これは 転職(その2) Advent Calendar 2016 14日目の記事です。昨日は @raydive さんによる『そういや転職して3年たちましたので、そのへんと最近の面接担当になったりしてる話』でした。
この記事で話すこと
タイトルもあるように、 これまでの社会人歴で3回の転職活動をして、今年始めて転職 をしました。1
この記事では、「どこかの誰かの参考になれば」と思いながら、なぜそのような転職活動を行っていたのか、そこから自分が何を得たのか、なぜ今回転職したのか を書こうと思います。
なお、ここに書かれる文章は個人の見解であり、所属する組織や企業の見解を代表するものではありません。
その前に、簡単な自己紹介
文系の大学を出たあと、前職の金融系のシステム屋さんに就職し、今年の10月に初めて転職しました。
今年で社会人5年目になるのですが、エンジニア歴はほとんど社会人歴と重なっています。
Java を主戦場としながら、Ruby on Rails や Web Front をメインのスキルとしています。
前職
新卒で入社してから、4年半勤めました。
金融機関向けのシステム会社で、トレーディングシステムをつくっていました。
具体的には、金融工学のロジックを実装した計算エンジンを開発したり、その検証を行ったり、
金融機関の為替ディーラーが使う社内 Web システムの開発などを行っていました。
言語は殆ど Java、Web システムの開発には TypeScript を使っていました。2
現職
大きな Web 系の企業で今年の10月から働き始め、広告配信系のプロダクトに携わっています。
開発チームの中では年齢もエンジニア歴も一番短く、日々色々なことに刺激を受けながら仕事をしています。
なんで3回も転職活動をしたのか
さて、自己紹介は以上として、メインの話です。
2016年10月の転職が私のキャリア初めての転職でしたが、実は今回以外に2回ほど「転職活動」をしたことがありました。
そして、正直になって言えば最初の「転職活動」はほとんど転職を前提としていませんでした。
2回目もそうだったのですが、3回目の「転職活動」も、実はほとんど最後まで「最終的には現職に残留しよう」という気持ちで転職活動をしていました。
そのような転職活動を重ねるようになったのは、新卒で前職に入社して1年目。私の上についた上司のアドバイスがすべての始まりでした。
「転職する気がなくても、自分の市場価値を測るために、転職エージェントに会ったり、面接に行ってみたりした方が良い」
その上司のことは非常に尊敬していたので3「そういうものなのかぁ」と思いはしたのですが、実際にどのように転職活動をしてよいのかなどわかるわけもなく、
最初の「転職活動」は、とても良い意味で失敗だった
きっかけが出来たのは2年目になってすぐの頃でした。
LinkedIn や Facebook に経歴を書いていたので、転職エージェントからのお誘いが届くようになったのですが、 その1つのエージェントに連絡を取ることにしたのです。
頂いたメールには「海外での活躍」や「グローバルなシステムコンサルティング」など、凄そうな言葉の数々が並んでいました。自分の「腕試し」にはもってこいかな、くらいのことを考えていたような気もします。
エージェントとは面談をし、アピールポイントや志望動機などを整理して面接に挑むことになりました。
しかし、察するに余りあるかと思いますが、「なぜ転職したいのか」というのも詰めきれていないまま、別段積極的に興味のない会社の面接を受けたところで、
選考に落ちるだけならまだしも、選考を受ける中で特に何も残らない面接となってしまいました。
このときに身をもって学んだのは
- 自分の仕事や強みをしっかり言葉で説明できるようにならなきゃいけない
- 前向きだろうと後ろ向きだろうと「転職する理由」か「転職を検討する理由」が無いと転職活動は無意味
ということでした。
こういったことは言葉にする分にはアタリマエだとは思うのですが、身をもって経験したからその後に実りある転職活動が出来たのかなと思います。
特に、実際に転職活動の中でアピールポイントを出す必要に迫られて初めて、「職務経歴書に載せられるような仕事をするのが大事」と言う人の言わんとすることを実感しました。
何より、上司の言葉が自分の中で先行していたために「転職活動で自分の大ざっくりな市場価値を測る」という意図だけで活動をしてしまっていたのですが、あくまでも順番を間違えてはいけないのかなと (やっと) 知ることが出来たのです。
2回めの「転職活動」は良い収穫があった
それ以降も転職エージェントからの連絡はたくさん届くのですが、自分に適した案件を持ってきてくれなさそう、という予感がしたり、
