IT人材白書2014を読んだ

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IT人材白書とは

独立行政法人IPAが毎年出している、日本のIT人材に関するデータ集です。2014年版を入手しましたので、ざっーと、興味がある部分のみ読んでみました。(IPAのページから無償でPDF入手できます)いくつか気づいた点、面白かった点をここに書いてみます。

IT.png

ぼくの視点は、

  • アジャイル開発
  • SIからWeb企業への人材流動

です。

IT人材はどこにいる?

この集計では、「IT人材」と呼ばれる集団についてのデータを集めて分析するわけですが、

  • ユーザー企業(IT利用側)
  • IT企業(IT提供側)

の2つに分けて集計され、その合算が示されます。

この集計方法、分け方は日本独自だと思います。日本のソフトウェア産業が受託型になっていて、「ユーザ企業」と「SIer」とその下請け、という構図になっていることを反映しています。IT企業の方は業種分類が「受託ソフトウェア業」、「組込みソフトウェア業」など割と分かりやすいのですが、ユーザ企業の方はほとんどの業種(製造業、建築業、サービス業、、、、、)にまたがるため、この集計はかなり難しいものになります。

  • (引用)表1-3-5 IT人材の総数推計
IT人材区分 2013年度推計
IT企業IT人材(IT提供側) 819,000
ユーザ企業IT人材(IT利用側) 276,000
IT人材数合計 1,095,000

IT人材はざっくり100万人いて、その8割がIT企業、というのが実態です。これはここ数年変わっていないようです。

また、これはこの調査と関係のない参考情報ですが、米国ではユーザー側の技術者の方が多く(人材の流動性が高く、プロジェクトが始まると積極的に採用する)。この日本の分断構造がアジャイルの採用を難しくしている、という1つの理由となっています(2012年のIPAの調査より)。

受託開発の今後

ぼくは、チェンジビジョンで「パッケージ開発」を、永和システムマネジメントで「受託開発」を事業としてやっています。受託開発やSIの今後(オワコンなどと呼ばれたりする)について興味があるので、このあたりを白書から見てみます。

サービス利用の拡大

明らかなデータとして、「作る」から「使う」に転換の傾向があります(p.18)。Google Apps, AWS, MS Azure, Salesforce などのプラットフォーム利用が進んでいる。この中で、受託開発はどうなる!?という問題提起がされています。

それでも高い受託開発の割合

そのなかでも、IT企業(提供側)で受託開発の割合は87%であり、その中をこの調査では「従来型」と「提案型」に分けているが、従来型から提案型への移行したいという予定があるものの、実際の移行は進んでいない、と(p.20)。これを、

従来型受託開発は価格競争が激しく、事業を提案型に展開したいが、事業内容を変えることは容易でない

と推察しています。現実は、従業員規模が大きい企業ほど、売り上げに占める受託の割合が高く、受託への依存している傾向にあるらしい。

では、大企業でなく一次請け以外(二次請けなど)の会社はどうか。意識と実態の乖離がはげしくなり、一次請け比率が低くなるほど、「ビジネスシフトの必要性を感じている割合が高いが、実行には至っていない現状がうかがえる」という(p.22)。

つまり、顧客から遠い(商流の下にいる)方がビジネスを変えたいという課題意識を持っているが、大企業ほど投資できるわけではなく、現状から脱却できていない、という構図なのだろう。

Webビジネスでの人材

一方、Webビジネスに関して節を割いて考察(p.38)。この領域では、人材不足感が高い、と。必要な能力については、

  • 顧客分析力・企画力がもっとも高い
  • IT企業との違いは、「Web技術」、「データ解析」の重要度
  • 逆にIT企業に比べて重視されていないのは「PM手法」

ですか(p.44)。さらに「中途採用重視」 の傾向。これもすごく実感がわかります。Web系はビジネスも厳しく、事業も1年で結果をださなければならないことが多いでしょうから、人材採用も急ぎ足になるはず。うちの会社を卒業して行く人たちも、中途採用でWebビジネス系が最近多くなっていますし、即戦力が求められることが多いでしょう。逆に、古き良き日本のSIや製造業では、「人は育てるもの」である、という文化がまだある。

こんな状況で、Webビジネスの企業では、戦略的人事部門の重要性がますます大きくなるのではないか、とぼくは予想しています。しかも、人事はその企業の文化が大きくかかわるため、一般的な「教科書」が存在しない領域も大きいのです。優秀な人事という「人」がこれからWebビジネスで重要な役割になるのではないか、と思っています。(ぼくの知っているペパボやDeNA、福井のオークコネクトのすごい人事の方を想像しながら書いています...)

