オブザーバーは、要素のデータに[監視可能な変更](https://github.com/jtakiguchi/polymer-docs-japanese-translation
/blob/master/docs/polymer2/data-system/data-system-concepts.md#observable-changes)が発生したときに呼び出されるメソッドです。オブザーバーには二つの基本的なタイプがあります。:
- 単純なオブザーバー(Simple observers)は単一のプロパティを監視します。
- 複雑なオブザーバー(Complex observers)は、一つ以上のプロパティまたはパスを監視できます。
これらの二種類のオブザーバーを宣言するために異なる構文を使用しますが、たいていの場合、同じように動作します。
算出プロパティ(Computed properties)は、要素を構成する一つ以上のデータに基づく仮想的なプロパティです。算出プロパティは算出関数(computing function)によって生成されます。算出関数は本質的には、値を返す複雑なオブザーバーといえます。
特別に指示しない限り、オブザーバーに関する注意点は、単純なオブザーバー、複雑なオブザーバー、や算出プロパティにも適用されます。
オブザーバーと要素の初期化
オブザーバーの最初の呼び出しは、次の条件が満たされるまで遅延されます。:
- 要素が完全に構築されている(デフォルト値が割り当てられ、データバインディングは伝播されます)
-
少なくとも一つは依存部が定義されている(つまり、
undefined
という値がない)
最初の呼び出しの後は、たとえ依存部の新しい値がundefined
であっても、依存対象への監視可能な変更はそれぞれオブザーバーの呼び出しを発生させます。
これにより、デフォルトの状態でオブザーバーが実行されるのを避けることができます。
オブザーバーは同期している
すべてのプロパティエフェクトと同様に、オブザーバーは同期的です。オブザーバーが頻繁に呼び出される可能性が高い場合は、DOMの挿入や削除など時間のかかる作業を遅延することを検討してください。例えば、Polymer.Asyncモジュールを使用して作業を遅延したり、またPolymer.Debouncerモジュールを使用して、タスクが所定の期間内に一度だけ実行されるようにすることができます。
ただし、データの変更を非同期に処理する場合は、変更データが処理されるまで古いデータが存在する可能性があるので注意してください。
単純なオブザーバー(Simple observers)
単純なオブザーバはproperties
オブジェクト内で宣言され、常に単一のプロパティを監視します。プロパティの初期化の順番について仮定を置いてはいけません。:オブザーバーが初期化された複数のプロパティに依存している場合は、代わりに複雑なオブザーバーを使用します。
単純なオブザーバーは、プロパティが初めて定義されたとき(!=undefined
)に起動し、その後に未定義(undefined)になったとしても、すべての変更に対して動作します。
単純なオブザーバーは、プロパティそのものが変更された場合に限り起動します。サブプロパティの変更や配列の変更では起動しません。これら変更が必要な場合は、パスに関連するすべての変更を監視で説明の通り、ワイルドカードパス(*)を指定した複雑なオブザーバーを利用します。
オブザーバーメソッドは名前で指定します。ホスト要素には、必ず同名のメソッドが必要です。
オブザーバーメソッドは引数として、プロパティの新しい値と古い値を受け取ります。
プロパティを監視
単純なオブザーバーを定義するにはプロパティの宣言にobserver
キーを追加し、名前によってオブザーバーメソッドを識別します。
例:
class XCustom extends Polymer.Element {
static get is() {return 'x-custom'; }
static get properties() {
return {
active: {
type: Boolean,
// Observer method identified by name
observer: '_activeChanged'
}
}
}
// Observer method defined as a class method
_activeChanged(newValue, oldValue) {
this.toggleClass('highlight', newValue);
}
}
オブザーバーメソッドは通常クラス内で定義されますが、オブザーバーメソッドは、要素上に同名のメソッドが存在するならば、スーパークラス、サブクラス、ミックスインクラスで定義することもできます。
警告:単一のプロパティに対するオブザーバーは、他のプロパティ、サブプロパティ、またはパスに依存するべきではありません。なぜなら、これらの依存関係が未定義にも関わらずオブザーバーが呼び出される可能性があるからです。詳細は、すべての依存部の特定を参照してください。
複雑なオブザーバー
複雑なオブザーバーは配列observers
の内で宣言されています。複雑なオブザーバーは、一つ以上のパスを監視することができます。これらのパスはオブザーバーの依存部と呼ばれます。
static get observers() {
return [
// Observer method name, followed by a list of dependencies, in parenthesis
'userListChanged(users.*, filter)'
]
}
依存部には次のようなものがあります。:
-
特定のプロパティ(例:
firstName
) -
特定のサブプロパティ(例:
address.street
) -
特定の配列上の変更(例:
users.splices
) -
サブプロパティのすべての変更と、指定パス(例:
users.*
)以下における配列の変更
オブザーバーメソッドには、引数を一つ指定して、各依存部に対して呼び出されます。引数のタイプは、以下のように監視対象のパスによって異なります。
-
依存部が単純なプロパティまたはサブプロパティの場合、引数はプロパティまたはサブプロパティの新しい値になります。
-
配列の変更の場合、引数は変更を記録したレコード(change record)になります。
-
ワイルドカードパスの場合、引数は変更を記録したレコードで、変更箇所の正確なパスが含まれます。
オブザーバーが呼び出された時、引数のいずれかがundefined
かもしれないので注意してください。
複雑なオブザーバーは、宣言的に記述した部分だけに依存するようにすべきです。
関連タスク:
複数のプロパティの変更を監視する
複数プロパティセットの変更を監視するには、配列observers
