ブログYukiの枝折 - SQLiteDatabaseとコンフリクトアルゴリズムからの一部転載です.
はじめに
SQLiteはデータのコンフリクトを解消するコンフリクトアルゴリズムをサポートしており, CREATE TABLE
構文でON CONFLICT
句として指定できる.
INSERT
, UPDATE
構文では文体をより自然にするためにON CONFLICT
ではなくOR
句として指定される.
Androidでもこれを使うことができる.
SQLiteDatabase
クラスを使ってINSERT
or UPDATE
をする際にコンフリクトアルゴリズムを指定できるメソッドがAPI Lv.8から用意されている.
- SQL As Understood By SQLite
- [Android Developers - SQLiteDatabase.insertWithOnConflict](http://developer.android.com/intl/ja/reference/android/database/sqlite/SQLiteDatabase.html#insertWithOnConflict(java.lang.String, java.lang.String, android.content.ContentValues, int))
- [Android Developers - SQLiteDatabase.updateWithOnConflict](http://developer.android.com/intl/ja/reference/android/database/sqlite/SQLiteDatabase.html#updateWithOnConflict(java.lang.String, android.content.ContentValues, java.lang.String, java.lang.String[], int))
SQLiteにおけるコンフリクト要因としてはUNIQUE
, NOT NULL
, CHECK
, PRIMARY KEY
といったカラム制約がある. ただし, FOREIGN KEY
制約についてはこれが適用されない.
CONFLICT_*
AndroidではSQLiteDatabase.CONFLICT_*
にあたる各定数で`コンフリクトアルゴリズムを指定でき, 下記がサポートされている.
SQLiteDatabase
は内部で下記のようにSQLを構築・発行している.
つまり, SQLiteのON CONFLICT
または OR
の仕様を理解すればよい.
private static final String[] CONFLICT_VALUES = new String[]
{"", // 0: CONFLICT_NONE
" OR ROLLBACK ", // 1: CONFLICT_ROLLBACK
" OR FAIL ", // 2: CONFLICT_FAIL
" OR IGNORE ", // 3: CONFLICT_IGNORE
" OR REPLACE "}; // 4: CONFLICT_REPLACE
public long insertWithOnConflict(String table,
String nullColumnHack,
ContentValues initialValues,
int conflictAlgorithm) {
acquireReference();
try {
StringBuilder sql = new StringBuilder();
sql.append("INSERT");
sql.append(CONFLICT_VALUES[conflictAlgorithm]);
sql.append(" INTO ");
sql.append(table);
sql.append('(');
...
検証
今回使用するテーブルスキーマは下記
sqlite> .schema test
CREATE TABLE test ( _id INTEGER PRIMARY KEY, data STRING);
次のテストデータを用意.
_id
は, あえて2をskipしておく.
sqlite> INSERT INTO test VALUES (1, "A");
sqlite> INSERT INTO test VALUES (3, "B");
sqlite> INSERT INTO test VALUES (4, "C");
sqlite> SELECT * FROM test;
_id data
---------- ----------
1 A
3 B
4 C
このテーブルにINSERT
やUPDATE
文を発行してコンフリクトを発生させた.
CONFLICT_ROLLBACK
OR ROLLBACK
の指定.
コンフリクトが発生した場合, トランザクションはロールバックされる.
トランザクションをロールバックした後, SQLiteException
を発生させる.
一般的にtry-catch-finally
節でデータベーストランザクションの操作を行うが, OR ROLLBACK
を指定した場合, 発行先のSQLがロールバックまでを実行する.
そのため, OR ROLLBACK
句によりSQLiteException
が発生したタイミングでは既にトランザクションが閉じているので注意が必要.
すでにトランザクションが閉じられたdb
インスタンスへのdb.endTransaction()
コールは新たなSQLiteException
を生む.
もしOR ROLLBACK
がトランザクション内での実行ではなく, 単発のSQLである場合はCONFLICT_ABORT
と同じ挙動になる.
try {
db.beginTransaction();
// ...
