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FPGA+SoC+LinuxでDevice Tree Overlayを試してみた

Last updated at Posted at 2016-04-04

はじめに

Device Tree Overlay とは

Linux には何時の頃からか(Version 4.0あたり?) Device Tree Overlay という機能が追加されています。
これは、Linux の動作中の Device Tree に、新たに Device Tree を追加したり削除したりする機能です。

Device Tree の問題点

通常は、ハードウェア情報を Device Tree Blob という形で用意しておいて、Linux のブート時にこの情報に従ってデバイスドライバのロードや初期化を行います。しかし、この方法では Linux を起動する前にハードウェアが決まっている場合しか使えず、FPGA のようなリコンフィギャラブルなハードウェアとは相性がよくありません。例えば、「FPGA+SoC+Linuxのブートシーケンス(ZYNQ+Vivado編)」のデザインフロー(下図)が示すように、FPGA側のデザインを変更する度に Devce Tree Blob を修正する必要があります(下図の 8.merge)。

図1 ZYNQでLinuxを動作させるためのデザインフロー

図1 ZYNQでLinuxを動作させるためのデザインフロー

Device Tree Overlay による解決方法

Linux のブート時には Linux がブートする最小限の Device Tree Blob だけを使い、Linux ブート後に FPGA の構成に合わせて新たに Device Tree を追加したり削除したり出来るようにするのが、Device Tree Overlay です。これにより、FPGA のデザインに合わせて Linux ブート時の Device Tree をいちいち修正する必要がなくなり、デザインフローが簡単になります。また、FPGA のロードを Linux の起動後に行うようにすれば、Linux のリブートすら必要なくなります。

準備

Linux カーネルのビルド

私が Device Tree Overlay を確認した Linux のバージョンは 4.4.4、4.4.7、4.8.17、4.12.2 です。
また、Linux Kernel のビルド時に、Device Tree overlays オプションをオンにしておく必要があります。
具体的には、make menu_config で Device Drivers ---> Device Tree and Open Firmware support ---> Device Tree overlays をチェックするか、.config で CONFIG_OF_OVERLAY=y を追加するかしてカーネルをビルドしておく必要があります。

ConfigFS の準備

現時点(2017/8/9)の Linux Kernel Version 4.12.2 には Device Tree Overlay の機能は入っていますが、残念ながらこれらの機能はカーネル内部からしか使えません。ユーザーから使うにはなんらかのインターフェースが必要です。

例えば、「Transactional Device Tree & Overlays」には ConfigFS を使った方法が載っています。この方法が使えれば良いのですが、現状、この機能は Linux Kernel のメインラインには導入されていません。

そこで、簡単な ConfigFS 版をこちらに用意しました。
https://github.com/ikwzm/dtbocfg
あくまでも簡易版ですが、とりあえず試してみることは出来ます。下記のようにダウンロードして、Makefile を適当に修正してコンパイルしてください。

shell% git clone https://github.com/ikwzm/dtbocfg.git
shell% cd dtbocfg
shell% make

ターゲットシステムの Linux を起動したら、上記のデバイスドライバをロードしてください。

shell# insmod dtbocfg.ko
[ 1458.894102] dtbocfg_module_init
[ 1458.897231] dtbocfg_module_init: OK

もし ConfigFS がマウントされていない場合は次のように手動でマウントしてください。

shell# mount -t configfs none /config

これで /config/device-tree/overlays が見えれば準備完了です。

shell# ls -la /config/device-tree/overlays/
合計 0
drwxr-xr-x 2 root root 0  4月  4 18:54 .
drwxr-xr-x 3 root root 0  4月  4 18:54 ..
shell#

使用例

uio のオーバーレイ

Device Tree Source の用意

次のような Device Tree Source を用意します。
ただしレジスタや割り込み等は適当なので、まちがってもアクセスしないようにしてください。あくまでも例です。

uio0.dts
/dts-v1/;
/ {
	fragment@0 {
		target-path = "/amba";
		__overlay__ {
			#address-cells = <0x1>;
			#size-cells = <0x1>;
			uio0@43c10000 {
				compatible = "generic-uio";
				reg = <0x43c10000 0x1000>;
				interrupts = <0x0 0x1d 0x4>;
			};
		};
	};
};

ConfigFS にディレクトリを用意する

まず、/config/device-tree/overlays の下に適当に名前を付けてディレクトリを作ります。
ここでは Device Tree Source に対応した uio0 というディレクトリを作っています。

shell# mkdir /config/device-tree/overlays/uio0

すると、/config/device-tree/overlays/uio0 の下に status と dtbo というファイルが自動的に出来ます。

shell# ls -la /config/device-tree/overlays/uio0/
合計 0
drwxr-xr-x 2 root root    0  4月  4 20:08 .
drwxr-xr-x 3 root root    0  4月  4 20:08 ..
-rw-r--r-- 1 root root 4096  4月  4 20:09 dtbo
-rw-r--r-- 1 root root 4096  4月  4 20:09 status