を使用します。
これらのオブザーバーは、シングルプロパティオブザーバーといくつかの点で異なります。:
-
一つでも依存部が定義されていれば、マルチプロパティオブザーバーや算出プロパティが初期化されるとすぐに実行され、
observers
は一度呼び出されます。そのため、オブザーバーが確実に呼び出されるようにするには、依存関係にある各プロパティはproperties
内でvalue
を使ってデフォルト値を定義しなければなりません。(また別の方法として、undefined
以外の値で初期化します)。 -
オブザーバーは
old
値を引数として受け取らず、新しい値だけを受け取ります。properties
オブジェクトでシングルプロパティオブザーバーが定義されている場合に限り、old
とnew
の両方の値を引数に受け取ります。
例
class XCustom extends Polymer.Element {
static get is() {return 'x-custom'; }
static get properties() {
return {
preload: Boolean,
src: String,
size: String
}
}
// Each item of observers array is a method name followed by
// a comma-separated list of one or more dependencies.
static get observers() {
return [
'updateImage(preload, src, size)'
]
}
// Each method referenced in observers must be defined in
// element prototype. The arguments to the method are new value
// of each dependency, and may be undefined.
updateImage(preload, src, size) {
// ... do work using dependent values
}
}
オブザーバーはproperties
に加えて、サブプロパティへのパス、ワイルドカードパス、や配列の変更も監視することもできます。
サブプロパティの変更を監視
オブジェクトのサブプロパティへの変更を監視するには:
- 配列
observers
を定義します。 - 配列
observers
にアイテムを追加します。アイテムはメソッド名に続けて、一つ以上のパスのリストをカンマ区切りで渡す必要があります。例えば、単一のパスであれば、onNameChange(dog.name)
、複数のパスの場合は、onNameChange(dog.name, cat.name)
のようになりますです。各パスが監視したいサブプロパティとなります。 - 要素のプロトタイプ(訳補:クラス)内でメソッドを定義します。メソッドが呼び出されると、メソッドの引数がサブプロパティの新しい値になります。
Polymerがサブプロパティの変更を適切に検出できるよう、サブプロパティは次の二つのいずれかの方法でアップデートする必要があります。:
- [プロパティバインディング](https://github.com/jtakiguchi/polymer-docs-japanese-translation
/blob/master/docs/polymer2/data-system/data-binding.md#bind-to-a-target-property)を利用する - setメソッドを呼び出す
例(プロパティバインディングを使った方法):
<dom-module id="x-custom">
<template>
<!-- Sub-property is updated via property binding. -->
<input value="{{user.name::input}}">
</template>
<script>
class XCustom extends Polymer.Element {
static get is() {return 'x-custom'; }
static get properties() {
return {
user: {
type: Object,
value: function() {
return {};
}
}
}
}
// Observe the name sub-property on the user object
static get observers() {
return [
'userNameChanged(user.name)'
]
}
// For a property or sub-property dependency, the corresponding
// argument is the new value of the property or sub-property
userNameChanged: function(name) {
if (name) {
console.log('new name: ' + name);
} else {
console.log('user name is undefined');
}
}
}
customElements.define(XCustom.is, XCustom);
</script>
</dom-module>
配列の変更を監視
配列の変更に対してオブザーバーを設定すると、Polymerの配列変更メソッドを使用して、配列のアイテムが追加または削除される度に、オブザーバー関数が呼び出されます。配列が変更されるたびに、オブザーバーは配列のsplicesのセットとして、変更内容を表す変更レコードを受け取ります。
Polymerは、配列のアイテムが変更されたときだけ配列変更のオブザーバーを呼び出し、トップレベルの(top-level)配列への変更に対しては呼び出されません。
多くの場面で、配列の変更と配列のアイテムのサブプロパティへの変更の両方を監視したいかもしれません。この場合には、パスに関連するすべての変更を監視で説明されているように、ワイルドカードパスを使用する必要があります。
監視可能な配列の変更:可能であれば常にPolymerの配列の変更メソッドを使用するようにしてください。これによって、配列に加えられた変更の中から、事前に登録された関心のある要素に関するものを適切に通知します。ネイティブのメソッドを利用せざるを得ない場合、[ネイティブの配列の変更メソッドを使用](https://github.com/jtakiguchi/polymer-docs-japanese-translation
