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Perl製ビルドツール "Daiku" 入門編

Last updated at Posted at 2015-03-14

はじめに

以前の投稿1で紹介した Perl 製ビルドツールの Daiku ですが、2015年3月現在のところ、GitHub で "Daikufile" と検索してみてもヒット数は多くありません。
昨年5月に version 1.0 がリリース2されて1年近くが経ちますが、まだまだ認知度が低い印象です。

そこで、いくつかサンプルを書いてみながら Daiku の機能を試してみました。

なお、今回作成した Daikufile やソース一式は GitHub の progrhyme/perl5-Daiku-examples というリポジトリにアップしています。

Daiku を使う準備

インストール

cpanm3 を使っている場合、シェルから cpanm Daiku を実行してインストールして下さい。
Daiku パッケージには daiku コマンドが付属しています。
perl を perlbrew4 や plenv5 環境で実行している場合、rehash が必要になります。

cpanm Daiku
plenv rehash # perlbrew なら perlbrew rehash
which daiku
# daiku コマンドのパスが表示されます

daiku コマンドの使い方

最も簡単な使い方は単に daiku と打つだけです。
この場合、カレントディレクトリの Daikufile に従ってビルドを実行します。
-f オプションで、任意の Daikufile を指定することもできます。

また、daiku タスク名 で、Daikufile に記述された任意のタスクを実行することもできます。

% daiku                      # Daikufile のビルドを実行
% daiku deploy               # タスク名を指定して実行
% daiku -f Daikufile.another # Daikufile.another のビルドを実行

また、daiku -T で Daikufile に記されたビルドタスクを一覧できます。

% daiku -T
daiku default  # run
daiku install  # install necessary modules
daiku run      # run app
daiku test     # run test

その他、詳しい使い方は daiku --help で確認して下さい。

Daikufile とは

Daikufile は GNU make6 の Makefile に相当し、ビルドで実行するタスクを Daiku 独自の DSL (Domain Specific Language=ドメイン特化言語)で記述したものになります。

Daikufile の記法については、GitHub の README.md がドキュメントとなっています。

本稿でも、以降の例で詳しく見ていきます。

Daiku で "Hello, world!"

最もシンプルな例として、Daiku で "Hello, world!" を出力する簡単なビルドを実行してみます。

Daikufile

Daikufile は次のようになります。

desc 'hello'; # (1.1)
task default => sub { # (1.2)
    sh "echo 'Hello, world!'"; # (1.3)
};

以下、この Daikufile の中身を見ていきます。

(1.1) desc <Str> の構文で、下行に続くタスクの説明を表します。
省略することも可能ですが、書いておくと daiku -T で表示できるので、その方が親切でしょう。

(1.2) task <Str> => <CodeRef> の構文で、タスクの定義になります。
<Str> という名前のタスクで <CodeRef> のコードが実行されます。

この task 関数を使った構文は、ドキュメントに記載されている通り、他にもいくつか種類があります。

(1.3) sh 関数は Perl の system 関数と同義です。即ち、シェルコマンドを実行します。

実行結果

ビルドを実行すると、以下のように出力されます。

% daiku
[LOG] Building Task: default
Hello, world!

ここで、タスク名である default は既定値であるため、省略することができます。
上は daiku default と実行しても同じ結果になります。

C言語のコードをビルドしてみる

わざわざ Daiku でやる必要はないかと思いますが、本家サンプルにもある C言語プログラムのビルドをやってみます。

ここでは、ソースファイル hello.c からオブジェクトファイル hello.o を経由して実行ファイル hello を生成します。

Daikufile

desc 'build hello binary';
task 'default' => 'hello';

file 'hello' => 'hello.o' => sub { # (2.1)
    my $file = shift; # (2.2)
    sh sprintf('gcc -o %s %s', $file->dst, $file->deps->[0]); # (2.3)
};

rule '.o' => '.c' => sub { # (2.4)
    my ($rule, $dst, @srcs) = @_; # (2.5)
    sh sprintf('gcc -o %s -c %s', $dst, $srcs[0]); # (2.6)
};

desc 'clean up';
task 'clean' => sub {
    unlink $_ for ('hello', 'hello.o');
};

