先日のFacebook F8カンファレンスで発表された幾つかの機能のうち、最も目玉の機能は**bots on Messenger(正式名称)**であることに疑いようがない。
F8の発表と同時にCNNや米EC『SPRING』が手掛けるbots on Messengerが公開された。特にECでの先行事例という点で『SPRING』の事例について詳しく見ていきたい。
bots on Messengerの特徴
まず前提として、このFBが公開したbotsが注目されているポイントを整理すると以下の3つに集約される。
- チャット(リアルタイム、双方向、カジュアルテキスト)UIでのカスタマーサポートが可能になる
- AI(人工知能)の搭載が競合対比で最も容易、パーソナル・サポートに最も可能性がある
- 世界最大のMessengerプラットフォーム(MAU9億人!!)で駆動する
1のチャットUIによるカスタマーサポートは全てのbotサービスに共通する項目かも知れないが、2と3はbots on Messengerならではの強みといえる。
『SPRING』のbots on Messenger
とりあえずSPRINGがbotsにどのようなアルゴリズムを搭載しているのか、実際に触って確認してみる。
overview
- チャットアプリに代表されるようなテキストメッセージングではなく、ユーザーへ幾つかの選択肢を提供し、商品へ誘導するカテゴリ機能に近い
- またbotとのコミュニケーションが途絶えた後、botがremindしてくる。これはMessengerのpush通知機能に乗っかって届くため、高いリテンションレートが期待できるのでは、と思う
基本的なコミュニケーションフロー
- ユーザーが"go shopping"とbotに話しかけると、AIとのコミュニケーションが開始する
- botが以下の順で問を投げてくるので、選択肢をボタンでユーザーが選択する
- 性別(女性/男性)
- 大カテゴリ(服/靴/アクセサリ)
- 小カテゴリ(かばん/サングラス/時計)
- 価格帯(~$75/~$200/$200~)
- 問いに答え終わると、botが5つの商品を返してくれる。商品ごとに以下の選択肢が更に選べる
- 購入する -> SPRINGのWebサイト/商品ページへ遷移する
- 似ている商品を見る -> フィルタリング(協調?コンテンツ?)された別商品が新たに5つ提示される
その他
- ユーザーから「go shopping」以外のキーワードをユーザーに投げかけても、フローの誘導する一律メッセージしか表示しない。これではあまりに機械然としているので、間違いなく改良してくるだろう
- コミュニケーションが途絶えていると、機械的にremindしてくれる
発展性とまとめ
- 実際に使ってみての現時点のメリットは「サイトやアプリを切り替えることなく商品を探すことができる」という点に尽きる。これは手軽さや出会いを重視するセレンディピティ・コマースとの相性は非常に良さそうだ
- しかし毎回5つずつしか商品が探せないため、レコメンドの品質が大きなKPIになるだろうし、その点に発展性が多分にある
- またユーザーから一切テキストがbotへ対して発信できない、というのはbotである必要性を失ってしまうためインタラクションがテキストで行えるように増強されるだろう
- ECとしては新たにbotとのコミュニケーションログがパーソナライズの武器として手に入る。botとのコミュニケーションで意外な衝動買いを生み出せると、その背景にどんなメッセージングがあったのか解析することで『衝動買い』を科学することができる
ということで、自社でも弄ってみようと思います。