/blob/master/docs/polymer2/data-system/work-with-object-and-array-data.md#work-with-arrays)で説明されているように、Polymerに配列変更を通知する必要があります。
spliceへのオブザーバーを作成するには、配列observers
内でパスを指定する際、配列に続けて.splices
を指定してください。
static get observers() {
return [
'usersAddedOrRemoved(users.splices)'
]
}
オブザーバーメソッドは引数を一つ受け取る必要があります。オブザーバーメソッドが呼び出されると、配列上で発生した変更に関して変更レコードを受け取ります。各変更レコードは、次のプロパティを提供します。:
-
indexSplices
:配列で発生したインデックス単位の変更。各indexSplices
レコードには、次のプロパティが含まれます。-
index
:spliceの開始位置 -
removed
:削除されたアイテムの配列 -
addedCount
:インデックスに挿入された新しいアイテムの数 -
object
:変更対象の配列への参照 -
type
:文字列リテラルsplice
-
_変更レコード_は未定義の可能性があります。初めてオブザーバーが呼び出された時点で、変更レコードは未定義の可能性があるため、この例に示した方法で対処する必要があります。
例:
class XCustom extends Polymer.Element {
static get is() {return 'x-custom'; }
static get properties() {
return {
users: {
type: Array,
value: function() {
return [];
}
}
}
}
// Observe changes to the users array
static get observers() {
return [
'usersAddedOrRemoved(users.splices)'
]
}
// For an array mutation dependency, the corresponding argument is a change record
usersAddedOrRemoved(changeRecord) {
if (changeRecord) {
changeRecord.indexSplices.forEach(function(s) {
s.removed.forEach(function(user) {
console.log(user.name + ' was removed');
});
for (var i=0; i<s.addedCount; i++) {
var index = s.index + i;
var newUser = s.object[index];
console.log('User ' + newUser.name + ' added at index ' + index);
}
}, this);
}
}
ready() {
super.ready();
this.push('users', {name: "Jack Aubrey"});
}
}
customElements.define(XCustom.is, XCustom);
パスに関連するすべての変更を監視
オブジェクトや配列の(深い)サブプロパティが変更された際にオブザーバーを呼び出すには、ワイルドカード(*)を用いてパスを指定します。
ワイルドカードを使用してパスを指定した場合、オブザーバーに引数として渡される変更レコードオブジェクトには以下のようなプロパティが存在します。:
-
path
:変更されたプロパティへのパス。変更されたのがプロパティか、サブプロパティか、配列か判別するのに利用されます。 -
value
:変更されたパスの新しい値 -
base
:パスのワイルドカード以外の部分にマッチするオブジェクト
配列の変更の場合、path
は、.splices
の前に置かれた変更対象の配列のパスになります。またvalue
フィールドには、配列の変更の監視で説明した通り、indexSplices
プロパティが含まれます。
例:
<dom-module id="x-custom">
<template>
<input value="{{user.name.first::input}}"
placeholder="First Name">
<input value="{{user.name.last::input}}"
placeholder="Last Name">
</template>
<script>
class XCustom extends Polymer.Element {
static get is() { return 'x-custom'; }
static get properties() {
return {
user: {
type: Object,
value: function() {
return {'name':{}};
}
}
}
}
static get observers() {
return [
'userNameChanged(user.name.*)'
]
}
userNameChanged(changeRecord) {
console.log('path: ' + changeRecord.path);
console.log('value: ' + changeRecord.value);
}
}
customElements.define(XCustom.is, XCustom);
</script>
</dom-module>
すべての依存部を特定
オブザーバーは、依存部として列挙されていないプロパティ、サブプロパティ、またはパスに依存してはいけません。これにより、「隠れた(hidden)」依存部が生成され、以下のように予期せぬ動作を引き起こすかもしれないかもしれません。:
- オブザーバーが、隠れた依存部が設定される前に呼び出されるかもしれません。
- 隠れた依存部が変更されても、オブザーバーは呼び出されません。
例えば:
static get properties() {
return {
firstName: {
type: String,
observer: 'nameChanged'
},
lastName: {
type: String
}
}
}
// WARNING: ANTI-PATTERN! DO NOT USE
nameChanged(newFirstName, oldFirstName) {
// Not invoked when this.lastName changes
var fullName = newFirstName + ' ' + this.lastName;
// ...
