『おもしろい』とは何か(3)
『おもしろい』とは何か、第3回です。
おもしろいというのは感情が動くこと。ではそもそも感情ってどうして動くのでしょうか。今回はそのお話です。
ヒトは生き物であるということ
犬や猫といったヒトではない生き物にも感情はあります。
例えば犬ですと、嬉しく感じているときはしっぽを振りますし、不快や嫌悪を感じるときは「ううううううう」と唸ったりします。
ヒトも生まれた直後から不快を感じ取って大きな声で泣き叫んだりしますし、少し成長すると笑うようになります。
このように、ヒトに限らず生き物というのは感情が動くようにできているようです。
補足:
生き物というと正式には植物や虫なんかも含まれますが、本記事では『動物』というワードで置き換えるほうがより適切かもしれません。
生き物の感情が動く理由
では、どうして生き物は感情が動くようにできているのでしょうか。
ここでは快感(気持ちいい)と不快(気持ちよくない)の代表的な2つの感情の動きを取り上げてみます。
ヒトもそうですし犬や猫もそうですが、気持ちいいことは自ら積極的に行おうとします。ご飯を食べる、恋人を作るといったことですね。
逆に不快なことはなるべく行わないようにしようとします。ケガをする行為なんかは代表的ですね。また、誰かに怒られるような行為だったり、エサがもらえなくなるといった快感が減ってしまうような行為も当てはまります。
快感なものは繰り返しやりたくなり、不快なものはやらなくなる。そういうふうに生き物は本能的に仕組まれています。そしてその仕組みのおかげで生き物は子孫を残すことに成功しているようです。
これらのことから、生き物は生きていくために感情が動く仕組みを備えていると言えるでしょう。
エンタメでよく使われる快感のトリガー『成長』
エンタメ論の記事なのになぜ生物学的な話をしているのかと思われたかもしれませんが、ここからエンタメの話につながってきます。
快感という感情はとてもシンプルであり生き物にとって大事な感情です。
エンタメではこの快感を起こすためにトリガーとして成長というキーワードをよく使います。
成長、それはできなかったことができるようになったり、知らなかったことを知るようになること。その際にヒトは快感を覚えます。補助輪がはずれた自転車に乗れるようになったり、逆上がりができるようになったときに嬉しい気持ちになるのもコレに当てはまります。
成長をエンタメに利用した例。例えばこんな感じです。
- 直接的な成長を題材としたエンタメ(THE成長系)
- お話が進むにつれどんどん強くなる主人公の少年漫画
- 経験値をためると新しい技を覚えるRPGタイプのゲーム
- 分からなかったことが分かるようになる成長を扱ったエンタメ(好奇心くすぐり系)
- 物語を読み進めると事件の犯人が判明するミステリー小説
- 山頂でしか視られない景色を視るために登る登山
- できなかったことができるようになった成長を扱うエンタメ(難関突破系)
- いくつものナゾをといてクリアを目指す脱出ゲーム
- ステージをクリアしていくスーパーマリオブラザーズ
※これらの事例は他の感情の動きもありますがここでは割愛します。
おもしろいと感じる物語やビデオゲームではだいたい成長という要素を含んでいます。あなたの気になるエンタメにも成長要素があるかもしれませんので、ぜひその要素を見つけてみてください。
もちろん成長だけではない
成長というキーワードはよく使われるものであり快感がイメージしやすいものです。ですが、多くのエンタメではそれだけでなく他のトリガーも使われています。
恋愛を扱うエンタメでしたらそれは性欲にまつわる快感を扱ったものですし、泣けるエンタメでしたら快感だけでなく不快も扱ったものになります。これらは成長とは異なるように思います。
筆者は多様なエンタメを説明するほどの知識がまだないので、成長ではないキーワードについては今回は取り上げないことにします。もっと勉強しないと・・・!
まとめ
ヒトの感情が動くのは生きていくため。それすなわち、ヒトは生きていくために『おもしろい』と感じるようにできていると言ってしまってもよいと筆者は考えます。
いっぱい語っておいてなんですが、このトピックは人によってはそこまで意識しなくて良かったりします。筆者は理屈で詰めていくタイプですが、感覚的に創り上げるタイプの人はそこまで考えなくていいと思います。
感情を動かすヒントが欲しいときに、生き物としてのヒトの性質から考えてみるのもありかも?ぐらいに気にとめておいていただければと思います。
ちなみに、感情の動かし方を学ぶために身の回りのエンタメを分析することはとてもオススメです。今回のように生物学的なトリガーまで分析する必要はないのですが、そのエンタメの感情の動きを分析してみると発見があって、それはきっと『おもしろい』ですよ。(ここでいうおもしろいは「分からなかったことが分かるようになる」というこれまた成長に起因するものかも?)
第4回へ続きます。
おわり
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