貴金属比
数学において、貴金属比(metallic ratio)とは、
(nは自然数)で表される比の事です。
貴金属数
貴金属数
貴金属数(metallic number)とは、逆数との差が自然数である実数の事です。
nが自然数の時の 第n貴金属数 は
で表されます。√内の4と、分母の2は、それぞれと、
を意味しています。これは二次方程式
の正の解です。
特に第1貴金属数を 黄金数 、第2貴金属数を 白銀数 、第3貴金属数を青銅数と呼びます。
貴金属数と逆数
第n貴金属数の逆数はで表されます。この時、第n貴金属数との差は、自然数nです。
* 例
* 第1貴金属数はであり、その逆数はとなり、その差は自然数1となります。
貴金属数の累乗
- 貴金属数の正の奇数乗は、常に貴金属数です。
- 貴金属数の正の偶数乗は、常に逆数との和が自然数となる実数です。
連分数として
貴金属数には連分数表示があります。それは以下の式で表されます。
黄金比
黄金比(golden ratio)は、
で表される比で、第1貴金属比です。近似値は約5:8です。
また、線分をの長さで分割する時に、が成り立つように分割した時の比でも表されます。
黄金比においては、二次方程式の正の解であり、黄金数と呼びます。ギリシャ文字のφで表されます。
黄金長方形
黄金分割
黄金長方形から短辺を一辺とする長方形を取り除くと、残る部分はまた黄金長方形となります。これを繰り返すと、黄金長方形は無限個の正方形で埋め尽くされます。
描画
正方形abcdを作成して、辺bcの中点oを中心に、線分odを半径とした円を描きます。この円と辺bcの延長線の交点をeとすると、が黄金比になります。
フィボナッチ数
n番目のフィボナッチ数をで表すと、は再帰的に
で定義されます。これは、2つの初期条件を持つ漸化式です。
この数列であるは フィボナッチ数列 (Fibonacci sequence)と呼ばれ、先頭から少しを取り出すと
と続きます。最初の二項はで、第三項目からは、その直前の二項の和となっています。
フィボナッチ数列の隣り合う二項の比は黄金比に収束すると言う特性を持っています。
白銀比
白銀比と呼ばれるものは、以下の2つがあり、いずれも無理比です。
1. の比。(第二貴金属比(silver ratio))
2. の比。(紙の縦横比)として用いられ、日本では古くから美しい比とされてます。
貴金属比としての白銀比
で表される比で第1貴金属比です。近似値は約5:12です。
また、線分の長さで分割する時に、が成り立つように分割した時のでも表されます。
白銀比においては、二次方程式の正の解であり、白銀数と呼びます。ギリシャ文字のτで表されます。
白銀長方形
正方形を描き、その一辺の長さをとした時に、の長方形を同士を合わせる様に隣接させると白銀長方形が得られます。
紙に用いられる白銀比
で表される比で近似値は約5:7です。
一辺と他辺が
となる長方形を白銀長方形(silver rectangle)と呼びます。
ISO 216で定められる紙の寸法は白銀長方形です。このような紙を向かい合う長辺の中点を結ぶ線分により2分割、即ち短辺を合わせるように折ると。それもまた白銀長方形となり、元の紙と相似になります。
例としてA4(
)を2分割すると、となり、A5サイズとなります。尚、B版のサイズでも同様になります。
また、である事から2倍の等比数列を作るととなり、値の間隔が広すぎる場合があります。
この様な場合に倍の等比数列を作るのにも用いられています。の等比数列はとなり、写真レンズの開口比(F値)がこの数列に基づいている事が判ります。
青銅比
青銅比(bronze ratio)は、
で表される比で第3貴金属比です。近似値は1:3.303です。
青銅比においては、二次方程式の正の解であり、青銅数と言います。