}
Polymerは、プロパティの初期化の順番を保証しないので注意してください。
一般に、オブザーバーが複数の依存部を持っている場合は、マルチプロパティオブザーバーを使用し、 すべての依存部をリストにしてこのオブザーバーの引数に渡します。これにより、オブザーバーの呼び出し前に、すべての依存部が確実に設定されていることを保証します。
static get properties() {
return {
firstName: {
type: String
},
lastName: {
type: String
}
}
}
static get observers() {
return [
'nameChanged(firstName, lastName)'
]
}
nameChanged: function(firstName, lastName) {
console.log('new name:', firstName, lastName);
}
もしシングルプロパティオブザーバーを使用しながら、他のプロパティにも依存する必要がある場合(例えば、マルチプロパティオブザーバを使ってアクセスできないような、監視プロパティの古い値にアクセスする必要がある場合)には、次の注意事項を守ってください。:
- オブザーバーで使用する前に、すべての依存部が定義されていることを確認します。(例:
if this.lastName !== undefined
)。
しかし、オブザーバーは、引数で列挙された依存部が変更された場合だけ呼び出されるので注意してください。例えば、オブザーバーはthis.firstName
に依存しているが、引数のリストに依存部として列挙されていない場合、this.firstName
の変更に対してオブザーバーが呼び出されることはありません。
算出プロパティ(Computed properties)
算出プロパティは、一つ以上のパスに基づき算出される仮想的なプロパティです。算出プロパティの算出関数(computing function)は、算出プロパティの値に使用された値を返す点を除けば、複雑なオブザーバー(complex observer)と同じルールに従います。
複雑なオブザーバーのように、undefined
値の取り扱いは監視されているプロパティの数に依存します。詳細については、複雑なオブザーバーの説明を参照してください。
算出プロパティの定義
Polymerは、他のプロパティから値が計算される仮想的なプロパティをサポートしています。
算出プロパティを定義するには、オブジェクトproperties
に、算出関数へマップしたcomputed
キーを追加します。:
fullName: {
type: String,
computed: 'computeFullName(first, last)'
}
この関数には、引数のカッコ内で依存関係にあるプロパティが文字列として渡されます。この関数は、依存関係にあるプロパティに対して[監視可能な変更](https://github.com/jtakiguchi/polymer-docs-japanese-translation
/blob/master/docs/polymer2/data-system/data-system-concepts.md#observable-changes)があると一度呼び出されます。
複雑なオブザーバーと同様に、undefined
値の取り扱いは監視されるプロパティの数に依存します。
算出関数は、依存関係にあるすべてのプロパティが定義される(!== undefined
)まで呼び出されることはありません。したがって、依存関係にある各プロパティは、そのプロパティが確実に計算対象に含まれるよう、properties
内のvalue
でデフォルト値を定義しなければいけません。(また別の方法として、undefined
でない値で初期化しなければいけません)。
注意: 算出関数の定義は、マルチプロパティオブザーバーの定義に似ており、二つはほぼ同じように動作します。唯一の違いは、算出プロパティの関数が仮想的なプロパティとして公開される値を返す点です。
<dom-module id="x-custom">
<template>
My name is <span>{{fullName}}</span>
</template>
<script>
class XCustom extends Polymer.Element {
static get is() { return 'x-custom'; }
static get properties() {
return {
first: String,
last: String,
fullName: {
type: String,
// when `first` or `last` changes `computeFullName` is called once
// and the value it returns is stored as `fullName`
computed: 'computeFullName(first, last)'
}
}
}
computeFullName(first, last) {
return first + ' ' + last;
}
}
customElements.define(XCustom.is, XCustom);
</script>
</dom-module>
算出関数の引数は、要素上のシンプルなプロパティかもしれませんが、observers
でサポートされる引数のタイプと同じならどんなものであっても構いません。これには、パス、ワイルドカードを含むパス、配列スプライスへのパスが含まれます。算出関数が受け取った引数は、上記のセクションで説明したものと一致します。
注意:データバインディングのためにだけに算出プロパティが必要な場合、代わりに算出バインディングを利用できます。詳細は、[算出バインディング](https://github.com/jtakiguchi/polymer-docs-japanese-translation
/blob/master/docs/polymer2/data-system/data-binding.md#computed-bindings)を参照してください 。