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RxSwift入門(2) 非同期処理してみる

Last updated at Posted at 2016-07-13

はじめに

オブザーバーパターンから始めるRxSwift入門」の続きです。

前の記事では Rx の Hot な Observable のみを使った利用方法を説明しました。今回は Cold な Observable の生成方法や、非同期処理を実現するためのスレッド指定方法などを解説します。

HotなObservableって何?

前の記事で説明した Subject を使ったものが Hot な Observable です。Subject そのものでなくても、例えば Variable のように内部で Subject を使っているものもあります。

  • どこからも subscribe されていなくても動作する
  • 複数から subscribe されると同じ動作結果を通知する

という特徴があります。オブサーバーパターンを置き換えるなら、この動作は当たり前ですよね?

PublishSubject.png

上図の PublishSubject はどこからも subscribe されていなくても動作していてイベントを発行しています。それを subscribe すると、その時点以降のイベントを通知してもらえるようになります。複数から subscribe しても、同じタイミングで同じイベントが通知されます。

ColdなObservableって何?

逆に Subject を使わないで作られる Observable は全て Cold です。Rx は Cold の方が基本で、むしろ Hot の方が特殊と言えます。

  • subscribe されないと動作せず、subscribe されると動作を開始する
  • 複数から subscribe されるとそれぞれ別々に動作する

という特徴があります。なんのこっちゃと思うかもしれませんが、例えば配列の forEach を呼び出す場合を考えてみてください。

[ 1, 2, 3, 4, 5].forEach { value in
  // ...
}

forEach を呼び出すと配列の最初から値を渡してきます。しかも複数が forEach を呼び出すとそれぞれ別々に動作して最初から値を渡してきます。

RxSwift で同じ動作をさせるには以下のようにします。

_ = Observable.of(1, 2, 3, 4, 5).subscribeNext { value in
  // ...
}

Observable.of(1, 2, 3, 4, 5) で作っているのが Cold な Observable になります。subscribe するまでは動作せず、複数から subsribe されるとそれぞれ別々に動作して、1, 2, 3, 4, 5 を順番に渡します。

HotなObservableを使って非同期通信結果を通知してみる

前の記事で紹介した Subject を使う方法で、サーバーからデータを取得するクラスを作ってみます。

class ServerDataLoader {
  private let resultSubject = PublishSubject<NSData>()
  private let request: NSURLRequest
  private var task: NSURLSessionDataTask?

  var result: Observable<NSData> { return resultSubject }

  func start() {
    let configuration = NSURLSessionConfiguration.defaultSessionConfiguration()
    let session = NSURLSession(configuration: configuration)
    let task = session.dataTaskWithRequest(request) { // 完了時の処理
      [resultSubject] data, response, error in
      dispatch_async(dispatch_get_main_queue()) {
        if let data = data {
          resultSubject.onNext(data)
          resultSubject.onCompleted()
        } else {
          resultSubject.onError(error ?? MyError.FailedToFetchServerData)
        }
      }
    }
    task.resume() // 通信開始(非同期でバックグラウンド実行される)
    self.task = task
  }

  func cancel() {
    task?.cancel()
  }

  init(request: NSURLRequest) {
    self.request = request
  }
}

こんな感じで使います。

let loader = ServerDataLoader(request: request)
loader.result.subscribe {
  onNext: { data in
    // データ受信時の処理
  },
  onError: { error in
    // エラー時の処理
  }
}
loader.start()

NSURLSessionが通信をバックグラウンドスレッドで非同期で実行してくれます。そして dataTaskWithRequest に渡す完了時の処理もバックグラウンドスレッドで実行されます。ここではGCDを使って通知をメインスレッドで行うように変更しています。

注意点としては、このクラスは1回限りの使い捨てということです。__onError/onCompleted が発生したらその後はイベントが通知されない__ので、もう一度 start すると、通信は開始しますが結果が通知されません。

Observable.create

今度は同様の処理を Cold な Observable でやってみます。Observable.create は Cold な Observable を作る汎用的な方法です。「subscribe されるとサーバーからデータを取得する処理を開始する」Observable を作って返しています。

func fetchServerDataWithRequest(request: NSURLRequest) -> Observable<NSData> {
  return Observable.create { observer in
    let configuration = NSURLSessionConfiguration.defaultSessionConfiguration()
    let session = NSURLSession(configuration: configuration)
    let task = session.dataTaskWithRequest(request) { data, response, error in
      if let data = data {
        observer.onNext(data)
        observer.onCompleted()
      } else {
        observer.onError(error ?? MyError.FailedToFetchServerData)
      }
    }
    task.resume()
    return AnonymousDisposable { task.cancel() }
  }
}

