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関数合成を機械的に扱う試み

Last updated at Posted at 2015-02-09

引数が複数ある時の関数合成は直感的な理解が困難です。あまり理解は追及しないで、機械的な式変形や解釈を試みました。

※ ちょっとした思い付きのようなもののため、どのような場面で有用なのかは未検証です。

この記事はHaskell 超入門シリーズの番外編です。

【追記 2016.7.1】似たような記事を見付けました。相互に独立ですが、観察すれば似たようなことに気付くのだと思いました。

【追記 2016.7.1】同じテーマを扱った記事です。

関数合成を進める

1引数の関数合成は簡単ですが、多引数に拡張できる形での式変形を導入します。

f :: a -> a
g :: a -> a

$.の書き換えでは、引数を括弧の外に出します。括弧がなければ式を囲みます。

  • f $ g x(f $ g x)(f . g) x

$が足りない時は、中置演算子をセクションで分断して$を挟みます。

  • 1 + 1(1 +) $ 1
  • (f . g) x((f .) $ g) x

2引数

gの引数を増やします。

f :: a -> a
g :: a -> a -> a

$.の書き換えでは、最後の引数を括弧の外に出します。$が足りなければ水増しします。

  1. f $ g x y
  2. 式を括弧で囲む: (f $ g x y)
  3. $.: (f . g x) y
  4. $を水増し: ((f .) $ g x) y
  5. $.: ((f .) . g) x y

3引数

gの引数を増やします。

f :: a -> a
g :: a -> a -> a -> a
  1. f $ g x y z
  2. 式を括弧で囲む: (f $ g x y z)
  3. $.: (f . g x y) z
  4. $を水増し: ((f .) $ g x y) z
  5. $.: ((f .) . g x) y z
  6. $を水増し: (((f .) .) $ g x) y z
  7. $.: (((f .) .) . g) x y z

モナド則3の右辺

少し違うパターンです。ラムダ式の部分を関数合成で書き換えます。

  1. m >>= (\x -> f x >>= g)
  2. $を水増し: m >>= (\x -> (>>= g) $ f x)
  3. 式を括弧で囲む: m >>= (\x -> ((>>= g) $ f x))
  4. $.: m >>= (\x -> ((>>= g) . f) x)
  5. ポイントフリースタイル: m >>= ((>>= g) . f)

モナド則については、次の記事が参考になるかもしれません。

関数合成を外す

逆方向の式変形です。1引数の場合から見ます。

f :: a -> a
g :: a -> a

.$の書き換えでは、引数を括弧の中に入れます。引数を適用するたびに合成が解除されると解釈できます。

  • (f . g) x(f $ g x)

セクションの後の$は外して、引数をセクションに適用します。

  • (1 +) $ 1(1 + 1)
  • ((f .) $ g) x((f . g)) x

無駄な括弧があれば整理します。

  • (f $ g x)f $ g x
  • (1 + 1)1 + 1
  • ((f . g)) x(f . g) x

2引数

gの引数を増やします。

f :: a -> a
g :: a -> a -> a

.$の書き換えは右から行います。最初の引数を括弧の中に入れます。

  1. ((f .) . g) x y
  2. .$(右から): ((f .) $ g x) y
  3. セクションに適用: ((f . g x)) y
  4. .$: ((f $ g x y))
  5. 括弧を整理: f $ g x y

3引数

gの引数を増やします。

f :: a -> a
g :: a -> a -> a -> a
  1. (((f .) .) . g) x y z
  2. .$(右から): (((f .) .) $ g x) y z
  3. セクションに適用: (((f .) . g x)) y z
  4. .$(右から): (((f .) $ g x y)) z
  5. セクションに適用: (((f . g x y))) z
  6. .$: (((f $ g x y z)))
  7. 括弧を整理: f $ g x y z

引数不足

.$の書き換え時に引数が足りないときは、式をラムダ式で包んで引数を補います。既にラムダ式で包まれていれば、引数は後ろに追加します。

  1. ((f .) .) . g
  2. ラムダ式化して引数を補う: \x -> (((f .) .) . g) x
  3. .$(右から): \x -> (((f .) .) $ g x)
  4. セクションに適用: \x -> (((f .) . g x))
  5. 引数を追加: \x y -> (((f .) . g x)) y
  6. .$(右から): \x y -> (((f .) $ g x y))
  7. セクションに適用: \x y -> (((f . g x y)))
  8. 引数を追加: \x y z -> (((f . g x y))) z
  9. .$: \x y z -> (((f $ g x y z)))
  10. 括弧を整理: \x y z -> f $ g x y z

.の数だけ引数が出て来ました。

モナド則3の右辺

上で書き換えたものを元に戻します。

  1. m >>= ((>>= g) . f)
  2. ラムダ式化して引数を補う: m >>= (\x -> ((>>= g) . f) x)
  3. .$: m >>= (\x -> ((>>= g) $ f x))
  4. セクションに適用: m >>= (\x -> ((f x >>= g)))
  5. 括弧を整理: m >>= (\x -> f x >>= g)

関数合成の解釈

関数合成がネストしているとどう解釈して良いのか戸惑います。意味の把握は難しいですが、先ほど示した式変形に沿えば、計算の流れを追うことはできます。

引数を適用するたびに合成が解除されて、計算が内部に移動します。式変形をしないで、適用の流れだけを追うイメージです。

apply.png

  1. 引数を適用: (((f .) .) $ g x) y z
  2. セクションに適用: (((f .) . g x)) y z
  3. 引数を適用: (((f .) $ g x y)) z
  4. セクションに適用: (((f . g x y))) z
  5. 引数を適用: (((f $ g x y z)))

モナド則3の右辺(関数合成版)

式変形せずに計算の流れを追います。

monad3.png

  1. mから値を取り出してfに適用: ((>>= g) . (m >>= f))
  2. fの戻り値をセクションに適用: (((m >>= f) >>= g))
  3. gに適用: (m >>= f) >>= g

計算過程を式変形で表現した結果、モナド則3の左辺に一致しました。

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