まえおき
僕は Qiita をとても気に入って使っています。
Markdown で書きやすい、シンプルで使いやすい/見やすいなどもありますが、一番はプログラミングというカテゴリ専用のサービスであることです。投稿を眺めていてプログラミングと無関係の情報に煩わされることもないですし、 Swift
タグでテイラー・スウィフトと混ざってしまうようなこともありません1。書き手としても、プログラミングに興味を持っている人が集う場で発信できるのは魅力です。
Qiitaニュース(毎週のストック数ランキングが配信されるメールマガジン)なんかも最高ですね!いつも上位にはレベルの高い投稿がそろっていて楽しみにしています。まだ登録していない人はすぐに登録することをオススメします。
(本当は、リアルタイムランキングのページを用意してくれるともっとうれしいですが。単純なストック数だけでなく、 Google のバックリンクみたいにフォローによるユーザーグラフからユーザーのスコアを計算して2、ストック数はそれほど多くないけどスコアの高いユーザーが評価してる投稿が上位に上がってくるような仕組みがあればなお良いですね。作らせてもらえるならボランティアでも作ってみたいくらいです。)
Qiita を使っていて思うのは、「英語圏にも Qiita みたいなサービスがあればいいのに!」ということです。何度か探してみたんですが、これだというものが見つかりません。ちょっと古いですがこちらの質問にも満足な回答がないようですし、そもそも、もし日本における Qiita くらい流行ってるものがあれば、ググって何度もそのサービスにたどりついているはずです( Stack Overflow のように)。
もし英語圏に Qiita のようなサービスがあれば、わざわざ探して回らなくてもプログラミング関連の最先端の話題を簡単に見つけることができて便利そうです。僕はそれほど頻繁に英語圏の情報をあさっているわけではないですが、やはりプログラミングについては英語圏が最先端なので、もっと簡単にアクセスする方法があればうれしいところです(そういう理由もあってプログラミング関連情報を自動で集めるアプリを作っているんですが)。日本人が英語で情報を発信する場合を考えても、英語圏のコミュニティにつながりのない人がほとんどだと思うので、大抵は Web の片隅に埋もれてしまうだけだと思います。そんなときに Qiita のようなサービスがあればうれしいです。
こういう話をすると、「英語圏にはニーズがないから Qiita のようなサービスがないのでは?」と言われることもあるのですが、本当にそうでしょうか。よく聞くのは、 Stack Overflow があるから Qiita のようなサービスは要らないという意見と、文化の違いで Q&A 形式の方が馴染むという意見です。確かにそのような可能性も完全に否定することはできません。しかし、英語圏でブログを書いて発信している人はいますし、それらのブログが話題になることも度々あります。 日本だって Qiita が生まれる前は似たような状況だったはずです。 みんな思い思いのブログで情報を発信していました。そんな中から Qiita が一定の成功をおさめたということを考えると、単に英語圏には Qiita がまだないからブログで情報発信されているのかもしれません。プログラミングに関する情報発信について、実は Qiita がある日本は世界の最先端を走っているのかもしれません!
英語圏から Qiita のようなサービスが生まれるのを待つのもいいですが、せっかく Qiita があるんだから英語圏でも Qiita が流行ってくれればうれしいところです。
そこで、 どうすれば Qiita が英語圏で流行るかを考えてみました。 なお、僕は英語圏で働いたこともないですし、大して知り合いがいるわけでもないです。調査とデータに裏付けされたものではなく、思いつきと妄想によるポエムですのであしからず。
英語圏でQiitaを流行らせる方法
僕が考えた、英語圏で Qiita を流行らせる方法は次の通りです。
- 英語版と日本語版を分ける
- 人気の投稿を英訳しまくる
順に説明します。
1. 英語版と日本語版を分ける
一応、 Qiita は英語に対応しています。英語の設定でアクセスすると次のようなページが表示されます。
一見問題がないように思えるかもしれませんが、よく見ると下の方に日本語が表示されています。これはダメです。 英語版のページからは日本語を一掃しなければなりません。
これくらいなら気にならないと思うかもしれません。でも、僕らが Web を見ているとき、韓国語とか中国語とかロシア語とか出てきたらそっこーでページを閉じちゃいますよね。英語圏の人から見れば日本語なんて未知のあやしい言語です。日本語の気配は微塵も感じさせてはいけません。あくまで、 英語圏の人が英語圏の人のためにつくったサービスのように振る舞わなければなりません。