これは一見ファイルのように見えますが、実はカーネル内のアートリビュートです。

Device Tree Blob を書き込む

Device Tree Blob を /config/device-tree/overlays/uio0/dtbo に書き込みます。

shell# dtc -I dts -O dtb -o uio0.dtbo uio0.dts
shell# cp uio0.dtbo /config/device-tree/overlays/uio0/dtbo

Device Tree に追加する

次のように /config/device-tree/overlays/uio0/status に 1 を書き込むことにより、dtbo に書き込まれている Device Tree Blob をDevice Tree に追加します。
これで /dev/uio0 が出来ていれば完了です。

shell# echo 1 > /config/device-tree/overlays/uio0/status
shell# ls -la /dev/uio*
crw------- 1 root root 247, 0  4月  4 20:17 /dev/uio0

Device Tree から削除する

次のように /config/device-tree/overlays/uio0/status に 0 を書き込むことにより、Device Tree から削除します。

shell# echo 0 > /config/device-tree/overlays/uio0/status

または、/config/device-tree/overlays/uio0 ディレクトリを削除することで、Device Tree から削除することも出来ます。

shell# rmdir /config/device-tree/overlays/uio0

udmabuf のオーバーレイ

もう一つ、udmabuf のオーバーレイの例もあげておきます。
udmabuf に関しては「Linuxでユーザー空間で動作するプログラムとハードウェアがメモリを共有するためのデバイスドライバ」を参照してください。

Device Tree Source の用意

次のような Device Tree Source を用意します。

udmabuf4.dts
/dts-v1/;

/ {
	fragment@0 {
		target-path = "/amba";
		__overlay__ {
			udmabuf4 {
				compatible = "ikwzm,udmabuf-0.10.a";
				minor-number = <4>;
				size = <0x00400000>;
			};
		};
	};
};

ConfigFS にディレクトリを用意する

まず、/config/device-tree/overlays の下に udmabuf4 というディレクトリを作ります。

shell# mkdir /config/device-tree/overlays/udmabuf4

udmabuf デバイスドライバをロード

詳細は「Linuxでユーザー空間で動作するプログラムとハードウェアがメモリを共有するためのデバイスドライバ」を参照してください。

shell# insmod udmabuf.ko

Device Tree Blob を書き込む

Device Tree Blob を /config/device-tree/overlays/udmabuf4/dtbo に書き込みます。
ここでは、Device Tree Compiler の出力を直接書いています。

shell# dtc -I dts -O dtb -o /config/device-tree/overlays/udmabuf4/dtbo udmabuf4.dts

Device Tree に追加する

次のように /config/device-tree/overlays/udmabuf4/status に 1 を書き込むことにより、dtbo に書き込まれている Device Tree Blob をDevice Tree に追加します。
この際、udmabuf デバイスドライバがすでにロードされている場合、/dev/udmabuf4 ができます。

shell# echo 1 > /config/device-tree/overlays/udmabuf4/status
[ 7256.806725] udmabuf amba:udmabuf4: driver probe start.
[ 7256.827450] udmabuf udmabuf4: driver installed
[ 7256.831818] udmabuf udmabuf4: major number   = 246
[ 7256.836631] udmabuf udmabuf4: minor number   = 4
[ 7256.841192] udmabuf udmabuf4: phys address   = 0x1f500000
[ 7256.846604] udmabuf udmabuf4: buffer size    = 4194304
[ 7256.851694] udmabuf amba:udmabuf4: driver installed.
shell# ls -la /dev/udmabuf*
crw------- 1 root root 247, 0  4月  4 20:30 /dev/udmabuf4

Device Tree から削除する

次のように /config/device-tree/overlays/udmabuf4/status に 0 を書き込むことにより、Device Tree から削除します。

shell# echo 0 > /config/device-tree/overlays/udmabuf4/status
[ 7440.383899] udmabuf udmabuf4: driver uninstalled
[ 7440.389533] udmabuf amba:udmabuf4: driver unloaded

または、/config/device-tree/overlays/udmabuf4 ディレクトリを削除することで、Device Tree から削除することも出来ます。

shell# rmdir /config/device-tree/overlays/udmabuf4/
[ 7473.117564] udmabuf udmabuf4: driver uninstalled
[ 7473.123364] udmabuf amba:udmabuf4: driver unloaded

所感

個人的には、この Device Tree Overlay はとても役に立つと思います。
今回は暫定的に dtbocfg を作って試してみましたが、一刻も早く Device Tree Overlay のユーザーインターフェースがメインラインに導入されることを期待します。

ブートイメージと使用例の提供

上記の Device Tree Overlay に対応した Linux Kernel 4.4.7 のビルド済みのイメージと dtbocfg をこちらに用意しました。

このイメージの説明や使用例は次の記事を参考にしてください。

参照

Linux/Documentation/devicetree/overlay-notes.txt
https://github.com/ikwzm/dtbocfg
「FPGA+SoC+Linuxのブートシーケンス(ZYNQ+Vivado編)」 @Qiita
「Transactional Device Tree & Overlays」

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