おぷすたディストリビューションビジネスは何処へ向かうのか

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この記事はOpenStackアドベントカレンダー 2016の12月6日のエントリーです。

私はナニモノか

Hewlett Packard Enterprise の Asia Pacific & Japanリージョンで、IaaS/PaaSなどのクラウド技術の提案/設計/構築を行うチーム(Helion Professional Services)に所属しています。HPEは正直であることを最上の美徳としている会社でして、身分を明かさずになにか書くことを良しとしないので一応念のため。
以下は個人の意見であり、会社の見解ではもちろんありません。これも念のため。

HPEとはナニモノか

サーバ/ストレージなどのHWベンダとしてはよく知られてますが、Helion OpenStackという自社ディストリビューションを持っていたり、けっこうクラウドにも力入れてるんだぜ。パブリッククラウド事業からは撤退しましたけど、オンプレのIaaS/PaaSとかハイブリッドクラウド作るなら全部任せろ、な会社です。愉快な仲間に囲まれて毎日ハッピーです。

Rock'n'Roll is Dead?

今年の6月に、こともあろうかMirantisの公式ブログに"Infrastructure Software is Dead"という衝撃的なタイトルの記事が掲載され、それを引用する形でRackSpaceの公式ブログにも"OpenStack Is Dead! Long Live OpenStack!"という記事が掲載されました。おぷすた界隈ではかなり話題になっていましたので記憶に新しいかと思います。
刺激的な表現ではありましたが、ざっくり言うと「OpenStackは製品じゃねーだろ。大事なことはそれを使ってどんなクラウドを作り上げるかだ。」ということを伝えているのだと思います。
私もプロフェッショナルサービスを生業とする身なので、(わかる)と思いました。「製品メーカーとして責任を取れ」系のお客さんとの噛み合わなさには日頃悩まされてますので・・・。

ContributionとDistribution

自前のサービスを成立させるためにOSSを活用することはもはや企業の生き残りの条件と言っても過言ではないと思います。とはいえエンタープライズのOSSに対する理解はまだまだ浸透しておらず、ベンダー依存度が高いという状況が日本に限らず残っていると思います。まあ僕らそれで食ってるわけですが、OSSのサブスクリプションに対して「製品買ってるんだからタダで直せ」ってのが成立するわけもなく。
ぶっちゃけ、ガチなエンタープライズビジネスを主体にしているベンダー企業が、OpenStackに限らずOSSのディストリビューションビジネスを手掛けるってことは簡単じゃないんだなー、と実感しています。ていうかOSSのエンタープライズ向けディストリビューションをビジネスの中心に据えて成功している大企業ってRedHatとSUSEぐらいじゃないですか?
Contribution(投資)とDistribution(回収)をうまくバランスさせて、かつお客さんのわがままに振り回されず、エコシステムを確立しつつアップストリームとダウンストリーム両方の品質を向上していくってのは容易じゃないです。特にそれがOpenStackのような何でもあり異種格闘技バトルロイヤル闇鍋ちゃんぽんミックスジュース許容性の高いアーキテクチャの場合は。

で、HPEさんどうなのよ

Helionのビジネス自体は好調な感じなのですが、"Watch your PaaS (and IaaS) – SUSE acquires OpenStack and Cloud Foundry technology from HPE"という発表がまずSUSEからありましたね。HPEさんはこれ系のメディアアピールがド下手控えめなので、公式はこんなシンプルなニュースリリースにとどまってますが・・・
これだけ見て

  • ん?Helionなくなっちゃうの?
  • HPEはOpenStackやめるの?
  • あの人辞めるの?

みたいな憶測が一部で飛び交ってたりしますが、全くそんなことはないのでご安心を。もともとHPEとSUSEの親会社であるMicroFocusとの間でソフトウェア事業の統合/再編を行っており、その中での動きです。
あんま勝手なこと書くと怒られるので(それがなんぼのもんじゃいって感じではありますが)、ざっくり言うと

  • OSSのアップストリームへのコントリビュートはSUSEに寄せる
  • HPEはエンタープライズ市場への対応に注力する

って感じですね。Helion OpenStackもHelion Stackato(Cloud Foundry)も継続してHPEのディストリビューションとして販売/サポートを行います。OSSの開発者(コントリビューター)はSUSEに籍を移す人が多いですが、ディストリビューターとして必要な開発チームはHPEにも残ります。

どういうことか

たぶん冒頭にあげたMirantisやRackspaceの言っていることはある意味真実で、「OSSプロジェクトのあるべき姿」と「それを使って作り上げるシステムのあるべき姿」は必ずしも一致するわけではないのです。
OSSの利点であり美点は、「そこにソースコードがあるからなんだってできる」ということだと思うわけです。それが、ユーザとして自社に必要な機能をカスタマイズすることであったり、エンタープライズ向けディストリビューターとして市場のニーズに合ったエコシステムを作り上げることだったり。そしてアップストリームへのコントリビューションはどんな立場からもできます。
なので、製品を作って売る、という単純な話ではなくて、それぞれの会社が得意なことをやる、という形に成熟してきたのかなと思います。

まあ、なんだ

OpenStack面白いからもっと盛り上げていこうぜ。
メリークリスマス。