はてブボタンについてもなくした方がいいと思います。 Twitter や Facebook と並んで見慣れないボタンが設置してあると、試しにクリックしてみて未知の言語が表示された瞬間に危険を感じて閉じられてしまう可能性があります。
まあ、それでもトップページはまだマシです。肝心の投稿のページを見てみましょう。
投稿のタイトルと本文が英語にならないのは仕方ありません。しかし、ここでも日本語の広告が表示されてしまっています。また、投稿が英語でも、そのユーザーが日本語で『人気の投稿』3をしたことがあれば、ページの中に日本語が混入してしまいます。このままだと、英語圏に展開するときに、せっかく日本のユーザーが英語で投稿してくれても台無しです。投稿が何の言語でされたかを管理し、ランキングを出し分ける必要があるでしょう。
そもそも、投稿を検索したり、タグで検索したりしたときに日英両言語で混ざって出てしまうのは微妙すぎます。ユーザーのプロフィールも言語によって二種類用意できるようにした方がいいでしょう。
そのような二重化を行うくらいなら、 英語版と日本語版を分離して入口から分けてしまった方がいい でしょう。
(完全に無関係の二つのサービスにするという意味ではなく、英語版と日本語版の投稿やユーザープロフィールが混ぜこぜで表示されないようにするという意味です。仕様について考えてみた内容は後述します。)
2. 人気の投稿を英訳しまくる
いくら日本語を排した英語版を作っても、英語圏のユーザーに使ってもらえなければ意味がありません。新規サービスを流行らせる上で、そこが一番高いハードルでしょう。
CGM はユーザーが集まることで価値が生まれるため、立ち上げ当初は ユーザーが少ないから価値を生むことができず、価値がないからユーザーが集まらない という難しさがあります。僕は、英語圏で Qiita が生まれない理由はそれではないかと思っています(生まれているけど、ユーザーが集められないがために価値を生み出せておらず、認知もされていない)。しかし、 Qiita には日本語の投稿という既存の資産があります。 質の高い投稿を英訳しまくることで先に『価値』を作り出し、にわとりたまご状態を打ち破ることができる のです。
もちろん翻訳には著者の許可は必要ですが、無償で自分の記事を英訳して世界に発信してくれるのであれば、反対する人は少ないと思います。不正確な翻訳を恐れる人でも、公開前に内容をチェックできる仕組みにしておけば良いでしょう。僕ならよろこんでお願いします。
どんなに良質なブログであっても、 Qiita から選りすぐったのと同等のハイレベル・ハイペースで投稿を続けることは難しいと思います。つまり、 Qiita の翻訳は最低でも海外の人気ブログ以上の価値を提供できるわけです。そのようなサイトであれば、リピーターも確保しやすいでしょう。やりようによっては、質の高い投稿が集まっているサービスとして、日本における Qiita よりもうまいブランディングができるかもしれません。
英語での良質な投稿が繰り返され徐々に認知され始めたら、自分も Qiita に投稿してみようというユーザーが出てくるはずです。そうすると、自分の投稿をツイートするなど、英語圏のユーザーネットワークの中で指数関数的に認知が広まっていくでしょう。注目されることが増えれば Google にも引っかかりやすくなり、ますます認知度は高まります。
拡散のスピードを上げるために、翻訳を始めるまでに Qiita トップページにランキングがほしいところです。初めにユーザー登録しないと何も見れないという今のトップページの状況は良くないと思います。大抵の人は、ユーザー登録する前にそれがどんなサービスか確かめたいはずです。実際に投稿を読んで質の高い情報が集まるサービスという認識をしてもらえれば登録してもらえるかもしれませんが、今のトップページだけ見せられても登録しようという人は少ないと思います。今のままだと、せっかく Qiita を気に入った人が( Twitter 等で) Qiita を紹介してくれても、潜在ユーザーを取り逃してしまう可能性があります。ランキングページがあれば、他の人にオススメもしやすいはずです。4
また、初めは英語での投稿数が少ないので、タグやユーザーの『人気の投稿』から別の投稿にたどりつきづらいはずです。ランキング等で(トップページか、個々の投稿のページから)他の投稿への導線を作ることで、単一の優良な投稿として認知されるのではなく、日々質の高い投稿がされているサービスであるという認識をしてもらいやすくなるでしょう。
そのようにして英語圏での認知が拡大すれば、多くの人が Qiita で情報発信/収集をするようになり、 Qiita は GitHub や Stack Overflow と並び立つプログラミング関連サービス になることができるかもしれません。
費用について
問題は英訳するための費用をどうやって捻出するかです。一体その費用はどのくらいでしょうか?