Observer.create には subscribe されたときに実行する処理を渡します。クロージャの引数には ObserverType 型(上記ではobserverという名前)が渡されます。これに onNext/onError/onCompleted メソッドが用意されているので、それらを呼び出してイベントを通知します。クロージャの戻り値として、dispose されたときに購読解除処理を行う Disposable オブジェクトを返します。

Disposable を作る部分は、上の例なら以下のようにも書けますね。

return AnonymousDisposable(task.cancel)

fetchServerDataWithRequest を呼び出した時点では Observable が生成されるだけで、通信は開始しません。この Observable は Cold なので、subscribe して初めて処理を開始します。

また subscribe する度に新しく処理を開始するため、前の Hot を使ったクラスと違って、何度でも利用することができます。

subscribe すると渡したクロージャ(下図の赤色部分)が実行されます。
先ほどと同様に通信は非同期で実行されるので、完了時に実行されるクロージャ(下図の青色部分)はバックグラウンドスレッドで実行されます。

fetchServerData.png

先ほどと違って GCD でメインスレッドに変換していないので、onNext/onError/onCompleted は通信を行ったバックグラウンドスレッドで通知されます。これをメインスレッドで通知させる Rx 流の方法を次に説明します。

補足:
RxCocoa が NSURLSession に rx_data って拡張プロパティを用意してるんで、それ使えば自分でこんな処理を実装する必要はありません。さらに JSON パースまでやってくれる rx_JSON なんてのもあります。

observeOn

先ほどのバックグラウンドスレッドで通知されるイベントを、メインスレッドで通知してもらうように変換するには observeOn を利用します。

_ = fetchServerDataWithRequest(request)
  .observeOn(MainScheduler.instance)
  .subscribe(
    onNext: { data in
      // データ受信時の処理
    },
    onError: { error in
      // エラー時の処理
    }
  )

observeOn に渡すのは Scheduler オブジェクトで、メインスレッドを表す Scheduler は MainScheduler.instance で取得できます。observeOn を呼び出した部分から後は、指定したスレッドで通知されます。

例えば途中で NSData のパースを行うとします。

_ = fetchServerDataWithRequest(request)
  .observeOn(MainScheduler.instance)
  .map { parse($0) }
  .subscribe(
    onNext: { result in
      // パース済みデータ受信時の処理
    },
    onError: { error in
      // エラー時の処理
    }
  )

このようにすると、パース処理もメインスレッドで行われます。observeOn と map を入れ替えると、

  .map { parse($0) }
  .observeOn(MainScheduler.instance)

パース処理までがバックグラウンドスレッドで行われ、その結果の通知がメインスレッドで行われます。

subscribeOn

名前の通り subscibe 処理を実行するスレッドを指定するのですが、勘違いしてはいけません。subscribe に渡すクロージャがそのスレッドで実行されるのではありません

subscribe 処理は、

  • 購読登録処理を行う
  • Cold な Observable ならそのときに動作を開始する

ということを行っています。subscribeOn でその実行スレッドを指定できるわけです。

_ = fetchServerDataWithRequest(request)
  .subscribeOn(ConcurrentDispatchQueueScheduler(
    globalConcurrentQueueQOS: .UserInitiated))
  .map { parse($0) }
  .observeOn(MainScheduler.instance)
  .subscribe(
    onNext: { result in
      // パース済みデータ受信時の処理
    },
    onError: { error in
      // エラー時の処理
    }
  )

subscribeOn で QOS_CLASS_USER_INITIATED での実行を指定しています1。これで fetchServerDataWithRequest が返す Observable の購読登録処理が指定スレッドで行われます。この Observable は Cold なので、subscribe 時点で create に渡したクロージャ(下記の赤色部分)が指定スレッドで実行されます。

fetchServerData.png

このように subscribeOn を使うと Cold な Observable の動作スレッドを指定することができます

しかしこの例ではNSURLSession が元々バックグラウンド動作しますので、通信処理は指定スレッドでは実行されません。

そして通信完了時の処理(青色の部分)も通信バックグラウンドスレッドで実行されます。通信バックグラウンドスレッドで通知されたイベントは、observeOn 以降はメインスレッドで通知されるようになり、subscribe に渡したクロージャはメインスレッドで呼び出されます。

このようにイベントの通知は subscribeOn で指定したスレッドで行われるとは限りません。以下のように内部でバックグランド実行しないようなものは、subscribeOn で指定したスレッドで通知されますが・・・。

