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『おもしろい』とは何か(1) @ゲームプログラマの小話[創作:エンタメ論]

Last updated at Posted at 2017-06-13

『おもしろい』とは何か(1)

遊んだ人がおもしろいと感じてくれるかどうか。これはビデオゲームにおいて大事なことの1つだと筆者は考えます。

でもそもそもおもしろいってどういうことなんでしょうか。今回はそのことについて書いていきます。

おもしろい=感情が動くこと

ビデオゲームに限らず人が「おもしろい!」と感じているとき、それは何らかの感情が動いているときです。

感情とは、喜怒哀楽と言われる「嬉しい」「腹が立つ」「哀しい」「楽しい」といったものから、「びっくり」「愛しい」「気持ちいい」「憎い」「嫌い」などなど、たくさんのものがあります。

参考:Wikipedia > 感情の一覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9F%E6%83%85%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

おもしろいの定義説明がたった1文で説明できるのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。あれこれ考えを巡らせた結果、筆者は今のところこの定義がしっくりきています。

おもしろさの度合い=感情の動く量

さて、おもしろいと感じる際、体験によって「ちょっとおもしろい」だったり「超おもしろい!」だったり、おもしろさの度合いが違うことがあります。

このおもしろさの度合いは動く感情の量に比例します。

例えば「少し嬉しい」よりも「とても嬉しい」、「少し哀しい」より「とても哀しい」のほうがよりおもしろいと言えるでしょう。

感情はベクトル(矢印)で表現できる

よりおもしろくするにはより感情を動かせばよい。この理屈はとてもシンプルです。

しかし、感情を大きく動かすのはとても大変です。簡単に感情を大きく動かせたらみんなプロのエンターテイナーになれます。ビデオゲームを作る人もそうですが、お笑い芸人さんも、脚本家さんも、いかに感情を大きく動かすかについてそれぞれの知識や工夫、テクニックでがんばっています。

そんな「感情をより大きく動かす」ことを考える際に、知っておくと便利な感情の性質についてお話します。

例えば、「嬉しい」と「哀しい」という感情。「好き」と「嫌い」という感情。これらはお互い反対の感情である、というのはなんとなく想像がつくでしょうか。

このように2つの感情を「反対」と表現できるということは(エンジニアさん向けの表現になりますが)感情には正の方向と負の方向がある、と言い換えることができます。そして、前の項では感情には動く量という尺度があるという話をしました。

感情には向きと度合いがある。このことから、感情はベクトル(矢印)で表せると筆者は考えます。

例えば、「ちょっと哀しい」は -1 のベクトル、ちょっと嬉しいは +1 のベクトル。対して「めっちゃ哀しい」は -3 のベクトル、「めっちゃ嬉しい」は +3 のベクトル、といった感じです。

このベクトルのことを今回は感情ベクトルと呼ぶことにしましょう。

感情ベクトルを使って「よりおもしろい」を実現する

感情ベクトルの考え方を使うと感情をより大きく動かす手段を考えやすくなります。

例えば「ちょっと嬉しい」(+1)場面の前に「ちょっと哀しい」(-1)場面を体験するように仕込んでおくとします。そうすると、嬉しさ感情は -1 から +1 に変わり、動いた量でみると +2 動いたことになります。

これは、ノーマルな感情の状態(+0)から「ちょっと嬉しい」ことを体験させたときに発生する感情の動く量 +1 と比べ、より感情が動くことになります。もしこれが「めっちゃ哀しい」(-3)から「めっちゃ嬉しい」(+3)への変化だとすると +6 という結果になります。

このように、複数の感情の動きと状態を組み合わせることでより感情を動かし、よりおもしろいと感じてもらえる体験を考えやすくなります。

おもしろくない=感情が動いていない

ここまで「おもしろい」について話をしてきました。

では逆に「おもしろくない」と感じているときはどういう状態なのでしょうか。

これは、おもしろいの反対で感情が動いていないときです。何も感じることがないとおもしろくありません。

余談ですが、ネガティブな感情ベクトルがずっと続くと「苦痛」と感じておもしろくないと感じることがあるよーと思う方もいらっしゃるかと思います。しかしこれは場合によっては「おもしろい」と感じることがあるケースでして、詳しくは第2回以降で取り上げます。

さて話は戻して。

このおもしろくない状態である「感情が動かないとき」とはいったいどういう時におこるのでしょうか。

1つは、同じ感情ベクトルを繰り返し体験させた結果おこる「飽き」です。本来なら +3 の効果を発揮する感情ベクトルでも繰り返し同じ使われ方をすることでだんだんと 0 に近づいていき感情が動かなくなります。この場合の対応策としては、シンプルに飽きにくくする手を考えるのがよいでしょう。

もう1つは、そもそも感情が動くようにうまくプランニングできていない場合です。例えば、皆さんがビデオゲームをプレイしている中でこんな体験をしたことってないでしょうか。

  • 「今、何をしたらいいのか分からない・・・。」
  • 「今起きたことは自分にとって嬉しいことなの?それともイヤなことなの?まぁ気にせず続きを遊ぼう。」

どちらの例も、本当であればビデオゲーム制作者が企画した感情の動きを体験する場面であるはずです。しかし、どちらも企画者の想定した感情の動きが発生しておらず、感情が動かない結果に終わりました。新企画の開発序盤でよくおこりがちな例ですね。筆者はこの感情の状態を混乱状態と呼んでいます。

この場合の対応策として、どうして企画者の想定した状態になっていないかをまず把握すること。そして、それに対してフォローしてあげるように体験を調整していきましょう。

まとめ

今回は「おもしろいっていうのは感情が動くってことなんだよ!」ということさえ覚えて帰っていただければ筆者としては大変満足です。

第2回へ続きます。

おわり

リンク:ゲームプログラマの小話-目次

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