// cv1はロールバックされ, cv2は失敗, cv3はSQLiteExceptionにより実行されない.
db.insertWithOnConflict("test", null, cv1, CONFLICT_ROLLBACK);
db.insertWithOnConflict("test", null, cv2, CONFLICT_ROLLBACK); // CONFLICT!
db.insertWithOnConflict("test", null, cv3, CONFLICT_ROLLBACK);
// ...
db.setTransactionSuccessful();
db.endTransaction();
} catch (SQLiteException e) {
// Conflict occur
CONFLICT_ABORT
OR ABORT
の指定.
コンフリクトが発生した場合, そのSQLコマンド自体が行った変更が取り消される.
SQLコマンドによる変更を取り消した後, SQLiteException
を発生させるがロールバックは実行されない.
これはSQLコマンドが複数行に作用する場合に効果がある.
OR ABORT
はコマンドに閉じて作用するため, トランザクションで全体をロールバックするようなケースでは役に立たない.
try {
// _idを1つずつインクリメントするが, 2レコード目でコンフリクトが発生する.
// クエリの結果, どのレコードも変更されないで終わる.
db.execSQL("UPDATE OR ABORT test SET _id=_id+1");
} catch (SQLiteException e) {
// Conflict occur
CONFLICT_FAIL
OR FAIL
の指定.
コンフリクトが発生した場合でも, そのSQLコマンド自体がそこまでに行った変更は取り消さない.
コンフリクトが発生した後, SQLiteException
を発生させるがロールバックは実行されない.
これはSQLコマンドが複数行に作用する場合に効果がある.
OR ABORT
がそのコマンドの失敗を取り消すのに対して, OR ABORT
は取り消さない.
OR FAIL
はコマンドに閉じて作用するため, トランザクションで全体をロールバックするようなケースでは役に立たない.
try {
// _idを1つずつインクリメントするが, 2レコード目でコンフリクトが発生する.
// クエリの結果, コンフリクトが発生しなかった最初のレコードだけ変更される.
db.execSQL("UPDATE OR ABORT test SET _id=_id+1");
} catch (SQLiteException e) {
// Conflict occur
CONFLICT_IGNORE
OR IGNORE
の指定.
コンフリクトが発生した場合でも, それを無視して処理を継続する.
複数行の更新を行うクエリの場合, コンフリクトが発生した1行に対しては無視され, その前後の処理は取り消されない.
コンフリクトが発生してもSQLiteException
は発生せず, ロールバックも実行されない.
try {
// cv1は成功, cv2はコンフリクトで失敗するがエラーは無視される. cv3は成功.
db.insertWithOnConflict("test", null, cv1, CONFLICT_IGNORE);
db.insertWithOnConflict("test", null, cv2, CONFLICT_IGNORE); // CONFLICT!
db.insertWithOnConflict("test", null, cv3, CONFLICT_IGNORE);
} catch (SQLiteException e) {
CONFLICT_REPLACE
OR REPLACE
の指定.
コンフリクトが発生した場合, 次のルールでコンフリクトの解消を試す.
- コンフリクトの原因が
UNIQUE
orPRIMARY KEY
制約によるものの場合, 既存の行を削除して新たにINSERT
orUPDATE
を試みる. - コンフリクトの原因が
NOT NULL
制約によるものの場合,NULL
値をdefault value
に置き換えて試みる - コンフリクトの原因が
NOT NULL
制約によるもの, かつ,default vlaue
が定義されていない場合,CONFLICT_ABORT
と同じ振る舞いとする. - コンフリクトの原因が
CHECK
制約によるものの場合はCONFLICT_ABORT
と同じ振る舞いとする.
コンフリクトの解消が成功した場合はSQLiteException
は発生しない.
コンフリクトの解消が失敗した場合はSQLiteException
が発生する.
// cv1は成功, cv2はREPLACEされ成功, cv3は成功
db.insertWithOnConflict("test", null, cv1, CONFLICT_REPLACE);
db.insertWithOnConflict("test", null, cv2, CONFLICT_REPLACE); // CONFLICT!
db.insertWithOnConflict("test", null, cv3, CONFLICT_REPLACE);
CONFLICT_NONE
OR
句の指定なし.
CONFLICT_ABORT
と同じ挙動となる.
ちなみにON CONFLICT
, OR
句はSQL標準ではない.
以上.