_ = Observable.of(1, 2, 3, 4, 5)
  .subscribeOn(ConcurrentDispatchQueueScheduler(globalConcurrentQueueQOS: .UserInitiated))
  .subscribeNext { value in
    // 1, 2, 3, 4, 5のループ処理が指定スレッドで行われ、
    // このクロージャも指定スレッドで呼び出される
    // ...
  }

また subscribeOn が subscribe するときの動作スレッドを指定しているのだと理解していれば、subscribe する前から動作している __Hot な Observable に subscribeOn を指定してもその動作スレッドには何も影響がない__ことも理解できるはずです。

リトライ

その名も retry という operator が用意されています。onError が起こると、自動的に subscribe しなおしてくれます。

_ = fetchServerDataWithRequest(request)
  .map { parse($0) }
  .retry(3)
  .observeOn(MainScheduler.instance)
  .subscribe(
    onNext: { result in
      // パース済みデータ受信時の処理
    },
    onError: { error in
      // エラー時の処理
    }
  )

上の例では3回リトライを指定しています。map の後に指定しているので、parse で例外が発生して失敗した場合もリトライします。実は __operator による変換で例外が発生した場合、RxSwift は onError で通知してくれる__んです。よくできてますね。

ちなみに retry に回数を指定しなかった場合、ずっとリトライし続けます。もっと細かい制御のできる retryWhen もありますが、複雑なのでまた別の機会に。

タイムアウトの指定

timeout という operator があります。第一引数が秒数、第二引数がタイマーを実行するスレッド(Scheduler)の指定です。タイムアウトすると TimeoutError が onError で通知されます。

let lowPriorityScheduler  = ConcurrentDispatchQueueScheduler(
  queue: dispatch_get_global_queue(DISPATCH_QUEUE_PRIORITY_LOW, 0))
  
_ = fetchServerDataWithRequest(request)
  .timeout(5, scheduler: lowPriorityScheduler)
  .map { parse($0) }
  .observeOn(MainScheduler.instance)
  .subscribe(
    onNext: { result in
      // パース済みデータ受信時の処理
    },
    onError: { error in
      // エラー時の処理
    }
  )

Scheduler の作成は、先ほど QOS による指定方法を使ったので、今回は dispatch_queue_t による指定にしてみました。

タイムアウトしたら代わりに実行する Observable を指定する other 引数を持つバージョンもあります。

  .timeout(5, other: Observable.just(NSData()), scheduler: lowPriorityScheduler)

Observable.just は指定した値を onNext で1つだけ流して onCompleted になる Observable を生成します。ここではタイムアウトしたら空の NSData を渡して完了するようにしています。

エラーからの復帰

先ほどの other 引数付きの timeout のように、エラーが発生した場合に onError で伝えずに onNext で何かを渡したい場合があります。例えば検索して何かのリストを取得するとします。取得に失敗したら空のリストを渡すようにしたいといったケースです。そんなときは catchErrorJustReturn や catchError が使えます。

catchErrorJustReturn を使って onError が発生したら空の配列を渡すようにしています( parse の結果が配列で返る想定です)。サーバーからのデータ取得でもパース失敗でも、とくにかく onError になったら空の配列になります。

_ = fetchServerDataWithRequest(request)
  .map { parse($0) }
  .catchErrorJustReturn([])
  .observeOn(MainScheduler.instance)
  .subscribeNext { result in
      // パース済みデータ受信時の処理
  }

catchError の場合はエラー内容によって処理を選択できます。catchError も map と同様に例外が throw されると onError で通知してくれます。

_ = fetchServerDataWithRequest(request)
  .map { parse($0) }
  .catchError { error in
    if error is MyError { throw error }
    return Observable.just([])
  }
  .observeOn(MainScheduler.instance)
  .subscribeNext { result in
      // パース済みデータ受信時の処理
  }

onError のみ発生させる Observable を生成する Observable.error を使って以下のようにも書けます。

  .catchError { error in
    if error is MyError { return Observable.error(error) }
    return Observable.just([])
  }

この先へ

前回はイベント通知に Hot な Observable を使う方法を解説したので、今回は非同期処理に Cold な Observable を使う方法を解説してみました。

Cold な Observable の生成関数はここで紹介した of, create, just, error 以外にも、empty, never, range, deferred などが用意されています。

このようにまだまだ紹介していない operator やクラスが用意されています。しかしここまでの RxSwift の使い方が理解できれば、あとは少しずつ使えるものを増やしていけると思います。

ここまでは RxSwift の使い方を解説してきました。次はさらに使いこなせるように、落とし穴にハマらないように、トラブルにあったときに原因を探れるように、RxSwift の動作をより深く理解することを目的にした

RxSwiftを深く理解する

を読んでみてください。

  1. iOS8で追加されたQOSによる指定です。

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