Qiita ニュースにランクインするうち、新着が半分ほどとして、さらにその半分ほどに翻訳の価値があるとします。そうすると、週に 5 本ほど翻訳すべき投稿が生まれることになります。毎日 Qiita を訪れる習慣を身に付けてもらうために 1 日 1 本は投稿した方がいいと思うので、ランキング上位でないけど良質な投稿や過去の優良な投稿もピックアップして、毎日 1 本のペースで翻訳することにしましょう。
翻訳者の見つけ方として、ぱっと思いつく簡単そうな方法は英語圏で働く日本人エンジニアに副業としてお願いすることです。日本語ができるネイティブのエンジニアを探すのはとても大変ですが、英語圏で働いている日本人エンジニアならたくさんいます。日本人エンジニアの英語力がやや不安ですが、必ずネイティブのチェックを受けてもらうことを条件にするといいでしょう。身近にネイティブなエンジニアがいるだろうから、報酬の分配してもらえばチェックを受けることは難しくないと思います。ネイティブチェックのいいところは、その人にも Qiita の存在を認知させられることですね!この方法であれば数が確保しやすいので、投稿の内容に合わせて翻訳者を変えることで多用な分野に対応しやすいのもいいところです。
さて、 1 本いくらなら引き受けてもらえるでしょうか。これは完全に想像の域ですが、 30 万円くらい払えば大丈夫そうな気がします。そうすれば、 1 日 1 本として年間約 1 億円のコストです。「日本のエンジニアのことを世界にしってもらいたい!」という熱意を持った人であれば、より低価格で引き受けてもらえるかもしれません。もし、 10 万円で引き受けてもらえるなら 1 / 3 におさえることができます。 GitHub や Stack Overflow になるための投資としては安いもんですね!
副次的な効果
翻訳の費用は重たいかもしれないですが、この方法をとることで、 Qiita は次のような副次的な効果も得ることができます。
もし、 Qiita 上で人気の投稿になれば英訳してネイティブチェックした上で世界に発信してくれるとなれば、これまでブログで情報発信してたけど Qiita で書いてみようという人も増えると思います。また、これまでは技術的な書き物はしていなかったけど、英訳してもらえる可能性があるのなら書いてみるかという人もいるでしょう。日本のエンジニアは世界に情報を発信するのが苦手です。 Qiita がそれを肩代わりしてくれるのであれば、それは Qiita にとって大きな付加価値となるはずです。
Qiita がどのような収益構造になっているのかはわかりませんが、 CGM である以上、アクティブユーザー数がモノを言うのは間違いないでしょう。翻訳を始めることで(副次的に)日本におけるサービス展開を強化できるのであれば、翻訳のための費用も少しは相殺できるかもしれません。
その他に細々と考えたこと
雑多ですが箇条書きで。
- 拡散の、特に初期段階において、認知を広めるために色々な施策が必要そう。
- 指数関数的な増加は初期のスピードが遅い。最初にある程度の人数に知ってもらえれば、拡散に必要な時間を大幅に短縮できる→翻訳の総コストを圧縮できる。
- 広告を打つなどもいいかもしれないが、(翻訳者の知り合いを通じてなど何らかの方法で)英語圏のモニターを集めて(有償で?)サービスに対するアドバイスをもらうという方法はどうか。
- 有償で投稿をしてもらうのではなく、あくまでサービスに対するアドバイスをもらうに留める。投稿や、他のユーザーに教えるなどは、サービスを気に入ってもらった上で自発的に行なってもらう方が良い。 それだけの価値を持ったサービスを作れていなければ、いくら初期投資でユーザーを増やしても拡散しないので無意味。 モニターの目的は、サービスを認知してもらうこと。
- 翻訳ではなく、英語圏のエンジニアに有償で投稿してもらう手もある?
- その場合、後に無料にするタイミングが難しそう。
- サービスに価値があると思って自発的に書いてもらった方が長期的にはいいと思う。
- 日本語の投稿は海外では読まれていないので、その方が新しいネタが出てきて新鮮味がありそう。
- 翻訳であれば、最初から投稿の質を担保できるけど、新しく書いてもらう場合はそれができない。
- Qiita の中から選りすぐった投稿であっても、英語圏からみれば陳腐な情報だという可能性はないか。
- 英語圏の情報を輸入して紹介しているようなものは翻訳対象から外さないと、翻訳しても周回遅れということになりそう。
- 翻訳する前に英語圏での類似の情報を調べて、できるだけ新しい価値が提供できそうな投稿を選ぶべき。
- 速報的な投稿は、翻訳に時間がかかることを考えるとニュースバリューが落ちそう。
- 特に良さそうな投稿は、即日翻訳することで価値を保てる?