以下、この Daikufile の内容を解説します。

(2.1) file <Str1> => <Str2> => <CodeRef> という構文が登場しました。
<Str1> のファイルを生成するタスクの一種と見なすことができます。
このタスクでは <CodeRef> のコードが実行されます。<CodeRef> の実行によって、<Str1> のファイルが生成されることが期待されます。

また、このタスクは <Str2> のタスクに依存しています。即ち、<Str1> を生成するこのタスクよりも先に、依存関係によって <Str2> のビルドが実行されます。

(2.2) $file には Daiku::File オブジェクトが渡されます。

(2.3) $file->dst は生成ファイル、$file->deps は依存タスクのリストです。
実行されるコマンドは gcc -o hello hello.o となります。

さて、ここで hello タスクが依存している hello.o という名前のタスクはこの Daikufile には明記されていません。
hello.o のタスクは続く rule 構文で表される Suffix Rules によって、解決されています。

(2.4) rule <Str1> => <Str2> => <CodeRef> 構文は (2.1) と似ていますが、<Str1>, <Str2> にはファイル拡張子が入ります。
この構文は GNU make の Suffix Rules7 と同様な働きをします。
Daiku はこの文によって foo.o を生成するには foo.c が必要で、<CodeRef> のコードを実行すればよいことを知ります。

(2.5) $rule, $dst, @srcs にはそれぞれ Daiku::SuffixRule オブジェクト、出力ファイル名、ソースファイルリスト(この場合1つ)が格納されます。

(2.6) 実行されるコマンドは gcc -o hello.o -c hello.c となります。

実行結果

ビルドを実行すると、次のようになります。

% daiku
[LOG] Building Task: default
[LOG] Processing file: hello
[LOG] Building SuffixRule: hello.o
[LOG] Processing file: hello.c
[LOG]   Building file: hello(0)
% ls -l
-rw-r--r--  1 key-amb  key-amb   376  3 14 03:28 Daikufile
-rwxr-xr-x  1 key-amb  key-amb  8496  3 14 04:06 hello
-rw-r--r--  1 key-amb  key-amb    73  3 14 01:41 hello.c
-rw-r--r--  1 key-amb  key-amb   836  3 14 04:06 hello.o
% ./hello
Hello, world!

daiku clean を実行すると、実行ファイル hello とオブジェクトファイル hello.o を削除できます。

% daiku clean
[LOG] Building Task: clean
% ls -l
-rw-r--r--  1 key-amb  key-amb   376  3 14 03:28 Daikufile
-rw-r--r--  1 key-amb  key-amb    73  3 14 01:41 hello.c

まとめ

以上、簡単な例でしたが、Daiku の基本的な機能を解説しました。
他にも、Ruby rake 相当の namespace 分割機能もあるようです。

プロジェクトにおいて定形作業が煩雑になっている場合や、一連のジョブ実行を定型化したいような場合、Daiku の導入を検討する価値はあると思います。

補遺

".PHONY task" について

task 構文について、README.md には .PHONY task という記載があります。
これは、GNU make 由来8の表現で、「ビルドによってファイルを生成せず、指定された際に必ず実行されるタスク」のことです。

make に慣れている人はわかると思いますが、慣れてないと「何のこっちゃ」と思う人もいるかな、ということで触れておきました。

脚注

  1. Perlプロジェクトのドキュメントをmakeで一括生成

  2. Daiku and Daikufile are now production ready | おそらくはそれさえも平凡な日々

  3. https://metacpan.org/pod/App::cpanminus

  4. http://perlbrew.pl/

  5. https://github.com/tokuhirom/plenv

  6. http://www.gnu.org/software/make/

  7. https://www.gnu.org/software/make/manual/html_node/Suffix-Rules.html

  8. https://www.gnu.org/software/make/manual/html_node/Phony-Targets.html

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