して$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$とのテンソル積をとる.)
- $\mathbb{Q}$は$\mathbb{Z}$加群として射影的でない平坦加群
- $A=k[X^2,X^3], B=k[X]$に対して$B$は$A$上平坦でない($\because (X^2 A\cap X^3 A)B=X^5 B \neq X^3 B = X^2 B \cap X^3 B$)
なにかあれば @t_iru まで.