- 翻訳対象には短い投稿を中心に選んだ方が翻訳コストを抑えやすそう。
- 長くて優良な投稿も多いので難しいところ。長いのは本当に良いものだけにする?
- 翻訳者は、適任の人がいれば社員として雇ってひたすら翻訳してもらう方がコストは小さいかも?
- 人気の投稿に選ばれてないけど自分の投稿も翻訳して欲しいと思う人向けに、翻訳サービスを有償で提供することでマネタイズできないか。
- 翻訳専門スタッフを採用するパターンでないと高すぎて無理。
- Gengo 並の価格で提供することができたとしても 1 本数万円とかだとニーズがないかも。
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英語版と日本語版を分けて、翻訳を考えたときの仕様について。
- 翻訳された投稿は元の投稿の著者のアカウントで、英語版に投稿される。
- 翻訳された投稿には、翻訳者として翻訳者のアカウントも表示される。
- 翻訳された投稿と元の投稿は(目立ち過ぎないくらいのもので)相互リンクされる。
- 日本語版の全ユーザーは英語版にも存在するが、プロフィールは英語版では別途入力する必要があり、初期状態では未入力となる。
- Twitter や GitHub アカウントへのリンクは共通で良さそう。
- Twitter は日英で使い分けてる人もいる?デフォルトで日本語版のものをセットするけど英語版用に別アカウントを設定できる方が良い?
- 翻訳された投稿の著者のプロフィールは空でない方がいいので、投稿を翻訳する際にユーザープロフィールも英訳する。
- フォロー、フォロワーは別の方が良いか要検討。
- プロフィールで見せるものがないけど、過疎ってないようには見えるという利点も。
- 英語圏ユーザーが最初に見えるようにソートしておけば、日本人ユーザーも表示しても問題ない?
- Twitter や GitHub アカウントへのリンクは共通で良さそう。
- 投稿のストック数は、翻訳の場合は日本語版、英語版で合計して表示した方がいい?
- 特に初期段階においてストック数 0 が並ぶと過疎ってるように見えるので効果的かも。
- 見慣れないサービスなのにすごい数のストックがあると逆に不審に思われる?
- ストックしたユーザー一覧から日本人ユーザーのページに飛んだ場合、プロフィールで見せるものがない(翻訳されてないことがほとんどと思われるため)という問題がある。
- これも、英語圏ユーザーが上に出てくるようにソートして表示すれば良い?
- ユーザーごとの累積ストック数も日本語版、英語版で合計した方が良い?要検討。
まとめ
Qiita には GitHub や Stack Overflow と並ぶようなポジションを目指せる可能性があると思います。
Qiita のような CGM を一から立ち上げるのは、ユーザーがいないと価値を生み出せず、価値がないからユーザーが集まらないという難しさがあります。しかし、 Qiita にはすでに多くの優良な投稿があり、それらを英訳することでその壁を簡単に越えることができます。
実際にやってみるとそんな簡単にはいかず、プラクティカルな問題が色々起こると思います。それでもそれらを乗り越えて、 GitHub や Stack Overflow のように世界中のエンジニアから愛されるサービスになれる可能性を Qiita は秘めていると思います。
一人のユーザーとして、ファンとして、そんな日が来ることを楽しみにしています。
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最近ではほぼないですが、僕が Qiita を使い始めたときは、はてブの
Swift
タグにテイラー・スウィフトが出てきていました。もし英語圏であればもっとひどいことになるでしょう。 ↩ -
単純にフォロワー数をスコアにするんじゃなくて、ユーザーグラフ全体で最適化問題を解いて整合性のあるスコアを計算するようなアルゴリズムがいいですね。 ↩
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『人気の投稿』の文言が日本語で表示されているのは謎ですが、これはただの多言語対応漏れで、英語で表示すること自体は難しくないと思うのでここでは触れません。 ↩
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現状ではログイン状態で qiita.com にアクセスすると自分がフォローしているタグ&ユーザーの投稿についてのフィードが表示されますが、(特にタグについて)玉石混交すぎるのでログイン状態でもフィードに加えてランキングを表示してほしいところです。 ↩