人材の流動

これらを踏まえて、ぼくがこの記事でお伝えしたかったのこの白書の主結論は、人材流動に関するこの絵です。この絵には、「IT企業」、「ユーザ企業」、「Webビジネス企業」の人材がどこから来てどこに行くか、が見取り図的に示されています(p.67から引用)。

IT白書.png

中途採用者数を見ると、

企業タイプ 中間採用の割合
Webビジネス企業 27.1%
ユーザー企業 3.6%
IT企業 3.6%

となり、圧倒的に Web ビジネスがホットな転職先であることが分かります。Web ビジネスでの中途採用は、「IT企業から」と同じ「Webビジネス企業から」の両方。IT企業から流れ込んでいるのかと思ったら、「Webビジネスを渡り歩く」人も増えてきているのでしょう

逆に、IT企業では、同じIT企業からの転職が圧倒的。(Webビジネス企業からの逆流は少ない)もしくは、ここに数字は出てこないが社内配置転換、が多いと推察されています。

アジャイル開発

p.106 から始まる節では、アジャイル開発における人材像について記述されています。欧米ですでに主流になっている手法だが、日本でも採用が増加傾向にあり、IPAのセミナーでのアンケートでは、2013年にはじめて「すべてのプロジェクトで適用している」もしくは「ほとんどのプロジェクトで適用している」の参加者割合が半数を超えた回があったそうです。

ただし、別のソース(IT技術者動向調査)では、最もよく使用する開発手法として「アジャイル型」が15.4%、「ウォーターフォール型」が61.8%、と、まだまだウォーターフォールが主役の座です(こちらの方が実感と近いです)。

また、Webビジネスにおいてはアジャイルの採用率が高く、その理由として要件変化への柔軟な対応、サービスの迅速な提供、を推測しています。

アジャイルに必要な人材の特徴などの(スキルとか)記述があったが(そこはあえてスルーして..別の機会に書きます)、ぼくがいちばんピンと来たのは、「仕事のやりがい」「仕事がすきかどうか」が、アジャイル型の開発をしている職場で高くなるというものです。

結論はありませんが...

ぼくも一人のIT技術者として、就職に関していろんな選択があるのはいいことで、日本でもWebビジネス企業が(一時ほどではないにしても)IT人材のホットな活躍場所である、というのはいいことだと思います。

もう一方で、受託開発もなくなることはないでしょう。その中で、大企業ではなく、永和システムマネジメントのように小中規模でも、しっかりした技術と対話で、お客様の要望に答えていく、という開発は残っていくと思います。米国では技術の目利きをして顧客と対話するテクノロジブティック」という受託形態も聞いたことがあります。また、倉貫( @kuranuki@github )さんの「納品のない受託開発」のような手法も「スタートアップのCTO代行モデル」として秀逸でしょう。

(※ 8/11追記: 永和システムマネジメントも、2010年に新しい受託形態として「価値創造契約」 を発表して実績を積んだり、今期 2014/8/1 からアジャイル事業部を新設し事業計画を公開したり、と新しい受託開発に取組んでいます。)

ただ、間違いなく、サービスやソフトウェアを「使う人」、「提供する人」、「作る人」の3者がアジャイルやリーンスタートアップ、デザイン思考、などの流れに共通する「共感と対話」に支えられたビジネスのモデル、に移行していく流れを強く感じます。そして、マネジメントのあり方も、コマンド管理型からリーダシップ協調型へとの自然な移行をたどるでしょう。企業がその文化を作れるかどうか、がマネジメントとしての力の出しどころだと思っています。そして、文化や環境としてのアジャイル開発が、考え方として大きな影響を与えるようになっていくと思います。

また、今回書けなかった関心事として、「ビジネスのグローバル化」と「ダイバーシティ」(女性の活躍)があります。これについても次回に書いてみたいと思います。

(平鍋)