はじめに
結論から言えばサブカルチャー、特にゲームやアニメの分野はイノベーションの産物の宝庫と言える。
今回は岩崎夏海先生が執筆された、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」(もしイノ)を題材にしつつ、サブカルチャーに焦点を当ててイノベーションについて触れていきたい。
そもそもイノベーションとは何か
もしイノによれば、「イノベーションは企業家に特有の道具である」、「イノベーションを起こせば競争をしなくて済む」とある。つまり、イノベーションとはツールであり、それを使うことで競争せず勝つことが出来る、というまるで魔法の杖のような存在である(最も、多少はリスクがあるが)。この魔法の杖で出来たものは身近にたくさんある。見分け方は簡単で、大ヒットしたモノで、新しい概念のモノ、と言える。
以下では、身近なところにあるゲームのイノベーションの産物を見ていきたい。
ゲーム業界のイノベーション
ここ2,3年でのイノベーションの産物だと思われるものを列挙してみると、
パズドラ、艦これ、Splatoon、などがあるだろう。
パズドラの新しさ
パズドラは数あるスマホゲームの中で堂々のDLランキング1位を獲得し続けている。
パズドラが行ったイノベーションの産物は主に2つあると考えられる。
1つ目はパズル要素である。パズドラが登場する前、グリーなどはいくつもの課金型スマホゲームを出していた。しかしそれらの多くは戦闘が始まればただ結果を待つものが多く、ユーザーはその時間は退屈なものだった。
その問題に対してパズドラがとった行動は、パズルゲームをユーザにやってもらうことだった。これにより、退屈な待ち時間は無くなり、さらにパズルの結果によってゲームの結果に関与出来るシステムを構築した。ユーザはゲームの結果に関与できるためパズルを練習する。さらによりパズルゲームを有利に進めるためキャラの吟味も行う。こうして、ドンドンゲームにはまっていく構造が作られた。
2つ目は詫び石システムである。今では当たり前に行われているが、当時は画期的だった。
というのは、サーバメンテナンスが長引いたり、緊急メンテナンスが発生したとき、これまで会社側からのアクションはユーザが見るかどうかすら怪しい謝罪文だけだった。
そこに、課金アイテムである魔法石を配るという大胆な行動がとられた。
これはユーザに対して各メンテナンス=悪いイベント、という印象から、魔法石がもらえるイベント、という新たな価値観を創造している。
この2つのイノベーションの産物によって、今日のパズドラの地位がある(と思う)
艦これの新しさ
艦これはブラウザゲームにもかかわらず、かなりの人気を誇っている。
ひとえに、戦艦 x 女の子 という組み合わせが新しいジャンルだったとも言える。
しかしもう一つ上げるならば、ケッコンカッコカリシステムだろう。
ゲームシステム上はただのLv上限解放である。これだけ聞けば、プレイしたことが無い人から見れば課金前提のゲームに見えるが、艦これは極端な話、未課金でもエンドコンテンツに行けるし、クリアできる。
ではなぜ人々はケッコンカッコカリをするのか。
お察しの通り、愛である。我が子のように育てた艦むすと結ばれるためである。たとえ2回目以降は数百円かかるとしても。
馬鹿なの?と思うかもしれないが、自分が愛着を持ったものを特別にしたい、という欲求はごくごく自然なものである。
これまでLv上限解放はクリアのための一手段でしかなかった。しかしそのシステムに全く別の価値を与えたのである。
これが艦これが人気を博した理由の一つではないだろうか
Splatoon
Splatoonはいくつもの新しいことが詰まっている。
1つ目はTPSゲームでありながら、万人受けするゲームとなっていることである。
FPSやTPS系のゲームは銃で撃ちあう性質上、どうしても舞台が泥臭く、また血なまぐさいものになっていた。
しかしSplatoonの武器は色のついた水鉄砲である。泥臭いどころか、洗い流してくれる。これはこれまでのFPS,TPSゲームに対する印象をぶち壊し、全く新たな価値観を創造したと言える。
2つ目はフェスの存在である。
フェスとはゲーム内のイベントの1つであり、2チームに分かれ、勝敗を競い合い、チームとして勝利するとアイテムがもらえる、というシステムである。これだけなら良くあるイベント系だが、大きく違うのは企業とコラボする点である。
赤いきつねvs緑のたぬき、KIRINの午後ティー 紅茶vsミルクティー など。
これは任天堂側にとっては広告塔の役割を果たすので収益につながる(はず)。
となると、従来なら課金によって運営費を賄っていたところが、一部でも補填できる。
これにより、ユーザは様々なサービスを、それこそ今までなら課金しなければ受けられなかった新ステージや新武器を無料で体験できる。新たなビジネス形態の創造である。
まとめ
イノベーションは難しい、偶然起きるもの、と思われがちだが、注意深く見れば様々なものがイノベーションの産物である。
問題の本質はイノベーションの方法があまりにも知られていないことだと考える。その意味で、もしイノはこの問題を解く一つの鍵になるのではないだろうか。
余談だが、題材のもしイノやもしドラも一種のイノベーションの産物ととらえることが出来るだろう。
経営学という、いかにもお堅い話題をライトノベル風に、かつ分かりやすく書いた人がいただろうか。