あまり経歴書をしっかり読んでなさそうだな、というものばかりだったので、それらのほとんどをスルーしていました。
唯一、2年目の終わりに届いたメールが自分の中で引っかかりました。そのポイントは、GitHub を結構細かく見て、「こういう技術を持っているから声をかけた」というのがあったという点でした。4
話を聞きに行ったところ、転職市場の説明や、自分のキャリアプラン全体を総じて考えてくれている姿勢などに好感を持ち、引き続きお付き合いをさせて頂くこととしました。
そのタイミングでは具体的なアクションを起こすことはなかったのですが、それから1年弱経った3年目の終わり頃、某企業の選考を受けることになりました。
当時の勤務先で働く中で、ある程度「こんなことをやってきて、こんな強みがある」というのも言えるようになったし、
所属していたチームでの技術的なチャレンジもあまり多くなく、転職で環境を変えることで解決できればなという思いもありました。
ちょうど当時の勤務先での定期評価の結果がわかるタイミングだったので、選考を受けて出てきた年収と比べて、もしも大きくアップするなら転職も考えよう、と思っていました。
1次面接で「C 言語の配列って何?」とか「型、型って言うけど型って何」など、結構しんどい質問が続いたのですが、その場で合格を告げられました。
しかし、「とてもポテンシャルはあると思うけど、この歳まで Web 系をやったことがないのは少しキツい」と添えられます。個人的には気にしていることだったので、その言葉は強烈に頭の中に残ります。
「自分の下だったら2年間 Web システムとは何かっていう修行をしてもらうかな」という言葉が引っかかりました。
結局、最終面接もパスしてオファーが出ましたが、当時の現職の新給与とほぼ同等か、少し下がるくらいでした。
環境を変えることも含めると転職という決断も悪くなかったかもしれませんが、条件面や、当時の前職で少しチャレンジングな仕事が来そうだったこともあり、残留を決意します。
エージェントの方には申し訳なかったのですが、無理強いもなかった点で、やはり良いエージェントの方と巡り合ったなぁと思いました。
この転職活動は、以下のことが理解できたという点で自分の中で得るものが多かったです。
- エージェントの良し悪しもしっかり見極めるべきであること
- それまで自分が前職でやっていたことや学んだことが他でも通用しそうなこと
- Web 系の知識 (一般的な Web アプリの作り方、最低限のフロントエンド技術) はあったほうが良い (他にべらぼうな強みがない限り)
- 一般的な転職活動で内定が出るまで、また出た後のスピード感
何より、前回の転職活動で実感した「履歴書に載せる仕事」がしっかりアピールできたという成功体験が、自分の中で大きかったですし、その経験や自信が普段の仕事にも良い影響を与えたのかなぁと思います。
3回目の転職活動で転職した
2回めの転職活動から1年後、5年目が始まるタイミングで、前回と同じ紹介会社の方とお会いし、いくつか企業を紹介していただく運びとなりました。
自分はこの1年で Web システムの案件に携わる機会を得て、TypeScript と BackBone.js を用いた SPA 開発の方法論も最低限は携えていました。5
とはいえ、前職ではそれなりに評価してもらっており、積極的に転職しようという感じではありませんでした。
幾つか候補となる企業があった中で、年収面で殆ど落ちないという点で今の現職だけが候補に残りました。悩んだ末に転職することにしたのですが、以下のような点が決め手になりました。
- 金融機関向け SI と Web 広告システムの間の開発のスピード感や品質に対する感覚の違いを今のうちに体感したかった。
- 今の年齢 (27 歳) より後になって SI から Web 系への転職は出来なくないが、今と同等の評価を3年後にもらえるのか疑問があった。よく言えば「タイミングが良い」, 悪くいうと「最後のチャンス」だと思った。
- 前職では技術啓蒙を行う立場になっていたが、自分より高いスキルを持ったエンジニアのもとで、もうワンランク成長できるのではないかと思った。
- 福利厚生が良い (具体的には書けませんが…)
前段で説明していないこともいくつかありますが、前職の中では技術的なトレンドやモダンな開発手法に比較的敏感だった自分は、そういった知識を布教する側に立っていましたが、27歳という「まだまだいろんなことが学べる」タイミングで、
それらの知識が「前提」とさえなる環境で働いたほうが、自分の成長曲線は高く保てるのではないのかな、と考えたことが最終的に一番大きな決定ポイントとなりました。
