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ラズパイ絡みハード開発依頼の注意点(外注先に伝えて欲しいこと)

Last updated at Posted at 2020-03-25

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はじめに

メカトラックスの永里です。弊社は主にBtoB(ビジネスユーザ)向けハードウエアの受託開発と製造をやっていますが、特にラズベリーパイ(ラズパイ)をベースとした開発依頼ですと、ソフトは分かるけどハードはよく分からないというお客様が多いです。そういったご相談で良く漏れている点を受託者視点でまとめてみました。

※以下ハードウエア慣れてる人には常識的な内容ですのでスルーしていただければ幸いです

  1. 何のために何をさせたいのか(目的と機能)
  2. 稼働環境(何処で動くのか)
  3. 電源
  4. サイズ(寸法)
  5. 接続する機器・センサ(含 カメラ)等
  6. 通信手段と通信先

至極当たり前の内容ですが、依頼する側は求めてるものがクリアなので、こういった基本的なことを伝え忘れてらっしゃるのかと思います。

これら情報を検討してから相談するだけで依頼先とのやりとりが数ステップ省略でき、より本質的な課題(開発の本来の目的)に焦点を絞れます。また、見積の確度も上がり、結果として見積金額にも反映される(はず)ですので、弊社以外への見積に際しても参考にしていただければ幸いです。

前提として、以下は法人などのビジネスユーザが使用するハードウエアが対象です。一般消費者(コンシューマ)向けはデザインや製造ロット、コストなどが極めて重要で事情が異なりますので、より詳しい方に聞いてください

以下それぞれの詳細です。

1. 何のために何をさせるのか(目的と機能)

「小売店の棚をカメラで撮影してAIで解析して~(略)」など、こういった情報については皆さんある程度書いてくれます。この情報が大事なのは、仕様検討の際にその仕様が適切なのか俯瞰で確認でき、また相談者が求める目的を別の機能で提案することも可能になるからです。

例えば、シュレッダー内部の紙屑量を把握したい(目的)に対して
 
・対物センサで箱上部から紙屑までの距離を測る機能

の開発を相談されたとき、紙屑がうねうねして距離=紙屑量とはならないかも。。などと考えると

・紙屑含めたシュレッダー全体の重量を測る機能
・シュレッダーのモータが動いた際の電流値を測る機能
・シュレッダーのモータが動いた際の音を測る機能

なども目的を実現する為の機能候補となり、特にPoCであればそのような計測方法の変更に柔軟に対応できるかも重要となります。さらに言えば、そのプロジェクトの進捗状況なども共有してもらえるとタイヘン助かります。上記の例でいえば、PoCの結果、距離計測で問題ナシということであれば他の機能候補は無視して良いですし、量産を前提とした継続調達可能な部材選定が必要になるかもしれません。

しかしながら、特に漏れが多いのは以下です。。。これらは是非共有してほしい情報です。

2. 稼働環境(何処で動くのか)

屋内か屋外(風雨さらされるか)か、屋内でもオフィスや商業施設なのか工場やビニールハウスなどの温度厳しい環境か、屋外でもおおまかな温度の範囲など。これらはラズパイ等本体のケースの選定にも必要です。盤や専用ボックスの中で動くなら本体ケース不要な場合もありますのでそういった情報もあれば有難いです。

3. 電源

電源ある場合でもAC100V、AC200V、DC24Vなど様々なので、それら次第で電源回路を用意する必要があります。また電源がない場合、主に電池や太陽光パネルを使用しますが、通常は容量に制限があるので、ハードウエア全体の消費電力との兼ね合いで以下を検討する必要があります。

・リアルタイム監視系など連続稼働が必須の場合、何時間(何日)稼働させたいのか
電池容量が大きいほど稼働期間は長くなるが、サイズやコストも大きくなる
※ラズパイ長期連続稼働は消費電力の観点から厳しいので、CPUボード変更が良いかと

・ 間欠動作許容の場合、どれくらいの頻度で動作させたいのか(長期稼働はこちら推奨)
連続したデータ収集/処理や送信が必要でなければ、一定間隔で稼働/休止を繰り返す(間欠動作)で消費電力は削減できます。1日1回の稼働など頻度を下げれば下げるほど1日当たりの消費電力は減り、電池や太陽光パネルの小型化に繋がります。

4. サイズ(寸法)

ラズパイ等格納するケースのサイズ(寸法)の制約の有無、小さくするためには電源は外部ACアダプタにする必要もあるかもしれません。ビジネスユーザ向け(特にPoC等)では、サイズの制約はあまりなく、コスト重視で既製品樹脂ケースに穴あけ加工等して用いる場合が多いです。唯、内部でのケーブル取り回し等は考慮する必要があり、ラズパイ本体よりけっこう大きくなります。弊社の場合、特に制約なければ180mm×180mm×100㎜くらいの樹脂ケースをよく使ってます。
例:180mm×180mm×100㎜の樹脂ケース(透明蓋)に、ラズパイ、電源管理モジュール(slee-Pi)、スイッチング電源、ノイズフィルタなどを固定しグロメット取付
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5. 接続する機器・センサ(含 カメラ)等

制御機器などからデータを受け取りたいのか。センサ(含 カメラ)であれば、温度、湿度、電流/電圧値、写真/映像など何をデータとして取得したいのか。また、データの質、頻度、例えば温度であれば±0.1℃程度を-20~100℃の範囲で5分間隔で測りたいとか、写真であれば解像度やフォーマット、映像であれば加えてフレームレートなど。特に電圧値などは精度(24bit)やサンプリングレートなども重要になります。これら「計測」の話はかなり奥深いので、考え出すとキリがないのですが〇〇の値を〇〇の範囲でくらいは欲しい情報です。正直、接続したい機器やセンサ等を事前に型番で選定してくれるとだいぶ助かります。
※ラズパイとの接続向いてないものでも、代替案を提案できる場合もあります。

6. 通信手段と通信先

LAN(有線、無線)、Bluetooth、セルラー回線(3G/4G、他)、非セルラーLPWA(Sigfox、LoRa、他)など沢山の通信手段がありますが、これらに関して判断が難しければ、WiFiアクセス可能なオフィス内、携帯繋がりそうな屋外(山間部ではない)など設置個所や通信するデータのサイズ(画像、数値データ)などの情報をもらえると他の条件(電源、サイズ等)踏まえた提案も可能です。また通信の相手先はクラウドなのか社内のサーバなのか、インターネットを通してよいデータなのか(データによってはVPN、専用線等を用意する必要アリ)などの情報も欲しいところです。

以上です。

要点だけ簡潔に書くつもりがそこそこ長くなってしまいました。。。

仕様についてはこれら情報から最適なものを提案しますが、当然

ラズベリーパイでやるのは向いてない

という結論もありえます。ラズパイで何でもできる的な風潮もありますが、趣味としてはともかくビジネス用途であれば冷静な判断が必要かと思います。
※ラズパイの産業利用にご興味ある方はこちらの記事「ラズパイの産業利用、知っておきたいメリット/デメリット」も参照ください。

あと、上記注意点においてはトレードオフが発生します。例えば、バッテリーだけで長期間稼働させたい場合はバッテリーのサイズ(=ケースのサイズ)も大きくなります。「ここだけは譲れない」など、

要件に優先順位をつけて提示

して頂ければ、それら踏まえた提案も可能となりますので、その点も是非ご検討ください。

さいごに

ハードウエア不案内だとよく分からない点があるのは当然ですが、これらをちょと考えてみるだけでそのハードウエアが必要なプロジェクトの目的など見通しもずいぶん明るくなるはずです。

皆様のご参考になれば幸いです。

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