転職を決断したポイントは、転職した後に振り返っても間違ってなかったなぁと思います。
また、転職を決意したときには思い及ばなかったメリットもありました。
- 書籍購入や、ディスプレイ購入など、働く上でのエンジニアのための支援が充実していた。(知らなかったわけではないが、やはり有ると非常に快適。)
- SI の仕事をしていた時の品質担保の感覚やテスト駆動開発の方法論がチームのニーズにとてもマッチしていた。
- アジャイルの方法論やフロントエンド技術の知識など、自分が持っているのは最低限の知識だと認識していたが、思いの外、十分通用するものだとわかった。
どれも「自分の場合は」というだけですが、品質担保の感覚に関しては他の人の参考になるのかなと思います。
最近, 伊藤直也さんの発表された SoE と SoR に関するスライド が話題になりましたが、Web 系の会社にとって SoR システムに携わっていたエンジニアのスキルが活きるケースがあるというのは、ぜひ知ってもらいたいと思います。6
特に前職では、金融工学ロジック周りの実装だと協力会社から来てもらったテスターの方によるテストでは限界のある点も多く、
しっかりとお客さんに説明責任を果たすための自動テスト (計算エンジンがはじき出した数字にデグレがないか等) や、
それをスムーズに回すためのテスト駆動開発に結構真剣に取り組んでいたのですが、
まさに今、現職でそのスキルが活きています。
悪く言えば「バグってれば急いで直して当日中にデプロイもしちゃう」ことが出来ない環境で育ったからこそ7
今のチームに貢献できていることもあるのかな、と思っています。
まとめ
この記事を読んでくださった方、特に SIer でエンジニア職をしているが今後のキャリアがもやっとしている若い人に伝えたいのは、以下の様なことです。
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すぐに転職する気がなくても、転職活動をすると良いこともある。
ただし、あくまで「転職するなら」と本気で考える気持ちを持って。選考する企業もコストをかけて本気で臨んでくるのだから、こちらも転職をしっかり検討して臨むこと。 - 日頃から、たまにで良いので自分の職務経歴書を意識すること。
- SIer のエンジニアだからこそ Web 系の開発チームで活きるスキルもあること。
「キャリアは自分自身で決められるところと、自分ではどうしようもないところがある」ものですが、自分自身で決められるところについては色んな可能性をとことん考えながら、自分のわがままを通せるだけ通すのが一番良いと思います。
そんなキャリアの検討の際に、この雑な文章が参考になれば幸いです。
明日は @ma3tk さんです。
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ここで言う「転職活動」は、実際に企業に足を運んで選考を受けることを指します。転職活動の情報収集をするためにセミナーに行ったり、エージェントの方とお会いすることは含みません ↩
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前職時代、Ruby on Rails はプライベートで書いていました。 ↩
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もちろん、今でも尊敬しています。
当時はひとまず大手キャリアエージェント (リクルー○キャリア) のキャリア面談を申し込んで転職活動の流れについて教えてもらう、くらいしか出来ませんでした。 ↩ -
もっとも、当時主戦場としていなかった Ruby on Rails のプライベートで書いたコードしか GitHub にあげていなかったのに「Ruby エンジニアとして声をかけました」とあったので、まずはその誤解を解くところから始まったのですが。 ↩
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この機会をもらえたのは完全に偶然だったのですが、ビッグチャンス!と思って取り組むことが出来ました。 ↩
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広告システムが SoE システムかというと、そうではないケースが多いと思うのですが、便宜上 SI と Web 系というくくりで。 ↩
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もちろんそんな姿勢は現職でもダメなのだけれども。 ↩